〜敵を知り、己を知るために〜
2001/11/21 水曜日
糖尿病とされるのは
自覚症状は
血糖値上昇のメカニズム
DMヴァラエティ
豊富な合併症
DMかもしれないとき
![]()
糖尿病とされるのは ブドウ糖負荷試験による判定(ブドウ糖75g経口負荷)
(血中インスリンの負荷後30分値と負荷前値との差)
÷(血糖値の負荷後30分値と負荷前値との差)が、糖尿病患者では0.4未満となる。
境界型でも、この値が0.4未満のものは、糖尿病へと悪化する危険が高い。正常な人は血糖値の上昇に見合うインスリンの分泌があるので、食後30分ぐらいにピークが来て血糖値が下がる。
しかし、糖尿病の場合、インスリンの分泌が少なかったり遅れたりするため、ピークが食後1〜2時間と遅くなる。
また、まったく分泌されない人や、ほとんど増加しない場合もある。
血糖値が 空腹時 服用2時間後 正常型 どちらも正常値のとき 110mg/dl 未満 140mg/dl 未満 糖尿病型 どちらかが異常値のとき 126mg/dl 以上 200mg/dl 以上 境界型 どちらにも属さないとき 糖尿病の診断基準
A. 1〜3のいずれかに該当する場合には糖尿病型と判定する
- 随時血糖値が200mg/dl以上が確認された場合
- 早朝空腹時血糖126mg/dl以上が確認された場合
- 75g糖負荷試験で2時間値200mg/dl以上が確認された場合
B. 別の日に検査して1〜3の値のいずれかで「糖尿病型」が確認できれば糖尿病と診断する
(血糖値には測定のばらつきがあるので、確診のために再検査が必要である)
血液検査を繰り返さなくとも糖尿病と診断できる場合
- 口渇、多飲、多尿、体重減少など糖尿病の特徴的な症状があって、さらに「糖尿病型」である場合
- 糖尿病の症状がなくとも、HbA1cが6.5%以上である場合
- 現在糖尿病型であり、かつ過去に高血糖を示した資料(検査データ)がある場合
- 過去に糖尿病として診断された病歴などの資料がある場合
- 糖尿病性網膜症が見出された場合
- 糖尿病の主な検査
糖尿病を診断するための検査 診察(問診=現病歴、既往歴、家族歴、生活の様子)、体重、尿糖、血糖、ブドウ糖負荷試験、血中インスリン、グリコヘモグロビン(HbA1c)、C−ペプチド 糖尿病の成り立ちを調べるための検査 抗膵島細胞抗体(ICA)、抗グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体、インスリン自己抗体(IAA) 合併症を調べるための検査 体重、血圧、蛋白尿、微量アルブミン尿、尿沈渣、血液(脂質、肝機能、腎機能)、腱反射、末梢神経伝導速度、振動覚、筋電図、眼底、心電図、胸部X線撮影 糖尿病をきちんと管理するための検査 診察、体重、尿糖、血糖、血中インスリン、グリコヘモグロビン(HbA1c)、グリコアルブミン、1.5−アンヒドログルシトール(血漿1.5AG)、C−ペプチド、ケトン体
自覚症状は
- からだがだるく、疲れやすい
仕事が忙しいなど、別な心当たりがあると、そちらを原因と考えてしまうのが普通だろう。- 尿量が多い
飲水量にかかわらず尿量が増加する。
夜間トイレに起きるようになったり、外出先でトイレに何度も寄るなど、トイレの回数が増える。
高齢者の場合は、年のせいと考えてしまう。
喉が渇くため、飲物をたくさん飲むようになるので、それが原因と思うこともある。- 喉が渇く。水を多量に飲む
尿量の増加により脱水気味になるため、喉が渇く。
夏場など、気がつきにくいこともある。- 空腹感が強く、よく食べる
インスリンの不足により血中のブドウ糖が利用できず、細胞レベルでは飢餓状態が続いている。
食欲の秋に重なると、気づかない可能性もある。
食欲が出ることを異常と考える人は少ないのではないだろうか?- 食べているのに体重が減る
肝臓は脂肪酸やアミノ酸など体の構成成分を原料としてブドウ糖を合成するが、正常の状態では空腹時に盛んに行われ、食事をすることによって抑えられるというふうに調節されている。
