いたみ、出血、はれ
ぢ の 話


 文化生活が進むにつれて痔で悩まされる人は次第に多くなりました。
 現在では、その潜在人口は四千万人と推定され、成人10人のうち7人から8人が痔の病気で悩んでいるという痔はまさに国民病といわれるゆえんであります。
 人前で口にするのをはばかる、この病気は「治った!」のではなく、「治まった!」だけの安易な治療が多く、直接生命に関係がないという気持から、どうしても放置されがちです。
 また、最近は女性の痔疾患がふえ、羞恥心のためか専門家に相談もせず、広告や通信販売に頼っている人が意外に多くみられます。

 我々、社団法人日本薬局脇励会では、全国の痔疾薬専門委員の数々のデータを基本として、肛門疾恵の正しい知識と冶療に専念し、皆様の健康に奉仕すべく日夜研究努力を重ねております。

 今回はこの「ぢ」についてスポットをあて、私どもがお勧めする痔の療法についてお話します。
肛門の仕組み 痔の原因と誘因 痔の種類と症状 痔のなおし方
痔の養生法 痔の食養生    
       
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肛門の仕組み

 肛門は消化器官の末端ですが、実は移行皮膚の粘膜(口唇やまぶた)からできていて
皮下脂肪がなく、少しの刺激でもはれやすくなっています

 直腸と肛門管は歯状線を境とし、この歯状線から上は自律神経が支配し、ここにできた患部は痛まないのですが、下の方の患部は知覚神経が働いて痛みをともないます。

 歯状線上にある肛門小窩は、皮脂腺に似た性質の肛門腺が開口しています。ここは
炎症を起しやすく、痔と密接な関係があります

 歯状線から2cmほど上の粘膜にはタテのひだがあり、その外側には肛門括約といってお尻をすぽめる筋肉と、肛門が脱出しないよう常に吊っていて、伸び縮みが自由になっている肛門挙筋があります。

 粘膜の下には静脈叢があり、うっ血しやすく、ここに「いぼ痔(痔核)」ができるのです。

 静脈叢の血液は二つの系路を経て心臓へ返ります。一つは
直接心臓へ、もう一つは門脈を通って肝臓に送られるのですが、この門脈には血液の逆流を防ぐ弁がありません

 ですから、次の頁にあるような原因が加わると簡単にうっ血し、はれて、時には血栓症状をおこし、痔静脈叢がいぼ状にふくれてしまうのです。

痔の原因と誘因
痔核はこうしておこる
 肛門の静脈は、網の目のように静脈叢になっているので、ウンと気張ると静脈叢はふくらみ、うっ血を起します。
 それを毎日くり返していると、だんだん血管がふくれて元にもどる力が少なくなり、いつもはれていることになります。
 網の目状の非常に多い静脈が、一つ一つはれるので大きな静脈瘤になるのです。これが痔核です。

痔核になる主な原因は
 胃腸、肝臓の障害や臀部が冷えたときとか、長時間坐ったり、立ちつづけたりする仕事で運動不足になったとき、妊娠や分娩、不規則な生活をしたり、酒・タバコ・コーヒーなど刺激物のとりすぎなどが考えられますが、同時に睡眠不足や疲労も痔の原因になりますから十分にご注意下さい。

痔の種類と症状
 一口に痔といっても、患部の位置や症状の違いでいろいろな種類があります。

 一般に”いぽぢ〃と呼ばれる外痔核と”はしりぢ”と言われる内痔核があり、痔核のできる場所によってその痛みや症状が違います。

 それに内痔核脱出がさらに進んだ脱肛”きれぢ”と呼ばれる裂肛があリます。

 そのほか、肛門周囲膿瘍をはじめ、痔瘻などがありますが、これは専門医にみてもらってください。
外痔核「いぼぢ」
内痔核「はしりぢ」第一度 内痔核「はしりぢ」第二度 内痔核「はしりぢ」第三度
脱  肛「でぢ」
裂  肛「きれぢ」
肛門周囲膿瘍と痔瘻(あなぢ)
その他の肛門疾患
果たしてあなたの痔は?

 外痔核「いぼぢ」


 歯状線より下にできる外痔核は”いぼ痔”といわれ、外から見えたり手で触ってもわかります。
 始めのうちは痛みがあり、出血しないのが普通ですが、時に排便と同時に出血をみることがあります。それもちり紙につく程度です。

 内痔核「はしりぢ」第一度

 内痔核は、歯状線の上部に発生し、痛まないのが普通です。
 排便時、真赤な出血がみられ、時にはほとばしるように出るので”はしりぢ”といわれます。
 一ヵ所だけの時もありますが、多くは複数で発生します。 症状の進行程度によって一度から三度に分かれます。
 第2図は、第一度の内痔核で、排便のとき出血があるだけでほとんど痛まず、この時期は安易に見のがされてしまうことが多いのです。

