You are in : HOME MENU > 癌に関するニュース・・・その他癌全般 > 育毛プロセス解明により高まる癌への理解

原文参照 : Hair secrets shed light on cancer (BBC)


ニューヨーク、ロックフェラー大学のハワードヒューズ医学研究所では、ある未分化幹細胞が髪の毛と皮膚組織のどちらに分化するかを決定づける生化学的経路の研究を行ってきました。その結果、幹細胞内に2種類のタンパク質が蓄積していると髪の毛に分化すること、これらのタンパク質の蓄積には他の2つのタンパク質が決定的な役割を果たしていることが判明しました。

髪の毛に分化する幹細胞には皮膚組織に分化する細胞には含まれていない、ベータカテニン(beta-catenin)とLef-1という2種類のタンパク質が含まれています。これら2つのタンパク質が細胞内に蓄積すると、細胞同士を結びつけるように仕向ける他の化学物質の生産を阻害し、結果的に細胞同士の結合状態が解消されると髪の毛に、結合状態のままであれば皮膚組織に分化するということです。研究チームでは、beta-cateninを過剰に含むマウスが極端に濃い体毛に覆われることを示し、この理論の正当性を証明しています。

また最新の研究では、Wntとnogginと呼ばれる2種類のタンパク質が、幹細胞内におけるbeta-cateninとLef-1の蓄積に決定的な役割を果たしていることが発見されました。Wntタンパク質は結腸癌や乳癌の増殖転移に関係があることがすでに明らかになっています。これらのタンパク質の微妙な相互作用によって、幹細胞の形状が変化し、隣り合う細胞から分離、体内部方向への移動が可能になることで毛包が形成されるようです。

扁平上皮細胞の癌(皮膚癌)は、癌化した細胞が体内部へ向かっておびただしく積み重なったもので、ある意味では、細胞同士の結合の欠如が細胞間の連絡を不可能にし細胞が癌化、もしくは癌細胞が元の腫瘍部位から転移することを可能にしているともいえ、今回のような幹細胞における構造変化を促す生化学的なプロセスの解明が、ひいては様々な組織への分化過程や癌などの病気の発生機序の解明につながることを研究チームでは確信しているようです。

他の専門家も、このような生化学的プロセスの基礎研究は非常に重要であり、これらの発見が、歯や肺といった様々な組織の形成過程や、皮膚癌などの発達機序を明らかにする手がかりになると同時に、なぜ禿げる人がいるのかといった疑問を解く手がかりにもなり、また、細胞間の結びつきがどのように作用し合うのかより深く解明することができれば、癌の転移予防へ向けての新たなステップにもなる、と期待を寄せています。