糖尿病では、この肝臓でのブドウ糖合成に歯止めがかからなくなり、空腹時にも血糖値が高くなる。
肝臓は体を分解してせっせとブドウ糖を作り、ブドウ糖は血中にあふれ(高血糖)、あふれたブドウ糖は尿糖として体外に出ていくことなる。
結果として、食べているのに痩せる。
夏場などは夏痩せと思い込む場合がある。また、ダイエットの効果が出てきたと思う人もあるかもしれない。- 目がかすむ、眼鏡が合わなくなる
カメラのレンズにあたる水晶体に糖がたまって光の屈折を変えたり、水晶体の厚みを変える神経の異常や白内障が起こるなど、視力障害が出てくることがある。
眼鏡の度が合わなくなったと思い、眼鏡を次々と買い換えたという人もいる。
こういうケースは、眼鏡屋に行く前に、眼科でしっかり視力検査を受けていれば、早くに発見されていたと思われる。NIDDMは自覚症状の出にくい病気である。
(血糖値250mg/dl前後では、まず無症状である)血糖値が160ml/dl以上になると、尿中に糖が漏れるようになる。尿検査に引っかかるのは確実に発病してからである。
(尿に糖が出るようになる血糖値は個人差が大きく、150〜200ml/dlの幅がある。また、尿糖が出てもDMではない場合もある)食後の血糖値は高くなっていても、空腹時血糖は正常値に収まっていることもある。また、初期には食前血糖値が低血糖気味の場合もある。
上記のような自覚症状が出るときは既にかなり進行していることが多い。合併症が現れて、初めてDMであることに気づくこともある。
血糖値上昇のメカニズム 血糖値を下げる唯一のホルモン
1921年に発見されたインスリンは、膵臓の端に近い部分にある膵島(ランゲルハンス島、ラ氏島)と呼ばれる細胞集団の中のβ細胞から分泌されるホルモンである。なお、同じ膵島のα細胞からは、インスリンと拮抗する作用を持つグルカゴンが、δ細胞からは、インスリンの分泌を抑えるソマトスタチンというホルモンが分泌されている。
次のようなインスリンの働きは、すべて血糖を下げることにつながる。
ほぼすべての臓器細胞に糖をとり込ませる
肝臓や筋肉でブドウ糖からグリコーゲンが合成されるのを促進する
貯蔵されていたグリコーゲンが分解されるのを抑制する
脂肪組織で脂肪が合成されるのを促進する
脂肪の分解を抑制する
飢餓の歴史の長かった私たちの体には、いざというときに備えて血糖値を上げるためのホルモンはたくさんあるが、血糖値を下げるホルモンはインスリンだけである。したがって、インスリン分泌が何らかの原因で低下したり、効果が悪くなると、血糖値が上昇することになる。
食べていないのに血糖値が下がらない
肝臓は空腹時にも血糖値が下がらないようにブドウ糖を作る機能を持っているが、糖尿病の治療がうまくいっていない時は、この肝臓からの血中へのブドウ糖の流入が異常に増加することがわかっている。
健常者ではインスリンが肝臓でのブドウ糖の合成に歯止めをかけているが、糖尿病でインスリンの分泌が悪いと歯止めが不十分になるため、空腹時にも血糖値が高くなってしまう。糖毒性・・・悪循環の始まり
何らかの原因で極端に血糖値の高い状態(たとえば300ml/dl以上)が続くと、膵臓のβ細胞がダメージを受け、インスリン分泌能力が減ってきて、血糖値に見合うだけのインスリンを分泌することができなくなる。そのため、血糖値はさらに高くなる。血糖値が高くなるとインスリンはますます分泌が減るので、血糖値上昇の悪循環に陥る。
極端な高血糖が膵臓からのインスリン分泌を障害することを、最近では「糖毒性」と呼んでいる。糖尿病が急激に悪化する時には、多くはこの悪循環が働いている。
糖尿病は遺伝する・・・何が遺伝しているのか?
糖尿病は遺伝要因が大きいと言われている。しかし、ここでいう遺伝とは、糖尿病そのものではなく、糖尿病になりやすい体質のことである。
では、糖尿病になりやすい体質とは?
