入院体験記
・海外で気胸になったら ・海外での気胸に備える ・入院で役立つ英語 ・掲示板
入院、チューブ挿入、手術。エジプト'Kasr El Aini Hospital'での20日間。
発症
 
チューブ挿入
手術前
手術
手術後
退院
現在
                             
2、入院 (1日目)

病室まで、看護婦さんが案内してくれた。僕とエザトさんは、5階の2人部屋に案内された。隣のベッドは空いていた。

部屋はとても清潔で、トイレもテレビも付いている。ベッドの横幅が狭いことを除けば、日本の病室と何も変わらない風景だった。看護婦さんは枕元のスイッチについて、エザトさんにアラビア語で説明した。一つはコーランを聞くスイッチ、もう一つがナースコールだという。ナースコールは、日本のようにインターフォン通話はできず、呼び出し専用だった。僕はとりあえずベッドに横になって、エザトさんが帰った後、少し眠った。

病院は”Kasr el Aini Hospital”といって、文字通り「カスル・エル・アイニ」という大きな通りに面して建っている。反対側はナイル川に面しているから、たぶん、半分の病室からは川が見えると思う。僕のところからは見えた。


病室から見えるナイル河。河の向こう側は大きな中州で町ができている。

カイロ大学医学部付属というだけあって、公立の病院としては国内最高レベルということらしいが、国が国なだけに、トップレベルにあるのは外国資本の、私立病院。その証拠に、先進国の患者は、僕の入院中、一人も見なかった。看護婦さんに、「外国人は入院してる?」と聞くと、「フランス人が1人、いるみたい」と言っていた。外国のガイドブックには残念ながら載らない病院だった。もっとも、入院や手術ということになると、病状が許す限り、エジプトを脱出して受ける人が多いというから、他の私立病院に行ったところで、状況は同じかもしれない。

しかし病院全体を見回しても、すごく清潔だし、大きいし、りっぱな病院だった。病院内の表示はすべて、アラビア語の下に英語が併記してある。イスラム教国らしく、1階にはモスクもある。死と真正面から向き合うことの多い大病院の中に、祈りの場所があるのは、言い方が悪いかもしれないけど、都合がいいと思った。

また、おもしろいことに、実は同じ名前の病院が川向こうにもう一つあって、そちらは医療費が(エジプト人の場合)全額、国の保険で賄われる。入院も手術もタダというだけあって、医療設備や、ケアの質には大きな差があるらしい。

私のいる病院は、エジプト人でもかなりの自己負担を強いられるから、ある程度経済的に余裕のある人や、医療費を負担してくれるような会社に勤めている人が入院すると聞いた。

朝一番で、エザトさんの友達が、僕のカルテのコピーを持って日本大使館に行ってくれた。そしたら驚いたことに、午前中、大使館の古谷さんという方が病院に来てくれた。「こんなことでわざわざ来てくれるんだ」と、感心した。古谷さんは、大使館付けの医務官からメッセージとして、「チューブを入れるだけであれば、この病院でも問題ないだろう」と伝えてくれた。「大使館の推薦病院リストには入ってませんが・・」という言葉にちょっとひっかかったが、大使館の知らない病院ではないということで、この時点で、この病院に頼ることに決めた。それから古谷さんは、住所や連絡先やらをいろいろ質問して、ノートに書きとめていた。「困ったことがあれば連絡ください」と言って帰っていった。

後日談。

後日、入院時に診てもらったアリー先生に会いに、もう一つの「Kasr el Aini」、川向こうの「大衆病院」を訪ねた。すごい・・。一言でいうと、戦場の診療所のようだった。とても古くて、所々、窓ガラスは割れていて、病院の匂いがしない。入り口を入ると左右に500メートルくらいある(ように見えた)とてつもなく長い廊下にまず、驚かされる。何のためにこんなに横ながの建物なのか。しかも、ほとんど人影がない。ぽつんと置かれた、患者を運ぶキャリーベッドに、かまぼこ型のケースがかぶせられている。「まさか」と思ったけど、あまり見ないようにして通り過ぎた。何だったんだろう。

とりあえず、アリー先生がいるはずの心臓外科を探して尋ね歩いた。ほんとにこの廊下は長い。一応は総合病院だから、この廊下の両側に、すべての科がぶら下がっている。一番奥まで行くと、反対側の奥はほとんど見えないくらい。やっと心臓外科に着いたけど、先生はいなかった。病室をちょっとのぞいて、またびっくりした。天井がやたら高くて、大きな部屋に、ちらっとしか見なかったけど、全部で30人くらいいたと思う。何か、ここにいるだけで病気になってしまいそうな気がした。僕が入院した病院と、姉妹関係だということにぞっとした。それにしても2つの病院の差は激しすぎる。もしこっちに運び込まれたら、治療を断っていたと思う。


もう一つの「Kasr el Aini Hospital」。世界で最も長い廊下?