 内痔核「はしりぢ」第二度

 こうした状態を繰り返しているうちに痔核が大きくなり、排便のとき出血するだけではなく、怒ったり、すわったり、歩いただけでも痔核が肛門の外へ出てくるようになりますと第二度の症状です。
 しかし、排便後、軽く押すだけで治まったり、自然に戻ることもあります。

 内痔核「はしりぢ」第三度


 第三度になると更に痔核が大きくなり、排便時に移行上皮と一緒に反転し常時脱出するようになり、肛門括約筋ではさまれ、痛みも激しくなり、嵌頓痔核をおこします。
 また、症状として
出血は殆んど消失し、長期にわたると皮ふ化する傾向をおびます。

 脱肛「でぢ」


 「でぢ」と言われる脱肛は、外因性脱肛と内因性脱肛があり、外因性は、多発性の第二、第三度の内痔核によって起こる脱出性内痔核で、ドーナツ型に脹れて脱出します。
 また、直腸肛門部の括約筋や、その支持組織が緩み、直腸および肛門が脱出する症状が内因性脱肛(直腸脱)といわれます。
 初期は指で押すと簡単に入りますが、重症になると肛門から脱出したままになり、肛門の筋肉がこれをしめつけ激痛を伴います。これを繰り返しているうちに慢性脱肛へ移行することもあります。


 裂肛「きれぢ」


 きれぢの直接の原因は、硬い便の排泄によりできた裂創で、排便のとき、けいれんようの痛みと軽度の出血があります。 痛みを恐れるあまり、便秘を助長し、症状を悪化させてしまう人がよくあります。 また、傷口からの細菌による
二次感染をおこしやすいので特に清潔にしなければなりません。  きれぢは時計の6時の位置に約80%発生し、同一部位に何回も繰り返すことによって肛門潰瘍に移行することがありますので早期に治療することがたいせつです。 便秘のせいか、最近は女性のきれぢがふえ、男性の倍以上です。


 肛門周囲膿瘍と痔瘻(あなぢ)


 肛門小窩や直腸ねん膜にバイ菌がはいり、肛門腺がはれて、痛みと、ときには
高熱を発することがあります。
 この肛門周囲膿瘍が進行しますと痔瘻となりはれた場所に膿をもち、やがてそれが破れて穴があきます。
 ひどいものになると
トンネル状に直腸とつながり、そこから便や膿、ねん液、ガスなどがでて下着をよごします。
 これが一ヵ所、また、ときには数ヵ所におよぶ場合もあります。
 肛門深部に
圧痛を感じたり、熱がでるなどの自覚症状があったときや、一般的な治療をしていてまったく治療効果のない場合には、一応疑ってみる必要があります。この痔は男性に多く、女性は半数です。

その他の肛門疾患

 肛門周辺の病気としては、
直腸や肛門のところに発生する悪性腫瘍、直腸潰瘍、直腸ガンや肛門ガン、また、生れつき肛門が狭くなっている肛門狭窄、ごくまれなものとしては梅毒によるコンヂロームなどがありますが、放置しておきますと、とりかえしのつかないことになりますから、いずれも、すみやかに専門医の治療をうけなければなりません。
 また、焼虫が寄生したり、肛門の周辺を不潔にしておいたために皮ふ炎をおこし、たいへんかゆくなることがありますが、これは
肛門掻痒症という皮ふ病の一種で、”痔”ではありません。
 薬局によくご相談のうえ適切な処置をしてください。

 果たしてあなたの痔は?

 痔は、その痛み・出血・脱出の状態から表のようにいろいろな症状に発展します。
 ですから早期発見・早期治療が原則です。
 それではここで、あなたの痔がどのような状態にあるか見きわめていただくため症状別のこの表をごらんください。
 まず、外痔核は始めのうちは排便時に痛みをともない、まれに出血しますが、内痔核は、痛みがなく、排便時に出血することが多く、チリ紙につく程度のものからほとばしり出るものまであります。
 脱肛の疼痛は、急性の場合には排便が困難なほど痛みますが出血は殆んどありません。
 きれぢは排便のさいにおこり、軽症のときはすぐおさまりますが、ひどくなると筋けいれん痛が数時間統くことがあります。
外痔核 内痔核 脱 肛 裂 肛 痔 瘻
痛み

 
はじめから
痛い
 


 
2度〜
3度
 


 
激痛
 
 


 
初期は激痛、
慢性化により軽減



 
ズキン
  ズキン
 
 
出血


排便時




排便後

 