それは、インスリンの分泌量が少ない、効き目が弱い、出るタイミングが遅い、といった体質である。そして、これは多くの日本人に共通の体質でもある。長年少ない食糧をやりくりして暮らしてきた列島の歴史の結果でもあるのだ。
DMヴァラエティ 〜現れる症状は同じでも、それぞれ個性的なDMたち〜
1型糖尿病 IDDM/インスリン依存型 2型糖尿病 NIDDM/インスリン非依存型 1.5型糖尿病? SPIDDM/2型で始まり数年で1型に移行 妊娠糖尿病 GDM その他 特定の原因によるもの 栄養障害関連糖尿病 MRDM 油断できない境界型 糖尿病放置病にならないために 1型糖尿病 (IDDM/インスリン依存型)
- 自己免疫性
- 特発性
膵臓からインスリンが分泌されないかきわめて少ないため、生涯インスリン注射を必要とする。
若い時期に急激に発症することが多く、ウィルス感染が原因と考えられる。抗膵島細胞抗体(抗ラ氏島抗体、ICA)や抗グルタミン酸脱炭酸酵素(抗GAD)抗体が陽性になっている。
IDDMを発症して3年以上たつとICAの陽性率は低くなるが、抗GAD抗体は陽性率の高い状態が続く。子供のIDDMは、男女ともインスリンの消費が増大する思春期に発症のピークがある。男の子の場合は、5歳頃にも発症のピークがある。
欧米人には多いが、日本では1万人に1人ぐらいの有病率。
発症初期に専門医にかかり適切な治療(厳格な血糖の正常化など)を行えば、ある期間インスリン治療が全く必要なくなるぐらいに回復する場合も多いことがわかってきた。
2型糖尿病 (NIDDM/インスリン非依存型)
- インスリン分泌低下を主体とするもの
- インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うもの
日本人の糖尿病の97%を占める。
遺伝的素質を持つ人が、肥満や過食、運動不足、ストレスなどを引き金として、ゆっくりと発症する。成人に多いが最近は小児患者も増えている。食後に尿に糖が下りるなどの異常で始まり、数年のうちに血糖値が上がってくる。軽度の高値が数年続いた後、ある年から急に糖尿病域の高血糖となるケースが多い。
膵臓のインスリン分泌能力の低下だけでなく、分泌のタイミングの遅れ、細胞のインスリン感受性が悪くなることも原因となる。
食事療法や運動療法、経口血糖降下剤でも治療効果がある。(抗GAD抗体陰性)
コントロールが良好になると、病気の自覚を持ち続けることが難しいため、通院を怠ったり、コントロールが甘くなって悪化させる傾向がある。
1.5型糖尿病?(SPIDDM/2型で始まり数年で1型に移行)
Slowly progressive IDDM (ゆっくり進行するIDDM)
最近知られるようになってきた、日本人には結構多い第3のタイプ。NIDDM症例の2〜3%を占めると考えられる。
発病は2型と同様にゆっくりだが、発病後は比較的急速にインスリン分泌能力が低下・消失して、数年のうちに1型と同じになる。早期から少量のインスリンを注射する療法がよい(進行を遅らせる)とされる。普通の2型のように経口血糖降下剤(SU剤)を用いると、より早い時期にインスリン分泌能力が低下し、1型になるといわれている。
発病の仕方では普通の2型と区別がつかないが、肥満のない人が多いことと、抗GAD(抗グルタミン酸脱炭酸酵素 Glutamic Acid Decarboxylase)抗体が陽性であることから、早期から診断が可能。
NIDDMと診断された時は、なるべく抗GAD抗体の検査を受けて、SPIDDMの可能性がないか、調べてもらおう。
妊娠糖尿病 (GDM)・・・妊娠中に発症、もしくは初めて発見された耐糖能低下
- 妊娠をきっかけに発見された見逃されていた糖尿病
- 妊娠中に発症した糖尿病
- 妊娠中に初めて発見された軽症の耐糖能低下
妊娠初期から高血糖が見つかった場合は、Aである可能性が高い。先天性奇形や流産、合併症の出現や悪化に注意して、しっかり管理する必要がある。
