研修医・医療系学生のページ
研修医の皆さん、学生さん、相手してください。
2005年
2月の話題「参考書」
良書を皆さんに多く紹介できるほどたくさん読んでいないので恐縮ですが、僕が初期研修でお世話になった(そしてこれからもお世話になる)本たちです。
特に「これは!」というオススメのものだけ掲載しました。ご参考下さい。ハリソンとかは、載せません。有名すぎるので。。。
1.内科一般
・SAINT-FRANCES GUIDE
TO OUTPATIENT MEDICINE
オススメ度:*****
黄色い表紙が目印です。診断学の教科書としては極めて基本的かつ有名ですので、学生の方でも持っていらっしゃる方が少なくないかもしれません。
胸痛、浮腫、呼吸困難…といった、外来でよく遭遇する症状から取るべき病歴・所見、鑑別、必要な検査、などを簡単にまとめてあります。
欲を言えば、もっと題材を増やして欲しいですが、逆に言えばそれだけプライマリケアの症状に限定して編集されているということです。
内科で、特に総合的な力を付けたい人に是非オススメです。4000円くらいで買えます。
同じシリーズで入院患者編のものもありますが、この外来患者編に比べるとイマイチ(他に良書があるため)なので、割愛です。
・Practical Guide
to THE CARE OF THE MEDICAL PATIENT
オススメ度:***
いわゆる研修医・レジデントのための「ポケット本」の有名なものに「ワシントンマニュアル」「PO臨床診断マニュアル」「モスビーガイドブック(本書)」があるが、どれも一長一短で、どれが良いということはありません。ただし、前2者は日本語訳が出ているため、良く売れているようです。
「モスビー」は、手技や検査も含め、ご丁寧に緊急使用薬のDoseの一覧カード(切り取り可能)までついており、値段以上の内容です。
ただし、リング製本なため、頑張って使うとすぐ破れます。僕のは健在です。(涙)
レイアウトも殺風景で、ワシントンマニュアルの方を好む人が多いのも頷けます。
辞書みたいなヤツが好きな人は「モスビー」をオススメします。マニア向け。5000円くらいします。
・ワシントン初期研修医必携マニュアル(日本語版、MEDSi)
オススメ度:*****
学生時代から、単語帳とか暗記メモを愛用した方はいないだろうか?本書はまさに「暗記メモ」です。
人は忘れる生き物です。指導医に何度怒られても、覚えられないことがあります。何度計算しても忘れる公式があります。それらのうちエッセンスのみ凝集させて薄い一冊に盛り込んだのが本書の特徴です。
内容は薄っぺらですが、「試験対策本」のように要点のみ的確にアドバイスしてくれているので侮れません。
何も分からずオロオロしてしまった駆け出しの頃に助けてもらいました。2600円です。
・検査の診断効率とピットフォール(中外医学社)
オススメ度:*
検査値について、正常域と異常値の解釈・鑑別などがずらずら書いてある本は数多く売られていますが、本書は検査法自体の「感度・特異度」といった検査効率や、「こういうケースでは何に注意すべきか?」といったピットフォールに焦点を当てている点で、他の検査本とは一線を画しています。
検査についても一言持ちたい内科医向けです。6600円とちょっと高いのが難点なので、星は1つです。
・BATES’ Guide to
Physical Examination and History Taking
オススメ度:*****
身体診察法の成書。図解を用いて身体所見の取り方について詳しく書かれています。
有名な一冊ですが、内科を志す人ならば、是非購入すべき一級品です。7000円くらいで購入できます。
・Evidence-Based
Physical Diagnosis
オススメ度:**
身体診察で、「この所見はどのくらい意味があるのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
この本は、診断学の参考書ですが、「○○という所見は診断にどのくらいのインパクトを持つか?感度、特異度、偽陽性…」などに焦点を当てて編集されています。昨今の文献から、エビデンスに基づいた身体所見の解釈に迫っています。
必須ではないでしょうが、読んでみると、意外な発見があります。
救急や総合診療など、診断によく携わる方は持っていても良いのでは?6000円くらいで買えます。
・FELSON’S
Principles of CHEST ROENTGENOLOGY
オススメ度:*****
胸部レントゲンの読影の基本書です。
日本語版もあるようですが、英語版でもあまり文字は多くないので苦労は少ないはず。
内科系の方は必携です。5500円くらいで買えます。
・メルクマニュアル(日本語版、日経BP社)
オススメ度:***
ハリソンに手が出るまでの時間や労力がない時にパラパラ使っています。
志は低く、日本語版です。ただ、内容はコンパクトながら濃厚で、勉強になります。
学生時代に使い慣れたイヤーノートを卒後も長く愛用されている方も少なくないですが、こちらに切り替えられても良いのでは?