少ない




出血、膿

排便困難  
発熱悪寒        
はれ    

痔のなおし方
 痔の治療は原則として早目に治療することが先決です。
 まず、その原因である血行障害を除きはれや痛み、出血をおさえ、排便をスムースにする
総合治療が完全治癒につながります。
 そのためには、症状にあった外用薬はもちろん、内服薬(のみぐすり)や痛みの激しいときには湿布をすることも効果的です。
 重症になると手術などの治療によるしか方法がなく、早めにご相談くださることが肝要です。
 一般に局所療法として、
外痔核  内服薬、 洗浄薬、 軟膏、 坐薬、 湿布薬
内痔核  内服薬、 洗浄薬、 坐薬、 止血剤
脱 肛  内服薬、 洗浄薬、 軟膏、 坐薬、 消炎剤、 湿布薬
裂 肛  内服薬、 洗浄薬、 消毒、 軟膏、 坐薬、 鎮痛剤
痔 瘻  医師へ
 @ 内服薬  痔は血管の病気といわれます。通りをよくし、はれをとり正常に保つことです。
 A 坐薬  肛門内の患部に直接作用し、止血や傷口の保護、痛みをやわらげます。
 B 軟膏  外痔核や肛門周囲炎のはれや、痛み、かゆみ、ただれに使います。
 C 洗浄薬  消毒薬  肛門の周囲には無数の細菌があり、洗浄、消毒が肝要です。
 D 湿布薬  痛みや炎症の激しいとき肛門部に熱のあるときに効果的です。

痔の養生法
痔の養生法 適切な治療と共に、症状の悪化を防ぐために日常の注意が必要です。
排便について
 力んで排便することは、症状を悪化させます。
 できれば洋式トイレを使用するか、和式でも洋式便器をとりいれたり、中腰で俳便すれば、肛門部に充血することを防ぎ、痛みも著しく軽減されます。
 また、朝方、あわててトイレに入るよりも、夕方入浴前にゆっくりとなさるのも一つの方法です。
 勿論、固い紙で拭くことはよくありません。排便後は「レーバン」でよく消毒をしてください。

和式便器の排便方法


 足の踵を便器の上にのせ、からだの
重心を前におくと肛門部の充血を防ぎ楽に排便ができます。

 痔になやむ人が寒さにあうと肛門に痛みを感じ、肛門患部に異物感が増加します。

 この原因は寒冷によって凍傷のような状態になるためです。

 暖まると収縮した括約筋がゆるんで血の流れが正常になり、苦痛がなくなります
入浴の仕方

 患部を清潔にすることは痔のために
よい結果をもたらしますが、熱い湯や長風呂はよくありません。
 両足をひらいて肛門を十分清潔にし、
患部を軽くマッサージすると血行をよくし、症状を軽減します。


運  動

いつも緊張している肛門部の
活約筋を休めて血のめぐりをよくし、排便をスムーズに行うための運動です。

    
@ 冷水、又は乾布による全身まさつ。

    
A 両手を床につける運動と上体を背側にのばす運動を数回。

    
B サギ立ちを左右交互に3分間ずつ。


その他

 
過労や睡眠不足、過度の性行為はよくありません。
 特に重い物を持って腰に力をいれたり腹圧を高めるようなはげしい運動や、同じ姿勢で長く立っていたり、坐っていたりすると患部がうっ血して、症状を悪化させます。
 消毒薬・坐薬・軟膏・内服薬は、痔疾患治療の必須条件です。
 内服薬の外はトリートメントボックスの中に脱脂綿、ガーゼと一緒に常備して常に
患部の清潔を怠らず、規則正しい手当をし、根気よく続けることです。


お酒をのむとなぜ悪い

 深酒をしますと、翌日はてきめんに症状か悪化したり、はれがひどくなったり、出血があります。
 これは、
アルコール類の飲みすぎによる肝臓障害です。
 肝臓がはれれば、胃腸や、肛門部の門脈系にうっ血がおこり、それが肛門部の静脈に悪影響をあたえ、”痔”を増悪させるからにほかなりません。
 また、肝臓の負担をかるくするような、
高たんぱく食高ビタミン食をとるように心かけるとともに、強壮剤などを服用することも”痔”の治療を早めることになります。  


痔は治ったあとが大切

 いくら治ったからといって、痛み、つらさを忘れて酒をのみすぎたり、夜ふかしなど無茶をすると、今までの苦労が水の泡、
すぐ元に戻ってしまいます

 治ったあとも肛門周辺の消毒をかねて「
レーバンGローション」による湿布のような治療を続けたり、年に一、二度、「モリヂーネン錠」を服用すると再発を防ぐことができます。

 日常生活には十分気をつけるとともに
体質の強化をはかることがたいせつです。  



痔の食養生

 平素より胃腸を整え、便通をよくすることは勿論ですが、痔には
食べ過ぎ刺激物はよくありません。
 常に
良質のたんぱく質適量の脂肪ビタミンミネラル、特にカルシウムを多く含むアルカリ食品を上手に組み合わせて食べることです。
 これが
自然治癒力を高めるのです。
 半面、食べるとよくない食品には、便秘になりやすい食べ物や刺激の強い食品があり、症状の悪化に結びつきますので十分に気をつけてください。
 特に便秘がちの人は、便をやわらかくするために、まず第一に
水分を十分にとる必要があります。
 それには

     
@ 牛乳をたくさんのむこと
     
A 野菜や果物をとること
     
B 朝食は必ず食べること
     
C 便意をがまんしないこと

  この原則をしっかりと守ってください。便秘が痔の引金になるケースが多いからです。