妊娠による耐糖能低下は、主に妊娠中期以降にみられる。
胎盤から出るいろいろなホルモンがインスリンの働きを邪魔することでインスリン抵抗性が増し、それに対抗するだけの十分なインスリン分泌を続けられないと血糖が徐々に上がってくると考えられている。
妊娠中はインスリンを作用しにくくするホルモンが多く分泌されるため、糖尿病になりやすい。妊娠糖尿病の多くは一時的なもので、分娩とともに治るが、なかには数年後に本格的な糖尿病になる人もいる。体質的に糖尿病になりやすいと考えられるので、注意が必要である。(定期的な検査、良好な生活習慣の確立)
A. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
- β細胞の遺伝的異常
- インスリン受容体異常症など
B. 他の疾患、条件に伴うもの
- 膵臓病(膵炎や膵臓癌など)
- 内分泌疾患(末端肥大症、バセドウ病など)
- 肝疾患
- 薬物や化学物質によるもの(副腎皮質ホルモン、経口避妊薬など)
- 感染(先天性風疹など)
- まれな免疫学的異常
- その他の遺伝的症候群(ダウン症候群など)
栄養障害関連糖尿病 (MRDM)
日本では見られないが、赤道付近の熱帯地方には、栄養失調に起因する糖尿病がある。
蛋白質の不足や膵臓に害のある食品の摂取によると考えられている。まだ糖尿病ではないけれど・・・油断できない境界型
まだ糖尿病というほどの血糖値ではないあなたへ
検診でそろそろ血糖値が上がってきていると指摘されてはいても、まだ糖尿病というほどではない、いわゆる境界型。
まだ大丈夫と放置していると、思わぬ伏兵にやられることになる。動脈硬化が始まっているかもしれないのだ。
食事をして血糖が高くなると、膵臓からインスリンが分泌されて、肝臓にはブドウ糖の合成をストップするように働きかけ、また、血液中のブドウ糖が細胞に取りこまれるようにする。このインスリンの分泌が、体質的に遅かったり、少なかったり、効き目が弱かったりする場合がある。
食事量と運動量のバランスが取れていると、少ないインスリン量でも支障なく働いているが、過食や運動不足、ストレスなどが加わると、そのバランスが崩れてしまう。食後には必要量が足りず、また遅れて分泌されたインスリンは過剰になっている場合もある。
インスリンが過剰になると、ブドウ糖が筋肉に取り込まれて消費される代わりに、脂肪細胞に取り込まれて肥満を招く。
また、交感神経を刺激して、高血圧症の原因にもなる。高血糖と高インスリン血症が重なると、動脈硬化を促進することになる。
豊富な合併症 糖尿病はさまざまな合併症をひきおこす。
治療をしない場合やコントロールが不十分な場合、糖尿病発症から3年から5年で神経障害が、5年から10年で単純性糖尿病性網膜症が起こる。高血圧や動脈硬化は、境界型の頃から既に始まっている。
また、NIDDMは発症時期がはっきりしないことが多く、病気がわかったときには発症して何年もたっているケースが大半である。
3大合併症 糖尿病性網膜症 糖尿病性腎症 糖尿病性神経障害 油断できない 壊疽(えそ) 互いに合併 高血圧症 その他の合併症 急性合併症 糖尿病ケトアシドーシス(糖尿病性昏睡) 非ケトン性高浸透圧性昏睡 低血糖昏睡
失明原因第1位の
糖尿病性網膜症 (眼底出血、緑内障、失明)眼の病変は症状が全くないまま進行する。視力低下や視野の異常を自覚するまでに進行させると、元に戻すのは非常に困難になる。早期発見と適切な時期の治療が必要。
- 網膜症・・・網膜に酸素を供給している毛細血管の一部がつまって血行が途絶え、網膜が酸素不足から変性する。その部分に新たな毛細血管が周囲の正常な血管から増殖する形で伸びてくる(新生血管)が、これが網膜剥離や緑内障の原因となり、視力を低下させる。
また、新生血管は脆くて破れやすく、出血を起こしやすい。網膜出血を繰り返すうちに、網膜剥離や視野の歪みや欠損、視力低下、飛蚊症などの症状が出て失明する場合もある。
