局所進行乳癌(Stage3)の治療

局所進行乳癌(Stage3)の治療

局所進行乳癌の定義にはいろいろなものがありますが一般には3期の乳癌を意味します。 ◇しこりの大きさが5cm以上でかつわきのリンパ節がはれているもの ◇しこりの大きさにかかわらず、わきのリンパ節が癒合してはれているもの このいずれかにあてはまる場合は3期の乳癌と診断されます。

欧米において局所進行乳癌の治療として定型的乳房切除術(ハルステッド手術)がさかんにおこなわれていましたが、高率に局所再発をきたすことがわかってきたため、1950年代には手術だけでは局所進行乳癌の治療として不十分だという認識が確立しました。放射線照射による治療も試されましたが、手術よりも成績はよくありませんでした。また手術と放射線治療を併用する方法も試されましたが、局所再発は減りましたが生存率の向上は認められませんでした。 以上の歴史的経過から、局所進行乳癌では、画像上はっきりと診断はできなくても、すでに微小転移巣が存在しており、治療の中心は抗癌剤やホルモン剤などの全身治療にあるという考え方が一般に受け入れられるようになっています。実際、手術や放射線療法のあとに抗癌剤治療をおこなうことで、生存率が上昇したという報告が多くなされています。(1980年代)

また、局所進行乳癌の一部のものは大きすぎて手術が不可能なことがあります。そのため、まず最初に抗癌剤治療をおこなってしこりを小さくしてから、手術や放射線治療を可能にするという方法がおこなわれてきました。その経験から、手術可能なものでも、まず抗癌剤治療を最初に施行するという方法が一般におこなわれるようになっています(術前化学療法)。また、抗癌剤治療を施行してから手術をした場合、その後にまた抗癌剤治療(維持化学療法)を追加した方が成績が良くなるということがわかっています。現在では手術、放射線、抗癌剤、ホルモン剤のすべてを用いる方法(multimodal treatment)が進行乳癌に対して一般的におこなわれています。例えば術前化学療法→手術→維持化学療法→放射線照射→±ホルモン治療というふうに治療がおこなわれていきますが、その順序についてはまだ確立していません。また、近年超大量化学療法(無菌室に入院して大量の抗癌剤を用いる方法)が試験されています。今の所、明らかな有用性は証明されていません。 手術や放射線治療(局所治療)と抗癌剤治療(全身治療)のどちらを先におこなった法が成績がよくなるかは、まだわかっていません。しかし、以下の点から、理論的には最初に抗癌剤治療をおこなうのが良いのではないかと言われています。

◆1.抗癌剤の効果が、しこりの大きさの変化を見ることで具体的にわかる。効果のない場合には中止するか他の薬剤に変更できる。手術をした後には、顕微鏡検査によりしこりやリンパ節の癌細胞に対する抗癌剤の効果がわかり、それが予後(なおりやすさ)の目安になるだろうといわれている。

◆2.遠隔転移巣に対する治療を、なるべく早く始めた方が良いという説がある。(癌細胞は時間とともに遺伝子変異をおこしていくため、抗癌剤に対する耐性を獲得する可能性が時間とともに増えるというGoldie-Coldmanの仮説による)

◆3.手術をおこなうと、いままでじっとしていた転移巣が増殖しだすという説(Fisher)がある。手術前に抗癌剤投与をおこない転移巣をたたくことで、その影響を最小にできる。

◆4.しこりが十分小さくなった場合には、温存療法をおこなっても良いだろうと考えられている。   今までの臨床試験の結果から術前化学療法による成績の向上は明らかではありません。しかし少なくとも術後投与に比べて成績が悪くなることはないということは認められています。

      術前化学療法での応用 局所進行乳癌では術前化学療法がおこなわれるようになってきています。 ミラノでは、1988年から、CMFやCAFなどを用いた術前化学療法をおこない、3cm以上のしこりを小さくしてから温存療法をおこなうという試験がおこなわれていました。しかし、1990年からは、補助療法での連続投与法の有効性をふまえ、エピルビシン120mg/m23週毎3回→手術→CMF3-6サイクル→照射という方法を採用しています。

        我々の方針 乳癌の化学療法における世界の第一人者であるBonadonnaの意見を基にして エピルビシン120mg/m2,3週毎3-4サイクル→手術→CMF3-6サイクル→照射→ホルモン剤内服という治療法をおこなってきました。1999年3月までに45名の方に実施しましたが大きな副作用は認めていません。ただし、エピルビシン→CMFの連続投与法は、ミラノでの臨床試験で有効性が認められただけであり、CMF療法のように、多数のデータから世界中で認められたものではありません。長期的な副作用については、今のところ大きな問題はないとされていますがデータ数は十分ではありません。また通常のCMFにくらべて費用もかかります。したがって、最終的にこの治療をおこなうかどうかは、患者さん本人に決めてもらうことになります。なお98年8月にはカナダの研究グループからCEFがCMFより優れているとのデータが報告があり(JCO98年8月号)エピルビシンの評価はある程度固まってきました。今後さらにタキソール、タキソテールなどの薬剤が術後補助化学療法の領域でも用いられる可能性があり、我々も現在ではAC-タキソール療法を用いています。

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