1 趣 旨
アルコール依存、薬物依存、あるいは、ギャンブル依存などアディクション(嗜癖、※1)問題は、いまや、多くの市民・国民に蔓延してきている。この問題は本人のみならず家族をはじめ周りの人々をも巻き込むものであり、病んだ現代社会の一面を象徴するにいたっている。
アルコール(酒類)は、数千年に及ぶ人類の歴史とともに有り、人々に多くの幸福を与えてきた。しかし、とりわけ産業革命以降の生産力の飛躍的増大と所得上昇などと相まってアルコール消費も急上昇したが、それと併行してアルコール依存症(※2)にかかる人々の数も急増してきた。アルコール依存症は本人の身体的・精神的疾患のみならず、機能不全家庭を形成して配偶者・子供も巻き込む家族ぐるみの病気であるにとどまらず、仕事上でのトラブル、数回に及ぶ入退院などの社会的損失をも伴う問題であることが判明してきた。成長期にある子供たちは、親から多大の悪影響を受け、病んだ人生を歩むことを余儀なくさせられ、一方退職者等の高齢者でアルコール依存症になる人も多く、家族からも見放されて悲惨な余生を送っていることも分かってきた。これらのアディクション(嗜癖)問題は、アルコールにとどまらず、薬物、ギャンブルにおいても全く同様のマイナス効果を社会に及ぼしていることも明らかになってきた。
私たち名古屋緑断酒新生会に参加するものたちは、主にアルコール依存症を痛み、それから回復途上にある人々、および、その家族たちである。私たちは、会員のみならず広く一般市民をも対象としながら、年間百回以上におよぶ例会・研修会等を開催して、アルコール依存症からの回復と癒し、健全なライフスタイルへの転換(新生)をめざしてきた。私たちは、これからの実践の中で広くアディクション(嗜癖)問題全般についても解明し、これを個人の問題として放置することなく、社会問題として把握することの重要性を理解した.
私たちは、アルコール依存をはじめとするアディクション(嗜癖)に苦しんでいる多くの人々への働きかけと相談、及び、共に回復するための活動、酒害問題をはじめとするアディクション(嗜癖)問題の正しい理解と防止を広く市民・国民に啓発する活動、アルコール依存症者とその家族などアディクション(嗜癖)に苦しむ人々に対するスティグマ(烙印、※3)を伴う社会の傾向を取り除く活動、嗜癖者本人の自己中心性を特徴する家庭生活の健全化、及び、嗜癖に振り回されている家族が積極的な社会生活を営めるように手助けする活動、そして、アディクション(嗜癖)によって、形成された機能不全家族を構成する配偶者・子どもたちなどの人々の回復と癒しを手助けする活動を行っていくことを決意した。
私たちは、特定非営利活動法人アープを設立するに当たり、これまでの活動を継承・発展させるとともに、主に上記の活動を実践することにより、現に苦しんでいる人々、一般市民・国民への啓発などの働きかけをさらに強め、アディクション(嗜癖)問題をもたらさない健全な社会の建設に向けて貢献することをめざすものである。
※1)嗜癖、耽弱。「もの」「ひと」「こと」の何かに夢中になり、やめようと思ってもやめられない状態にはまってしまってい る状態(addiction)。
※2)アルコールを最も大切なものと考える態度や生き方が見られ、アルコールの飲み方でコントロールが利かず、心身 にわたる障害が起こってきている状態の病気(alcoholism,alcohol dependence syndrome)。
※3)何等かの状態を持つ人に対して付与された好ましくないレッテル、烙印、偏見(stigma)。
2 設立の認証申請に至るまでの経過
わが国のアルコール依存症に関する社会的な取り組みは明治以来展開されてきたが、私たちが活動してきた断酒会関係に絞れば次のようになる。
1963年 全日本断酒連盟設立 1970年 名古屋断酒会設立
1974年 愛知断酒連合会設立 1982年 名古屋南断酒会、名古屋連合断酒会設立
1991年 1月1日 名古屋緑断酒新生会結成(名古屋南断酒会より細分化・独立)
名古屋断酒新生会は、名古屋緑区と豊明市の公的施設等において、毎月8回の例会・酒害相談と1回の学習会、および、年3回のアディクション(嗜癖)問題に悩む本人と家族・子どもを考える研修会を、いずれも一般市民・医療関係機関にも開かれた形で開催してきている。 しかし、法人格のない任意団体であるため、知名度もまだ低く、財政的にも脆弱な体質のままできた。 今回の特定非営利活動促進法の施行に当たり、現在の名古屋緑断酒新生会の構成メンバーをはじめとするアディクション(嗜癖)問題に関してこれまで以上に社会一般、市民・国民への啓発、働きかけを強め、健全な社会の建設に向けて貢献していこうと、昨秋以来、8回におよぶ設立発起者による検討会等、および、2回の会員への説明会を経て、2月17日、設立総会を開催し、設立の認証申請を決定した。
特定非営利法人 アープ
設立代表者 住所 名古屋緑区作の山町18番地
氏名 杉村 太一