あまり進行したものでなければ、光凝固法を適切な時期に行うことによって失明を避けられるようになった。ただし、光凝固法は最適の時期に行わないと治療効果が出ない。そのためにも定期的な眼科検診が必要である。
単純性糖尿病性網膜症
網膜内の血管に毛細血管瘤ができたり、点状や斑状の出血、硬性白斑(硬い感じの白斑)、浮腫などが認められる段階。病変が網膜内だけに限られている。前増殖性糖尿病性網膜症
網膜の異常が表層部(硝子体と接する部分)にまで進行してきている状態。
網膜の表層(神経繊維層)に軟性白斑(綿毛のように軟らかい感じの白斑)や線状の出血。静脈ループの形成やソーセージ様の拡張などが見られ、静脈の太さや走行がいびつになる。
この時期に血流がとどこおると、新生血管が作られる準備段階に入る。増殖性糖尿病性網膜症
新生血管や増殖した組織が網膜を越えて硝子体へ進入している状態。
早期には乳頭血管新生(視神経が繋がる部分に新しく血管ができてくる)や毛細血管新生が見られるが、進行すると網膜前出血や硝子体出血を起こし、血管繊維の増殖や、それによって起こる牽引性網膜剥離などで、重い視力障害を起こす。
重症になると、血管新生緑内障を起こし、失明することがある。
- 糖尿病性黄斑症
視力の良し悪しの要である黄斑部に異常がおよぶと、網膜症の進行段階に関係なく視力低下を起こす。
- 白内障・・・初期症状はまぶしさで、視野がぼんやりして物が見にくくなる。
高齢者の病気であるが、高血糖を放置すると比較的若い時期にも発症する。若年者の糖尿病性白内障は進行がきわめて速く、発症後数ヶ月で手術が必要な状態となる。高齢者の場合も糖尿病があると、進行が速くなる。透析者の3分の1は
糖尿病性腎症 (たんぱく尿、慢性腎不全、尿毒症)早期には自覚できないが、尿中に蛋白質が混じることから始まる。ごく微量なので特殊な方法でないと測定できない(試験紙ではわからない)が、この段階ならば、血糖値や血圧の正常化をはかることで、腎障害の進行をくい止めることができる。病院での尿検査は、尿糖ではなく尿蛋白(アルブミン)を見るためのものである。
試験紙が陽性になるまで放置すると、腎障害の進行を止めるのは難しい。
高血圧は糖尿病性腎症を促進するので、血圧の正常化も重要である。蛋白尿が出始めてからは、食事療法はカロリー制限中心から、肉類や魚介類といった動物性蛋白質の摂取制限に移っていく。
糖尿病性腎症では尿中に蛋白質が出るが、赤血球は出ない。もし、蛋白質と同時に赤血球が検出されたら、糖尿病性腎症ではなく慢性腎炎かもしれない。
- 第1期(腎症前期)
検査では発見できない時期。- 第2期(早期腎症期)
微量アルブミン尿が出ている時期。
クレアチニン・クリアランス値は、正常な場合と高い場合がある。
たいていは、高血圧症、網膜症、神経障害など他の合併症も起こっている。
厳格な血糖と血圧のコントロールを行う。
蛋白質の摂取制限はないが、多くならないように注意する。- 第3期(顕性腎症期)
蛋白尿が出てくる時期。
第3期A(顕性腎症前期)
クレアチニン・クリアランス値は正常。
厳格な血糖コントロールで蛋白尿の量を減少させることもできる。
第3期B(顕性腎症後期)
クレアチニン・クリアランス値が低くなり、血糖コントロールだけでは蛋白尿の量を減らすことはできなくなる。
蛋白尿が多いと、低蛋白血症、高脂血症、むくみなどを伴うネフローゼ症候群となる。
蛋白質と塩分の摂取制限。- 第4期(腎不全期)
クレアチニン・クリアランス値が著名に低下し、血清クレアチニンが上昇してゆく。
血糖・血圧のコントロールを行うが、治療が難しい。
他の腎症と違い、末期まで大量の蛋白尿が出て、全身に水がたまる。
蛋白質・水分・塩分を厳格に制限するが、やがて人工透析が必要になる。- 第5期(透析療法期)
早めの治療が大切
糖尿病性神経障害 (知覚神経障害、自律神経障害)神経障害がもっとも早く始まるが、進行してからでないと症状が出にくい。
