中学校講演
平成11年7月17日
今日は口の中で多くの部分をしめている「舌」について話してみたいと思います。

皆さん、まず、口を大きく開いてみて下さい。次に舌を出してみて下さい。どの位でますか。
今見えている所は、舌の2/3だけです。まだこの奥に1/3見えない部分が有るのです。
この見えている部分前2/3を舌体とよんでいます。
この部分は、良く見るとザラザラしています。これは糸状乳頭と呼ばれ、一面に有ります。
このおかげで、皆さんがアイスクリームを舐める事が出来るのです。
ネコが水を飲む時この隙間に水が入り上手に飲めるのです。
さらに、良く見ると、その中に赤いポチポチがあるのがわかりますか。
これを、茸状乳頭といいます。
さて、この舌は、何でできているのでしょうか。ほとんどが筋肉でできています。
その上を、粘膜という膜で被われています。したがって、かなり自由に動くわけです。
人によっては、長く伸ばして、鼻の先を舐める事が出来る人もいます。
また、サクランボの茎をうまく結んでしまう人もいます。
もちろん無意識のうちに皆さんの舌は動いて、いろいろなことをしています。

では、この舌は、どんな役割をしているのでしょうか。
食物の摂取つまり、アイスクリームをなめたりです。
そして、咀嚼(ものを噛む時に歯に食物を乗せる役割をしてます)、
発音、嚥下(ものを飲み込む時、気管をふさいでくれます)、そして今日の話の感覚器としての舌です。
つまり、舌には、味を感じる感覚器の味蕾を持っていることです。

ここで、改めて食について考えてみることにします。
生物は、外と情報をやりとりしながら生きています。
生きていく為に必要な情報を受け止めるために、感覚が発達してきたのです。
ヒトの感覚は、視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚の5つに分類されます。
皆さんが食物をおいしく食べられるということは、この5つの感覚が有るからです。
まず、食物を、目で色、量、形を見ますよネ。
皆さんはとなりの人のほうが自分のものより大きいとか、多いとか、盛り付けがきれいとか見ているわけです。
耳では、肉を焼く「ジュー」という音を聞き、温かい、冷たい、柔らかい、硬いなど食物を触覚で感じ、
鼻では料理するいいにおいをかいでいます。、そして我々は、食物を口にいれて味覚で味わうわけです。
しかし、本来味覚や臭覚というのは、生物が餌をとるための手段として、発達してきたわけです。
食物の臭いをかいだり、口に入れたりすることで、まずその食べ物の安全かどうかを確かめているのです。
この味を感じているのが、味蕾です。味蕾は主に舌の後方の有郭乳頭という高まりにあります。
味蕾は、成人で2000〜3000個あるわけです。この味蕾は30個ほどの細胞の塊です。
そして、味蕾については、まだ分からないことがたくさん有ります。

皆様は、味にはどのようなものがあるか知っていますか。
味には、普通4つの基本味が有ります。甘味、酸味、苦味、塩味です。
この中で、皆さんが一番すきなのはもちろん甘味ですよね。疲れた時には甘い物が欲しくなりますよね。
そして誰にでも好まれます。これは、すぐに分解されて、エネルギー源となるからです。
「酸っぱい」という酸味は、何故避けたいのでしょう。食物が腐ってくると酸っぱくなってきます。
苦味が好まれない、皆さんが大嫌いなのは、苦いものには毒が多く、
避けるのが賢明だと分かっているからです。それなのにコーヒー好きが多いのは何故でしょう。
これは、高度に発達したヒトの頭脳のなせる、例外的な嗜好です。
コーヒーが嗜好品となったきっかけは、昔、アンデスの山の中で、
ヤギがコーヒーの実を食べて元気になったのを見たから、といわれています。
コーヒーの実の中には、カフェインという一時的に元気になる物質が入っています。
ヤギは本能的にコーヒーの効能を知っていたのでしょう。
こうゆうことわざを聞いたことがあると思います。「良薬は口に苦し」。
これは、薬と毒が紙一重であることによります。
草食動物の多くは塩味を好むことが知られています。
これは、我々動物の細胞というのはカリウムイオン(K+)、とナトリウムイオン(Na+)の
濃度のバランスが保たれています。食用植物にはカリウムイオンが多く含まれていることから、
草食動物がこれらを食べるとナトリウムイオンが不足するのです。
それを補うために塩味嗜好が生ずるのです。
日本人が白いご飯に梅干しが好きなのも生理学的にうなずけるものがあります。
そもそも、動物としてのヒトはどのような物を食べていたと思いますか。
道具を持たない裸のヒトは、他の動物と比べ、視覚を除けば感覚がそれほど優れているわけではなく、
凄く力が強いわけでもなく、足もそれほど速くはない。
したがって、獲得できる食べ物もおのずと限界がある。
したがって、本来ヒトは植物食だったのではないかと思われているのです。
これは、ヒトの唾液のなかには、植物性食品に含まれるデンプンを分解する酵素(アミラーゼ)が、
イヌ、やネコなどの肉食動物の唾液に比べ多く含まれていることからも分かります。
その後、ヒトは知能が発達し、道具を使い大型の動物を倒すことができるようになりました。
このためいろんな物が食べられるようになりました。
きわめて限定された食物しか食べないコアラ(ユーカリ)、パンダ(竹)などは絶滅の危機に瀕していることからも、
ヒトがいろんな物を食べ食性を広げていく事がいかに大切かが分かります。
このように、ヒトは飢餓から身を守るために、太古より、食物の獲得と、
手に入れた食物をいかにうまく保存するかということに、エネルギーをついやしてきているわけです。

ところで、ゲキカラは? という疑問がわくと思います。
これは、からいというのは、痛覚という、つまり痛いという刺激です。
ゲキカラに耐えられるということは、この感覚の閾値が低い、つまり感じにくいということです。

4つの基本味(甘味、酸味、苦味、塩味)を合成しても出来ない味があるのを知っていますか。
これは、日本人の博士が発見した味です。それは、「うま味」です。
昆布の成分の グルタミン酸ナトリウム
かつおぶしの成分の イノシン酸ナトリウム
しいたけの成分の グアニル酸ナトリウム
うま味の物質は、自分自身のうま味の他に、食べ物に、そのものの持ち味を引き立て、
料理全体の味を美味しくする効果が有んです。
美味しいお料理を作るときには、「だし」と「塩かげん」が大切なのです。
そして、お料理を食べる時は、食物の味を味わって食べているのですが、味は非常にあいまいなものなのです。
同じ料理でも、ある人は美味しいと言うのに、他の人はまずいと言うことも多いようです。
健康状態や気分によっても美味しかったりまずかったりします。
また、皆さんが、ある食物を「ほしい」、「おいしい」と感じるときは体がそれを要求していると考えられます。
味を感じるということは、食物のおいしさを感じ、そして消化吸収を助け、
よりすみやかに食欲を満たすのに重要な役割を果たしているわけです。
つまり、食というのは、我々の体に必要な栄養素を必要量摂る事で、
ヒトが生きて行く為に欠くべからざる行動なのです。

皆さん、味覚という感覚は、この食という生きる為の欠くべからざる行動に
大きくかかわっている事がわかりましたか。
そして、舌が食べる事はもとより、その他にも重要な係わりをもっている事がわかって頂けたものと思います。

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