2、鍼灸医学とは

1)鍼灸とは・・・鍼を身体に接触または刺入し、灸は体の上で艾(もぐさ)を燃焼させたりして身体機能を調整し、かつ抵抗力を増強して、疾病の治療または予防ないし健康増進を図る治療法です。

2)鍼灸の効果
i)一般的な効果(非特異的効果)・・・簡単に言うと、鍼灸で体の機能が生まれたての赤ちゃんに近づくということです。新生児は体中の新陳代謝も非常に活発で、免疫力は母親ゆずりのために風邪もひきません。つまり、このような状態を人為的に作ろう、というものです。鍼灸を定期的に受けていると、色々な病気を予防します。当針療所ではこんなデータがあります。鍼治療を定期的に受けていて亡くなった高齢者が10名おられますが、その内訳は、ガンが1人、脳卒中が1人、残りのほとんどが急性心不全(何の持病もなく、朝家族が起こそうとすると亡くなっていた、など)です。俗に言う「寿命を全うした」ということです。勿論、鍼灸を受け始めてから、風邪をひきにくくなったなどの声も多く聞かれます。
 更に鍼灸による効果で科学的に証明されているものをあげると、
1、新陳代謝が活発になる(組織の活性化)
2、血行が盛んになる(血管の拡張と血管内腔の浄化)
3、痛みが和らぐ(脳内モルヒネの分泌)
4、免疫力が高まる(全身的には白血球・リンパ球の増加と副腎皮質ホルモンの分泌などが挙げら  れ、局所的には刺鍼部の免疫応答物質の集合が証明されている)
5、抗ヒスタミン作用(風邪や喘息の時に気管の収縮を抑える)
6、α(アルファ)波の誘発(瞑想中や坐禅中にあらわれる心地よい  脳波の状態を作り出す)
7、凝って硬くなった筋肉などをほぐす(血行促進効果とは違った観点で、刺した鍼を抜くときに  既に凝りが和らいでいるのは物理的な刺激によるものと考えられます)
 これら以外にもいろんな効果がありますが、これらの結果、色々な病気にかかりにくい体をつくったり、色んな症状を取り去ることができるのです。では、どんな病気に効くのかというと、これらの作用に当てはまるものには全て有効なのですが、具体的には別掲の鍼灸適応症をご覧下さい。また、鍼灸はご存知のように薬を使わずにその人の体の中の機能を最大限に引き出して治すため、心配な副作用や習慣性は一切ありません。
 i i)ツボ刺激による効果(特異的効果)・・・今までは、体に鍼や灸をすると多くの場所で起こる変化について述べてきましたが、これにツボ(経穴)の働きを加えると更に多種多様の効果が期待できます。体の表面には360程の正穴(経絡に存在するツボ)と更に多くの奇穴(経絡上には無いが特に効果的なツボ)があります。つまり、全身がツボに覆われていると言っても過言ではないでしょう。それらのツボがいろんな効能を持っており、時には単独で、また多くは幾つかの組み合わせで信じられないような効果を発揮します。
 そのひとつをご紹介しましょう。松尾芭蕉の奥の細道に出てきた足三里というツボがあります。芭蕉は旅の前にこのツボに灸をすえていたようで、「三里に灸すうるより心まず松島にかかりて〜」の文句はあまり
に有名です。さて古来より健脚のツボとして知られていたこのツボは足の陽明胃経という経絡に属しています。場所は膝の少し下の外側にあるのですが、このツボが胃に大きな影響を及ぼしているのです。ここに鍼をすると下垂していた胃がみるみる持ち上がっていきます。これは、レントゲンでの観察で証明され、テレビなどでご覧になった方もおられるでしょう。更に、胃酸の分泌を促進したり、胃壁の血流を増加させますので、消化不良にも効果的です。これもファイバーの先に装置を付け、それを飲み込んで測定して得られた結果です。さて、このような検査法の何もなかった大昔に、このツボが胃に影響を及ぼすことを知り、胃経という経絡に分類したことは、まさに驚嘆に値します。このようなツボはそれだけで効果を発揮する場合もありますが、専門家である鍼灸師は幾つかを組み合わせて、更にそのツボへの刺激量を考慮に入れて治療します。その中から例を挙げてみましょう。

 その1・何カ月も前から毎日、夕方になると咳が出て、のど飴をいつも持っているという49才の女性。鍼で咳なんか止まるのかな、と半信半疑で治療を受けられました。しかし、たったの1回で止まり、大喜び。数カ月間は、その苦しみから解放されたと聞いていましたが、その後は来院されていないので不明。(この時は特に腕、補助的に背部、頚部のツボを使用)

 その2・しゃっくりが2カ月位止まらず、いろんな検査、薬物療法、神経ブロック注射、電気療法を受けたが効果が無く、ゆううつ極まり死にたいとさえ言い出した初老の男性。とあるお医者さんがこんな患者さんがいるんやけど、鍼で何とかならへんか、と言われてその医院に往診し、これも1回で劇的に効果があり、その後何度か再発したが、何れも大事にいたらずに治った。(この時は主に頚部、補助的に腹部、背部のツボを使用)

 このように鍼灸は時として信じられないような効果を発揮しますが、ずべて真実です。さて現在、沢山の鍼灸学術団体や各学校(京都日吉町の明治鍼灸大学など)などがおこなっている研究成果がどんどん発表されています。これらの研究機関の中には、一般大学医学部も多く含まれており、鍼灸医学はその効果を認められてきました。にも拘わらず、医学に精通しているはずの医師に「鍼の痛みで病気の痛みをごまかしているに過ぎない。」とか、「鍼なんか痛いだけで効かない。」などと言われる患者さんが時々おられます。挙げ句の果てには、何の根拠もなく「あなたは鍼が体に合わない。」などと言われ、症状が好転していたにも拘わらず、治療を中止させられる場合さえあります。これをよんで皆様が鍼灸の何たるかを正しく理解し、その上で自分の信じる治療を受ける参考にしていただきたいと思います。