血糖コントロールが悪いと、3〜4年で自覚症状としてあらわれる。腱反射(アキレス腱を叩いて、反射があれば正常)と振動の感覚の検査(足に振動している音叉を当てて、振動を感じなくなるまでの時間が長いほど正常)の2つともが正常であれば、まず心配はないと言える。
神経障害のメカニズム
高血糖が続くと体内の余分なブドウ糖のために細胞の活動メカニズムが狂い、神経細胞の中にソルビトールが溜まって神経障害を引き起こす(ポリオール代謝異常)。
また、高血糖のために細小血管の壁に変性が起き、血流が悪くなり、神経に必要な酸素や栄養がいきわたらなくなることも一因となる。
主に末梢神経が冒される
- 知覚神経・・・冷たい、熱い、痛いなどを感じる
- 運動神経・・・手足を動かす、話すなど体の動きに関わる
- 自律神経・・・内臓の働きや発汗、体温、血圧などを無意識のうちに調節する
多発性神経障害
手足の末端(踵や指先)がちくちくする、あるいはじんじんする、痺れが切れたときのような痛みや痺れを感じる。
(「手袋・ソックス」といわれるように左右対称に両側の手足に出るが、神経のもっとも末端の部分である足先から始まることが多い)
また、足の裏の感覚が鈍くなったり、足の指の感覚がなくなり、素足で歩いても皮が1枚ついているような感覚が特徴的である。夜間にふくらはぎのこむら返りが頻発したりもする。
障害は、末端から体の中心へと拡大していく。
ひどい場合は、歩行困難になることもある。
知覚神経障害では、怪我や火傷の発見が遅れて壊疽を引き起こしたり、心筋梗塞を起こしても痛みを感じず(無痛性心筋梗塞)、心臓疾患に気づかないこともある。自律神経障害
もっとも危険で、足の壊疽、突然死などをひきおこすこともある。
- 立ちくらみ(起立性低血圧)
- 食事中や食後のめまいやふらつき(食事性低血圧)
- 胃がもたれて吐き気がする(糖尿病性胃麻痺)
- 顔、背中など上半身を中心に汗をかくが、下肢、特に足に汗をかかない。あるいは食事中に発汗する。(発汗異常)
- 脈拍数が常に多い(副交感神経障害)
- 下痢や便秘を繰り返す。夜間の下痢や便失禁。
- 尿意がない、頻尿、失禁、断続性の排尿。(排尿異常)
- インポテンツ
- 無痛性心筋梗塞
- 足が常にほてる
- 壊疽
特に足の壊疽は、自律神経障害があると起こりやすい。
糖尿病による自律神経の異常では、足の毛細血管の血流が変化していて、動脈血が皮膚の表面までゆかずに静脈に戻るため、皮膚に近いところは血流不足から酸素不足に陥る。そのため、もし足に傷ができれば治りにくく、潰瘍化してやがては壊死する。
このような血流に異常のある足の場合は、触ると常に暖かい。
逆に冷たく乾燥していて、毛が薄くなり、足の甲の脈が感じにくい場合は、下肢の動脈の一部が動脈硬化によって詰っているのかもしれない(閉塞性動脈硬化症)。この場合も血行障害による壊疽が起きやすい。胃の運動をコントロールしている自律神経に障害が起こると、食物を胃から十二指腸へ送り出す機能が低下するため、食後の吐き気やむかつき、食欲不振などを起こすだけでなく、血糖コントロールも難しくなる。
胃からの食物の排出時間が遅れると、普通なら血糖値が上昇するはずの食後に、1時間以上経過しても血糖が上がってこない場合もあり、インスリンの効果が最大になる時間と、食後の血糖の上昇がうまくかみあわなくなり、食事直後に低血糖を起こしたり、食後数時間たってから急に血糖値が上がるなど、血糖コントロールが難しい状態になる。心筋梗塞や狭心症の痛みを感じない、不整脈や呼吸の停止を起こしやすい、など、突然死の可能性が高くなる。
単一性神経障害
細い血管に小さな血栓がつまって神経に血液が通わなくなり、その部分だけ障害があらわれることがある。
一方の目が動かなくなったり、顔面に神経麻痺が起きるなどのトラブルが生じる。
神経障害が出たら・・・
