人間がウィルスに弱くなった理由
ウィルスは、植物、動物、昆虫などとともに一定の自然の生態系の中で生きており、生活環の中で安定的に循環している。「流行」という形にならず、「共生」関係にある。人間が森林やサバンナを破壊すれば、生態系のリズムが崩れてしまう。共生できない人間はウィルスに狙われる。生態系の中で循環しているウィルスに対し、動物も植物も免疫機構やその他の生理的抵抗性を身につけているが、人間は初めて遭うウィルスにスパッとやられてしまう。
人間がウィルス感染症に弱くなったもう一つの要因に、生活の変化に伴うストレスがある。人間の文明活動は生態系のみならず、社会環境、経済活動のすべてを変化させた。経済不況に伴う精神的ストレスもあれば、肉体的ストレスもある。かっては野菜や植物類の摂取が多く、食物のバランスもよかった。高カロリー食は生活習慣病をもたらすとともに、肉体にストレスをかける。人間は自然界から離れすぎてしまった。自然と常時接点があれば、ウィルスと共生しやすかった。ストレスが、ウィルスにとって非常にいい環境を生み出している。生活環境ストレスが生理的ストレスをかけ、免疫系に異常をきたす。ストレスはウィルス感染症の最大の敵といえる。
インフルエンザやSARSの発症には湿度が関連している。湿度60%以上になると、伝播力が弱まって流行にはならない。湿度が高いと、ウィルスは水滴とともに下に落ちてしまう。SARSについての状況証拠を調べてみると、空気感染が主流のようである。患者が咳やくしゃみをした後、水分が蒸発した飛沫核は小さければ小さいほど空気中を長く滞在できる。漂うウィルスを呼気と一緒に吸い込む空気感染は十分あったように思う。また糞口感染もあるようだ。
インフルエンザとの関連でいえば、ウィルスには干渉という現象があり、インフルエンザが流行すればSARSは収まる。インフルエンザのほうが伝播力が強く、早いサイクルで一気に入ってくる。ウィルスに人間が勝利することはまずないので、問題は被害をいかに最小限にするかである。細菌の場合は抗生物質で治療できるが、ウィルスではどうしてもワクチンによる予防が中心になる。化学合成した薬は抗がん剤と同じように、ウィルスとともに正常な細胞もやっつけてしまう。
ウィルス制圧への3つの戦略
1.感染源を絶つ
2.人から人へ伝播するのを防ぐ患者対策(患者の隔離)
3.ワクチン
ウィルスとの戦いには、いい武器と、いい兵士、いい戦略が欠かせない。武器はワクチンや治療薬、いい兵士は優れた科学者と現場の医師、これがそろえば、被害を最小限に食い止められるだろう。