長濱善夫 『針灸の医学』 P33.34抜粋(創元医学新書)による流派の紹介
沢田流
大正時代を中心として鍼灸の名手とうたわれた沢田健という人の手法を伝承する沢田流という一派がある。この流派では,灸を主としているが,太極療法と称して,ひととおり全身的な施術を行う。そしてさらに病気に応じて重点的にいくつかの経穴を加える。全身的処置としては,背部を主とするほか,手,足,頭,腹部などの一定経穴を使用する。その結果,施術部位の数はかなり多くなるが,比較的確実に治療効果が期待できるので,この方法を踏襲したり,準用しているものが多い。また古来の経穴の他に独特の経穴(私方穴)をいくつか使っている。
古典派
古来,針灸術の根本理念になっていることは,全身的な「経絡」という系統(刺激感受系または反応系として認知できる)の異常状態を調整するということであった。そして,経穴の異常は,経絡の異常の局部的なあらわれとされていた。またこれは,東洋的な脈診法によってもたしかめられる。こうして異常状態を類型的に判定したうえ,さらに経絡の古典的理論にしたがって施術部位を割り出すのである。次に,このようにしてきめられた特定の経穴(主として手足)に適当な手技を施して治療を試みるのであるが,これには主として針が用いられる。そして,陰陽五行説というような東洋的な古典理論を一応踏襲して,これを追試していることになるので,こういう立場をとっている人々は古典派または経絡治療派などと呼ばれている。
科学派
古典派に対して,病体にあらわれている圧痛点や,電気器具などによる反応点などを手がかりとして,これに近代医学の神経学説による解釈を後楯として,治療点をきめて施術にあたっている一派の人々がある。古典派とは対蹠的な立場になるので,科学派などと呼ばれている。