「人工血管」置換術とは
心臓から拍出された血液は、大血管系(大動脈)と呼ばれる直径約15-20mmの太い動脈を通って、脳や腎臓、肝臓等の重要臓器に到達します。 大血管系は大動脈弁の直上から始まり、まず頭上へ向かいます。この部分の大血管は上行大動脈と呼ばれます。
次に、脳を含む頭部や上肢を還流する2本の血管(腕頭動脈、左総頚動脈、鎖骨下動脈)に分岐した後は、急に方向を足方へ転換して下行大動脈となります。従って、この上行大動脈下行大動脈の間となるところはきついカーブを描くため、弓部大動脈と呼ばれ、ここから頭部(脳)へ分岐する3本の血管を特に、弓部3分枝ともいいます。下行大動脈については横隔膜より上の部分を胸部大動脈、下の部分を腹部大動脈と呼び、肋間や腹部臓器に分枝を出した後、最後には左右2本に分かれて(腸骨動脈)両側の下肢に向かいます。
動脈瘤とはこうした動脈が局所に拡大したものをいい、特に、動脈瘤の壁が動脈壁から出来ているものを真性動脈瘤(true aneurysm)、血管壁の一部が破壊されて血管腔と連絡して血腫を作ったものを仮性動脈瘤(false aneurysm)と呼びます。その形態に応じて、動脈壁全体が紡錘状に拡大したものを紡錘状動脈瘤(fusiform aneurysm)、動脈壁の一部がその側面から袋状に突出したものを嚢状動脈瘤(saccular aneurysm)といいます。
大動脈瘤の頻度は剖検例のおよそ2%で男性に多く、年齢では大部分(70%以上)が動脈硬化性のものですがその他に、梅毒性、細菌感染性、外傷性のものも挙げられます。この動脈瘤が破裂してしまうと大出血をしてしまう為、破れる前に手術が必要になります。
大動脈流の手術は瘤を切除して、この部分を人工血管で置き換える事です。つまり大動脈瘤の手術と人工血管とは切っても切れない関係があるのです。そして、最近、人工血管は大変に進歩してきているのです。理想的な人工血管の条件は、
1. 手術の時の操作性が良いこと
2. 人工血管から血液の漏れが無いこと
3.
生体に良く馴染み、人工血管が自家組織で覆われること
ですが、最近登場したコーティング人工血管はこの理想に近づきつつあります。コーティング材のゼラチンやコラーゲンが、人工血管を作っているポリエステル繊維の隙間を詰める形となり、手術中は血液が漏れなくなりました。術後の出血もほとんど無く操作性も良好で吻合時間も短縮できるようになりました。このゼラチンやコラーゲンは術後2-4週後に溶け出し、次第に患者さんの自家組織に置き換わっていきます。
人工血管が必要となるもう一つの血管疾患として閉塞性動脈硬化症があります。人間の血管は末梢に進むにつれて細くなりますので、アテローム(脂質沈着)が血管内壁に堆積して血行が悪くなり、病状が進展すると血管が閉塞してしまいます。動脈閉塞を起こした部分より先端には血流が確保されませんので、人工血管にてバイパスし末梢への血液循環を再建します。主に、下肢においてバイパスするため、膝や大腿の付け根等の曲がりやすい部分への移植が多いため、人工血管の外側を補強材にてサポートし屈曲や潰れを防ぐものもあります。
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