
学会報告
第9回日本乳癌学会総会は2001年6月7,8日に群馬、グリーーンドーム前橋で飯野佑一群馬大学医学部救急医学教室教授が会長をされ開催されました。群馬出身の方には申し訳ありませんが、群馬は予想どおり何も無いところでした。アクセスは悪く、宿泊施設も不十分で、東京より通った参加者も多かったようです。しかしながら、学会は活気に溢れ、将来の乳癌研究がバランスよく発展することを願ってつけられた総会テーマである「調和による飛躍」も参加者に十分に理解されたと思います。本学会で目に付いた点は、1.手術が美容や機能温存を重視した縮小手術の方向となっていること。当院でも乳房温存はもとより、これまでは乳房切除をしていた症例も乳頭への浸潤がなければ、皮下乳腺全摘をおこない広背筋で欠損部を充填するような美容的な手術をおこなっています。また、センチネルリンパ節生検も不要な腋窩リンパ節郭清を省略する目的でおこなわれています。腫瘍内や周囲に色素やラジオアイソトープを注入し癌細胞が最初に到達するセンチネル(見張り)リンパ節を同定し、術中迅速病理検査で転移の有無を判定、転移がなければさらなるリンパ節郭清を省略する方法です。当院では色素法を用いておこなっています。2.補助療法ではハーセプチン、タキサン化合物の演題が多かった。ハーセプチンは癌細胞の増殖因子受容体であるHER2/neuをターゲットとした抗体療法の薬であり、ようやく日本でも保険適応となりました。詳細は前々回の登録医通信に記載しましたが、ハーセプチンの使用は乳癌学会認定施設に限定されているため、下関地区では当院のみで使用可能です。当院では現在3症例にタキソール、またはタキソテールと併用で使用しています。観察期間がまだ短いのですが、1例は肝転移が縮小しています。3. 乳癌検診では、触診のみの乳癌検診は有用性が否定され、マンモグラフィ併用検診が推奨されています。また、マンモトームの演題も多くみられました。当院では本年10月に最新鋭のマンモグラフィ撮影装置とステレオガイド下のマンモトーム生検装置が設置されました。マンモトームとは、乳房の中にある石灰化病変や腫瘍に、マンモグラフィ撮影装置についた針をコンピューター制御により正確に刺し入れ、吸引装置を用いて組織を採ってくるものです。一度差し入れたら、何回も刺す必要がなく、針先を回転させるだけで、周囲の組織を採取できます。エコーではよくわからず、マンモグラフィで石灰化のみあるような良性のしこりや非常に早い時期の乳癌が対象となります。直径2cm以下のしこりであれば、手術をせずにマンモトームで完全にとりさることも可能です。当院での1例目は微細石灰化がある症例で、5mmの創でマンモトーム生検をおこない、良性であることを確認できました。
2000年11月1,2日に仙台で開催された、第10回日本乳癌検診学会総会に参加しました。
“マンモグラフィ発見乳癌の特徴”、“マンモグラフィ併用検診の現状と問題点”などのワークショップがありましたが、特に興味深かったのは婦人ライフステージと乳癌をテーマとしたシンポジウムで、妊娠期乳癌はできれば34週まで待って手術をするのが望ましいこと、ホルモン補充療法に関しては乳癌の発生率を1.3倍増加させるとの報告もあるが補充療法により寿命は2年延長することなど婦人科的立場からの知見も聞け有意義でした。下関地区でも乳癌検診で婦人科を受診する患者さんは多く、当院乳腺外来へも婦人科の先生よりの御紹介は多いのが現状です。内科は当然ながら、婦人科と外科の連携強化の必要性も感じています。一般演題は検診システム、画像診断に関するものなどがありました。私は“エコーにて乳癌が疑われた良性乳腺疾患8例におけるマンモグラフィの検討”と題した演題を発表しました。乳癌の診断においてエコー、マンモグラフィの両者が癌を示唆する所見でない場合、硬化性乳腺症などの良性疾患も念頭に置きより詳細な検討をすべきであるという論旨で発表しました。乳癌検診に関しては、2000年3月31日に厚生省より乳癌検診にマンモグラフィを併用すべきことが正式に通知され、これによって、全国各地で新しいガイドラインによる乳癌検診が行われつつあります。またマンモグラフィ読影もカテゴリー分類が導入され、マンモグラフィ指導者講習会が年数回開催されています。本学会最終日翌日には読影試験が行われました。厚生省は検診マンモグラフィを、講習会を受講し読影試験に合格した医師が読影するのが望ましいとの指針も示しています。私は昨年夏、聖マリアンナ医科大学で行われた講習会を受講、今回の試験を受験し山口県下で3人目の合格者となりました。当院では今春最新鋭のマンモグラフィ撮影装置と乳房専用ステレオバイオプシ−(生検)装置が導入される予定です。より高レベルの乳腺疾患の診断と治療を目指しております。
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