神経障害の症状は多彩で、似た症状の出る他の病気と混同しやすい。自己判断で市販薬などを服用していると、神経障害を進行させてしまうこともあるので、疑わしいときはまず主治医に相談しよう。
また、治療中は改善するにしたがって一時的に痛みが悪化することがある(治療後神経障害)。
障害が進んで、痛みを感じなくなることもある。
痛みがひどくなったからと治療を中断したり、痛みがなくなったのを治ったと勘違いする場合がある。
自覚症状だけで病状を自己判断せず、治療を継続することが大切である。軽度の場合は血糖コントロールを厳格にすることで改善できる。
薬物療法では、蓄積したソルビトールを取り除き、神経細胞の働きが損なわれるのを防ぐアルドース還元酵素阻害剤(ARI)や、血流の流れをよくする薬、鎮痛剤や抗うつ剤、胃腸薬、血圧を上げる薬(起立性低血圧の場合)など、症状に応じて処方される。
- 低血糖、高血糖になりやすいので、血糖の厳格なコントロールを
- 長風呂は避ける
- 足をこまめにチェックして、壊疽に注意する
- 味覚神経障害を起こしていると、味付の濃いものを求めがちになるので、要注意
- タバコは血流障害を助長するので、禁煙を
壊疽(えそ)・・・足は要注意
糖尿病歴が長く(5年以上)、血糖値のコントロールが悪い場合は、足の傷が急速に悪化し、時には潰瘍→壊死→足の切断となることがある。
原因としては、靴ずれ、深爪、ひび割れ、やけど、低温やけどなどがあり、水虫というケースもある。傷を軽視して放置すると、重症化して大事になることがある。
- 窮屈な靴、あるいは鼻緒のついた履物は履かない。
- 足を常に清潔に保つ。
- 自分の足を1日に1度はくまなく見る(入浴時など)
- 爪を切る時は、深爪をしない。やすりで角を削る。
- あんか、湯たんぽを使わない。
- 血糖値を常に良好に保つ。
- 魚の目、タコを放置しない。
互いに合併しやすい
高血圧症日本人の死因のトップ3は、脳疾患、癌、心疾患だが、その脳疾患と心疾患に深く関わっているのが高血圧である。
初期には自覚症状がなく進行する、放置すれば多種多様な合併症が起こり命に関わるなど、糖尿病と似通った面がある。
しかも、糖尿病の合併症として高血圧症があるように、高血圧症の人は、血圧が正常な人の3倍も糖尿病になりやすく、また、この2つの病気を合併すると、双方の病状が加速され、脳・心臓血管障害の危険が高くなる。高血圧症の人は、糖尿病の検査も欠かさず受けてほしい。
新ガイドラインによる血圧レベルの定義と分類
分類 収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg) 至適血圧 120未満 80未満 正常血圧 130未満 85未満 高値正常血圧 130〜139 85〜89 グレード1高血圧(軽症)
サブグループ:境界域高血圧140〜159
140〜14990〜99
90〜94グレード2高血圧(中等症) 160〜179 100〜109 グレード3高血圧(重症) 180以上 110以上 収縮期高血圧
サブグループ:境界域高血圧140以上
140〜14990未満
90未満
収縮期・拡張期で分類が異なる人には、高いほうの分類を採用
- 動脈硬化症(心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症)
- 高脂血症
- 脂肪肝
- 白内障
- 感染症(肺炎、腎盂腎炎など)
- 皮膚病(真菌症、化膿症、潰瘍、水疱症、掻痒症など)
- 関節症
- 骨減少症
- 歯周病
急性合併症
急激な高血糖によって血漿の浸透圧が高まり尿量が増え(浸透圧性利尿)脱水症になる。また、糖が利用できないと代替として脂肪が利用され、その結果脂肪の燃え滓であるケトン体が増え(ケトーシス)、血液が酸性に傾いた状態になる(アシドーシス)。糖尿病ケトアシドーシスは、脱水症とケトン体の増加が重なることによって起こる。
IDDMの発症に気づかない場合や、インスリン投与の中断がきっかけになって起こる。
