体力維持、ダイエット、競技能力の向上等、様々な目的を持って多くの人が運動をしています。
しかし、ただ漠然と身体を動かしているだけでなく、自分の目的にあった運動方法を実践しなければ目標を達成することは困難であり、逆に身体を痛めてしまうことになりかねません。
これはスポーツ活動においてのみではなく、日常生活の中においても同様のメカニズムで痛みが発生することがあります。俗に「使い過ぎ症候群(過使用症候群)」と言われるものです。
仕事等の日常生活上の活動、スポーツ活動を問わず身体を動かすことによって得られる身体的な能力(機能)の向上を運動効果と呼び、逆に身体を動かすことによって生じる様々な問題(主に痛みとして出現)を過使用症候群(スポーツ活動においてはスポーツ障害)と呼びます。
身体を動かすことによって得られるであろうと考えられる身体的効果は主に
@最大筋力の向上
A筋持久力の向上
B心肺機能の向上
C体脂肪の燃焼
D筋協調運動の習熟
E柔軟性の増大
などがあげられますが、これらは医療・介護の分野における機能回復訓練の基本的部分で一致するものであり、また、非常に重要なものと考えます。
特に上記@最大筋力の向上のメカニズムは、ケガや障害の発生に密接な関わりを持つことから、十分な理解が必要であると思います。

微細損傷の蓄積
ここまで、筋力増強のメカニズムについて説明してきました。そしてその中で「運動」と「休養」のバランス(厳密には「栄養補給」を含み三者のバランス)が適切でない場合に障害が発生することも述べました。
この考え方は骨や靭帯、腱などの他の組織についても当てはめて考えることができます。
身体の内部では代謝という形で常に古い組織が破壊され新しい組織に再生され作り変えられています。
そこに運動の刺激が加わることにより組識は強く破壊され、それによってその組識はより強い組織へと生まれ変わります。
しかし、先ほど述べたように十分に回復しないうちに組識が破壊されるということが繰り返されるとそれは障害となって現れます。
先ほどから、筋繊維の破壊、組識の破壊という言葉を使っていますが、ここで言う破壊とは肉眼で確認できないような極微少な破壊であり、それが積重なった状態を微細損傷の蓄積と呼びます。
運動の頻度とタイミング
運動を行うことは身体を痛めつけることであり、運動によって痛めつけられた身体は休養によってより強いものへと再生されていきます。従って十分な休養が必要であり、運動を行う頻度とタイミングが運動の効果を得るか障害を発生させるかの分かれめになってきます。
超回復の時期は運動強度や体力差により個人差があるため試行錯誤を繰り返しそれぞれベストの頻度・タイミングを見出すことが大切です。
運動の強度
運動の強度は最大筋力を元に決定します。最大筋力とは、その筋肉が発揮しうる最大の力のことを言います。
最大筋力は測定器具を用いて測定することができますが、器具がない場合には下に示す表を用いて算出することもできます。
| 反復回数 | 負荷強度(%) |
|---|---|
| 1 | 100 |
| 2〜3 | 95 |
| 4〜5 | 90 |
| 6〜7 | 85 |
| 8〜10 | 75〜80 |
仮に50kgの重量を5回持ち上げることが出来た場合、50÷90×100=55.5…となり、最大筋力は約55.5となります。
通常、最大筋力の30〜60%の負荷でトレーニングを行うのが良いと言われていますが、訓練を行う人の目的・目標や身体的な状態によって運動強度は違ってくると考えて下さい。
10RM法
筋力増強訓練の手法の一つとして10RM法という方法があります。
10回反復できる最大重量(10RM:repetition maximum)を用いて行います。
@10RMの50%の重量を10回
A10RMの75%の重量を10回
B10RMの100%の重量を10回
これを1セットとして3〜4セット行い、1週間毎に10RMを測定して負荷を高めていく方法です。
漸進的過負荷の原則
筋肉は運動を続けていくにつれて、その刺激に慣れてしまい訓練の効果は薄れ筋肉の発達は止まってしまいます。
常に新鮮な刺激を与え続けることによって筋肉は発達を続けます。しかし、単純に回数を増やすだけでは筋持久力の向上は望まれますが、最大筋力の向上は難しくなってしまいます。
また、回数が増えることでその運動の際に使われる関節の負担が増え痛みの原因にもなりかねません。
筋力増強を目的として訓練を行う場合には、少ない回数でより強い刺激を与えることが必要になります。
10kgの重量を100回持ち上げるのも、100kgの重量を10回持ち上げるのも仕事量としては同じかもしれませんが、筋肉に与える影響はまるっきり違ってきます。
また、トレーニングにかける時間の節約にもなります。