9800円です。
・内科医のための精神症状の見方と対応(医学書院)
オススメ度:**
その名の通り、内科医向けに書かれた精神科診察の入門書です。
参考書というより、読み物的な書かれ方がされています。
どんなときに精神科を頼るべきか、精神症状をどう評価したら良いか、など日常診療で必須となる項目がまとめられています。
薄いので、当直のお供にもってこいです。2800円です。
・がん診療レジデントマニュアル(医学書院)
オススメ度:*****
僕はこの手の「マニュアル物」はあまり好きではないのですが、初期研修では是非購入して使ってみてください。
「臨床腫瘍学」という切り口で、各臓器の癌の各論から、緩和ケア、抗がん剤の使用、好中球減少時の対応に至るまで、癌診療に伴って出くわす様々なシチュエーションに対応した内容となっています。
マニュアル本なので、内容はそれなりにコンパクトですが、随所に最新のエビデンスを意識した解説などが見られ、執筆・編集された先生方の熱意が伝わってくる一冊です。3800円、買いです。
2.小児科
・小児科レジデントマニュアル(医学書院)
オススメ度:****
ローテーションが終わった今、小児を診察する機会は殆ど無いでしょうが、時々改訂版が出たら買い替えてもいいかな?と思う一冊。
小児科医以外で、持っておいて損の無い一冊だと思います。4500円。
・小児科診察入門(日本語版、MEDSi)
オススメ度:***
洋書の訳本です。小児科診察において気をつけること(態度やあやし方まで!)についてユニークなジョーク交じりで書かれています。
薄いので、短期間で読めるでしょうし、内容も読み物的なものなので読破できるでしょう。
「子供は小さな大人ではない」ことがイメージできるようになるでしょう。
小児科ローテーションの前に是非読んで欲しい一冊です。3800円。
3.救急
・問題解決型救急初期診療(医学書院)
オススメ度:*****
当直をするときに、一冊だけ携帯が許されるなら、僕は迷わずこの本を持ってゆきます。
著者の田中和豊先生は日本での外科研修、米国での内科研修の後、帰国後は救急領域で、また最近は医学教育やプリマリケアにも取り組まれ、ご活躍されています。そんな著者の直向に臨床に取り組んできたものが本書には凝縮されています。
現場で必要となることを、無駄なく編集されており、題名の通り「問題解決型」の臨床思考能力を養うことができます。4800円。
4.整形外科
・けが・うちみ・ねんざのfirst aid(医学書院)
オススメ度:***
整形外科をローテーションしているときに、こそこそ覗いていた本です。
非常に薄いですが、プライマリケアでよく出会う整形外傷の初療についてまとめられています。
外科系の方には物足りないでしょうから、内科向けです。3700円。
5.麻酔科
・MGH麻酔の手引き(日本語版、MEDSi)
オススメ度:****
麻酔について何かを語れるわけではないので、本の紹介など恐縮なのですが、本書は非常に勉強になったので掲載します。
麻酔とは何か、ということに限定されず、術前・術後管理の考え方など、麻酔科の基本を知るのにとても楽しく学べた一冊です。7200円。
6.感染症
感染症に関しては、感染症のページの「感染症の勉強の仕方」という項目で触れていますので、そちらをご参照下さい。
7.その他
・米国式症例プレゼンテーションが劇的に上手くなる方法(羊土社)
オススメ度:****
いくつかの米国式教育を取り入れている研修病院を除いては、我が国では「魅力的なプレゼンテーション」などの向上を目的に教育されている施設は少ないのではないでしょうか。自分も初期研修2年間を通してプレゼンテーションについて具体的な指導をしてくださった方は皆無でした。
米国ドラマの「ER」フリークの自分にとって、ドラマの中で颯爽と自信たっぷりにプレゼンするシーンは憧れでした。
そんなある日、この本に出会いました。具体的なプレゼンテーションの仕方について書かれており、初心者の自分にはぴったりの一冊でした。
3200円ですが、値段に見合う価値はあります。
・処方せんの基本ルールと書き方(エルセピア・ジャパン)
オススメ度:**
あなたは正しい処方せんの書き方を知っていますか?
