ホルモン療法

        ホルモン療法 

タモキシフェンのメリット 抗エストゲン剤が,乳がん細胞の受容体に付着して,乳がん細胞の増殖を阻害します.1970年以来,3万人以上の患者さんについて臨床試験が行われ有効性が確立しています.50才以下の人より50才以上の人で効果が高いことがわかっています.原則的にエストロゲン受容体陽性の乳がんに対してのみ有効です.エストロゲン受容体が陰性でも,5-10%の人には有効であり,副作用が少ないので使用されることもあります.(特に50才以上の人の場合)投与期間については、2年,5年,10年,一生のどれがよいかを決める臨床試験の結果,現在では5年間がもっとも良いとされています.1年間で再発21%、乳癌死12%、2年間では再発29%、乳癌死17%、5年で再発47%、乳癌死26%減少させることがわかっています。 (Lancet1998.351.1451) 例えば、10年生存率70%の人は、再発が30×0.26=7.8%減って、生存率78%に上昇します。  

乳がんの再発死亡を減らす以外にも,以下のメリットがあることがわかっています. 1.反対側の乳がん発生を40%減少する.(約2.4%→1.6%) 2.コレステロ−ルを低下させ,心血管障害を予防 3.骨粗しょう症を防ぐ作用がある. ノルバデックス(10mg)は保険上280円です.1日2錠飲むと,1ヶ月で,約16800円(保険がない場合)かかります.健康保険により3割負担の人は約5000円/月の負担です.

    タモキシフェンの副作用 健康な人に予防的にタモキシフェンを投与して,乳がんの発生を予防するという臨床試験が行われているほど,安全な薬ですが副作用もあります.しかし副作用に比べて,得られる利益がはるかに大きいので,できるだけ続けることが望ましいと考えられています.

1顔のほてり,膣からのおりもの,などの症状が起こることがあります.

2子宮体がんの発生が約4倍増加することが知られています.(それでも1%以下の発生頻度です.)治りやすいものが多く,子宮がん検診の必要性については議論のあるところです.不正性器出血が続けば,婦人科受診が勧められます.

3血栓症 血が固まりやすくなる傾向が起こることがあります.脳梗塞,静脈血栓症などを起こしたことがある人には,血液検査をして,血の固まりやすさをチェックします.

4角膜混濁,白内障などの眼障害 起こることは稀です.もし眼の症状があれば,眼科受診が勧められます.

5抑うつ症状 気分がふさぐようになりやすくなることがあります.

1000人にノルバデックス(タモキシフェン)を投与した場合,薬のおかげで,乳がんの再発が104人減り,対側の乳がんが3人減り,子宮体がんが2人増える結果が予測されます

      手術後の補助療法 欧米での科学的な臨床試験により,乳がん術後の補助療法(抗がん剤,ホルモン療法)によって乳がんの再発が減少し,生存率が向上することが明らかになっています.再発のリスクを約20%−30%低下させます. 例えば,もともと30%再発のリスクのある人は,6%−9%減って21%−24%のリスクになります.20%のリスクの人は4%−6%減って14%−16%のリスクになります.もともと10%のリスクの人は2%−3%減って7%−8%のリスクになります.抗がん剤か,ホルモン療法(Tamokifen投与)の選択は,閉経前後,ホルモン受容体の有無により以下のように決まります.

ホルモン受容体    陽性        陰性 閉経前(50才以下) 抗がん剤+TAM  抗がん剤           卵巣摘出 閉経後(50才以上) TAM+(抗癌剤) 抗がん剤 高齢者(70才以上) TAM     抗がん剤?                     抗がん剤投与は副作用もあるため,再発のリスクが10%以下と思われる人には不要とされています. 国際的には以下の人で適応となります.

■リンパ節転移のあるものはすべて適応 ■リンパ節転移がなくてもしこりが2cm以上のもの又はホルモン受容体が陰性のもの 日本人の乳がんは欧米のものより,治りやすいことが多いので,少し適応を緩くしても良いかもしれません. ホルモン療法は,タモキシフェン(商品名 ノルバデックス)という薬を飲むことが行われています.副作用が少なく,ホルモン受容体が陽性の場合,投与されることがほとんどです.  

1995年の国際会議の時点では、閉経前患者でのタモキシフェンの効果がはっきりしなかったのですが、1998年の会議の際には、閉経前患者での有効性も確かめられたため、抗癌剤とタモキシフェンを併用するのが標準となりました。閉経後の受容体陽性例では、タモキシフェン単独と抗癌剤併用とでの差がそれほど顕著でないため、症例に応じてはタモキシフェン単独でも良いとされています。

第2選択以降のホルモン剤としてLH-RH analog,アロマタ-ゼ阻害剤、黄体ホルモンなどの薬剤があります。LHーRHアナログとは、月に1回皮下注射をするだけで閉経状態となり卵巣摘出と同等の効果があるのではないかと期待されています。抗癌剤との比較試験の結果がまもなく発表されます。投与期間(2年でおこなわれている)や中止後のリバウンドなどまだ不明なことも多いのですが、抗癌剤投与より副作用は一般に軽く、希望者にはおこなうことがあります。

 LH-RH analog(内科的閉経療法)について これは4週間に1回の皮下注射で卵巣機能を抑制し、治療中は卵巣摘出手術と同等の効果をもたらす薬剤です。この系統の薬にはゾラデックス、リュープリンがあります。 99年アメリカ臨床腫瘍学会で、いくつかの重要な臨床試験の中間発表がなされました。このため99年5月以降閉経前,ホルモン受容体陽性の方のうち

1リンパ節転移陽性の場合、 抗がん剤+タモキシフェン+LH-RH analog

2リンパ節転移陰性の場合, タモキシフェン+LH-RH analog(抗がん剤は行わず) のような方針で一部の患者さんの治療に採用しております.今後の臨床試験の結果次第で適応が拡大されるか,縮小されるか決まる予定です.

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