インスリンが切れて2日ぐらいでケトン体が増え始め、1週間も処置しないでいると死に繋がる。
インスリン抵抗性が高まった結果、相対的にインスリン不足となって起こる場合もある。
相対的不足のきっかけとしては、感染症、手術、ストレスなどがある。NIDDMのペットボトル症候群も相対的インスリン不足によるものである。症状としては、最初のうちは喉が渇いて水をたくさん飲み、尿量が増える。おなかがすいてよく食べるのに、体重が減る。そのうちにだるくなったり、腹痛、食欲不振、吐くなどの消化器症状が出るようになり、やがて昏睡にいたる。
インスリンの絶対的不足では、急速に症状が進むが、相対的不足の場合は、このような症状が数ヶ月も続くことがある。意識障害が起こる前にインスリンと輸液を持続的に大量に点滴すれば回復する。
ケトアシドーシスを起こすほどのインスリン不足はなくとも、高血糖のために血漿の浸透圧が高まって、強い脱水がおこり、昏睡にいたることがある。
喉の渇きをあまり感じなくなる高齢者に多い。手術後の高カロリー輸液、やけど、利尿薬やステロイド薬の使用などもきっかけになる。
血糖値が低くなりすぎて昏睡状態になるもの。
インスリンや経口血糖降下剤の投与量が多すぎたり、投与時刻がずれた場合
食事の時刻が遅れたり、量が少なすぎた場合
補食をとらずに運動したり、激しい運動をした場合
解熱鎮痛薬などの薬を飲む
飲酒
DMかもしれないとき
〜終わりなき戦いが始まる〜勇気を出して病院へ
会社の健康診断や保健所の集団検診などで高血糖や尿糖を指摘された人
喉が異常に渇く、尿が多いなど、もしやと思う人
まずは病院へ行って検査を受けよう。尿糖が出ていても糖尿病とは限らない。
高血糖は他の病気が原因かもしれない。
だが、自分で勝手に納得して放っておくのは危険過ぎる。独りで悶々とするよりも、原因をはっきりさせるほうがよい。高血糖でも痛くも痒くもないために軽んじて、なかなか受診しようとしない人もいる。
せっかく会社の健康診断で高血糖がわかっていながら、忙しいからと真面目に治療しようとしなかったために、網膜症のレーザー手術を4回もしたという人もあった。糖尿病と診断されるのが恐くて、病院へ行こうとしない人もある。
だが、目を瞑り、耳を塞いでいても、糖尿病が消えてなくなるわけではない。放っておけば勝手に治ってくれるわけでもない。放置すれば命に関わる病気であるとこに、早く気づいてほしい。
自覚症状のない病気は、定期的に検査する以外に早期発見は難しい。
健康診断のチャンスを逃さないようにしよう!援軍(医師・医療機関)を選ぼう
どんな病気でも言えることかもしれないが、医者選びは重要である。というのも、同じ診療科でも得手不得手があるからだ。専門外の病気については一通りの知識だけで、最新の情報に疎いこともあり得る。
日本糖尿病学会では認定医制度というものがあるが、まだまだ人数は少ない。
- 栄養指導はあるか。
- 「糖尿病手帳」を渡してくれるか。
- 眼科に紹介してくれるか。
- 血糖降下薬やインスリン注射を処方された場合、低血糖症状などの注意点に関して説明があるか。
- 運動療法の具体的実施方法についての話があるか。
- 糖尿病教室があるか。
- 医師はあなたの質問に全部答えてくれるか。また、どんな訴えでも真剣に聞いてくれるか。
- 糖尿病合併症についての説明があるか。
- 血糖値のコントロール目標(血糖値、HbA1c値)についての説明があるか。
- 医師以外のスタッフも糖尿病の指導などに関与しているか。
せめて上記の10項目の半分以上を満たす医療機関にかかりたい。そして、長く通院可能な、相性の良い主治医を見つけたい。
専門医のいる有名な病院であっても、経営効率を重視するあまり、血糖コントロールのための自己血糖値測定用のセンサーの支給が不充分であったり、患者の支払状態を重視してIDDM患者にインスリンを渡すのを渋るなどという医療者としての良心を疑いたくなるような病院もあるようである。
![]()