電子処方の我が病院では、自分で処方箋を書く機会がないので、なかなか正しい書き方がわかりませんでした。
本屋さんで色々探しましたが、これが一番簡単で分かりやすかったので購入しました。1800円です。
2004年
8月の話題「研修病院の選び方」
多くの学生さんに質問を受けることのひとつに「どんな病院がいい研修をできますか?」ということがあります。人それぞれ求める理想の医師像は違うでしょうし、進みたい専門科によっても「良い」の定義は違うと思われます。ですからここでは僕が個人的に「おそらく普遍的に良い研修病院ではないか」というポイントと、タイプ別に分けてお勧めの病院像を挙げてみました。当然、個人的な意見になりますし、自分の目で病院を見て歩くことは大切なことだと思います。ただ、経済的・物理的に見学できる病院は数が限られますので、事前に行きたい病院のあたりをつけて見学に臨む必要があるのも事実だと思います。参考になれば幸いです。
1.良い研修病院の目安
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救急疾患を見ることが出来ること。――――基本的臨床能力を養うには救急疾患をこなすことも重要だと思います。1〜2次救急をやっていることがポイント。さらには3次救急までやっていればオイシイです。一部高度施設のように、3次救急しか取らないような救急では初期研修の目的は達せないと考えています。多くの科のスタッフの混合でなる救急ユニットが多いですが、救急専門医がいる病院では系統的な救急研修が受けられると思います。
A
幅広い症例。――――大学病院のように、癌しかいないとか稀な疾患ばかりとか、「ウチの教室ではこの研究やっているから」という理由で一つの疾患ばかり集められている病院は専門医研修向きであり、初期研修には不向きと考えます。「プライマリーケア」能力を養うためには一般的な症例(コモンディジーズ)を数多く経験することが必要でしょう。糖尿病の管理も出来ないまま、年間数例発症の稀な内分泌疾患を診るのはナンセンスではないでしょうか。個人的には、僕は初期研修は市中病院ですべき(私立大のように市中病院も持っている場合は別として)で、大学病院は不向きと思っています。大学病院が悪いと言うわけではなく、その性格から言ってさらに専門性を深めたい人が勉強するための施設と思います。
B
研修医がやる気にあふれている。――――説明の必要はないでしょう。やる気のない研修医の多い病院ではやる気を出しても周囲から浮くばかりか、煙たがられて「ブラックジャックによろしく」の斉藤君状態になるのがオチです。
C
指導医が熱心である。――――勉強熱心で、おせっかいなくらい指導熱心な指導医がいる病院は何といっても魅力でしょう。よくある「コレやっておいて」という指導医ではなく、「これはこういう理由でこのように考えるから、これらを考える。だからこの治療法を選択する。OOの本に詳しく載っているから、時間のあるときに調べておきなさい」のように、考える筋道を与えてくれる指導医です。ただし、超有名研修病院でもあまりお目にかかれないくらい貴重な人々ですが。「あまり教えると甘えて自分で考えなくなる」という反論をよく聞きますが、考え方もわからない人に自分で考えろとは乱暴な話です。「見て盗め」というのもナンセンス。一部の優秀な人を育てれば良い職人世界とは違います。全員があるレベルに達する必要がある仕事です。「やる気のないやつは伸びない」という発想は、他の業界では良いでしょうが、その人々が患者を診療することを考えれば、「伸びないやつを放置」することは患者に害を及ぼします。
D
カンファレンスが活発。――――カンファレンスがただの報告会に終わってしまっているところは、どうも活気に問題がありそうです。研修医もよく勉強していて積極的に発言できている環境があれば最高です。
E
研修医の出身大学に偏りがない。――――医者世界なんて閉鎖的なものです。少しでも独善的なところを直すのに、色々な出身の人々が混じっている病院は刺激が多いでしょう。同様なものになるべくそこの研修を終えてスタッフになった人がいるというのも重要なことで、完全にどこかの医局の人事でまわしている病院はスタッフの病院への愛着も薄いし、いろいろな面で偏りがあるのでは。
F
コメディカルが優秀。――――チーム医療において非常に重要なポイントです。医師と看護師の仲が悪い病院は良い研修は望めないといっても過言ではないです。コメディカルの方々から学ぶことも多いのです。できれば栄養士・薬剤師も積極的に病棟に出入りして患者を多面的にサポートしているような病院が良いでしょう。
G
安全対策・事故防止がしっかりしている。――――管理体制の問題ですが、院内感染とか、医療事故・過誤などの問題に積極的に取り組んでいる病院に越したことはありません。
以上をすべてクリアする病院など日本には存在しないのではないでしょうか。
僕の所属する病院も、あてはまるのが3〜4つです。病院を考える際、以上の項目が一つもあてはまらない施設は考え直しても良い気がします。
参考にしてみてください。