気の歴史


0 佚書の存在した可能性   
   …現存する本の中に引用としてわずかに面影を残している。  
  『論語』は現存する本として,最初に「気」を登場させている。  
  『老子』は,わずか五千字という小著であるが難解そのものであり,「気」についての根元的な思索を展開している。   
1 漢代   
   紀元をはさんで四百年もあり,「気」は爆発的に拡大し,深化した。
   ・『黄帝内経』…「気」の医学書   
       ・『淮南子』…道教の系譜にあり,「気」が治国の原理であるとした。
   ・『論衡』…王充著 「元気」は天地の精微であるとした。

2 魏・晋の時代(3〜4世紀)  
  インド伝来の仏教が中国にしっかり根付いた頃。  
  ・『列子』…道教の流れをくみ,「気」がつもれば天となるとした。  
  ・『抱朴子』…道士の葛洪著。「気」の中に人があると述べる。


3 唐代(7〜8世紀)   
  古代中国の黄金期であり,「気」は儒教・道教・仏教のはざまで,それぞれの立場から解釈され,論じられた。  
  ・『論仏骨表』…(儒教),韓愈著  
  ・『華厳原人論』…(仏教),宗密  
  ・『雲笈七籤』…(道教),張君房著
4 宗代(10〜13世紀)   
  気はさまざまに広がりカテゴリーをひろげる。   
  ・『太極図説』…周敦頤著,「気」と太極を論じる。   
  ・『洪範伝』…王安石著,「気」と「道・タオ」を論じる。   
  ・朱子は一連の著作のなかで理気学を完成させた。
5 元〜明(13世紀〜)   
  「気」はさらに多彩となる   
  ・湛若水は宇宙には「一気」のみと断言。   
  ・王守仁は「気」は良知なりと主張。   
  ・呉廷翰は「気」は万物の祖という。   
  ・『論気』…宋応星著
6 明〜清(16世紀〜)   
  ・劉宗周は天地には「一気」のみと主張。   
  ・黄宗羲は天地に「気」ならざるはなしと極論。   
  ・戴震は「気」は化けして流行すると述べた。    
      以上これらは新しい理論的発展はほとんどなかった。
7 19世紀   
  中国は帝国主義列強の侵略にさらされる。   
  ・保守派の康有為が「気」は万物の本という。   
  ・開明派の厳復は「気」は原素であると主張。   
  ・革命家の章炳麟は「気」はアトムであるとする。   
  ・辛亥革命を成功させた孫文は「気」はエーテルであると断言。

8 20世紀中葉   
  新中国誕生(1948年)後,「気」が再び人々の注目を得る。   
  「気功」という健康法からスタートし,病院のなかに「気功科」が設置されるまでになり,「気」をキーワードとした人体科学という新たな学問が誕生。


以下を参考文献として使用しました。

『気で読む中国思想』 池上正治著 講談社現代新書
『気の思想』小野沢精一,福永光司 ,山井湧共著 東京大学出版会
『気談』松岡正剛,高橋秀元著 工作社