時代劇では、若い娘に迫る代官がしばしば登場する。すると若い娘も決まって、代官の欲望を退けようとする。ひとつのパターンである。でも、この筋書きは芝居での出来事であって、実際は、これとはちがっていたはずだ。若い娘は、代官に迫られたら、よろこんで同衾していたように思えるのだ。娘にとっては、代官は上流階級の資産持ちになるはず。正妻になれずとも、囲ってもらえればまさに玉の輿。代官の意に添うのが女として得策。村の田吾作や職人の熊と所帯をもったところでしょうがない。昔のことだから、親や親類などの世話で、貧乏人のところへ無理に嫁がされることもあるだろう。どうせ好きじゃない人のところに、嫁に行くのなら、金持ちがいいに決まってる。大体、農民と代官なら、身なりからして違っていたであろうし、格好良く見えたに違いない。”お代官様、やめてください”というせりふは、さらに代官を燃え上がらせる為に儀式的に叫ぶ、魂の悦びだ。落語にも殿様の元に嫁いだ妹が縁で、できの悪い兄貴が出世したという話があるが、めでたいということで終わっている。男は裕福であるべきだ。