内部障害への理解のために

1.はじめに
 内部障害は、身体障害者福祉法に定められた身体障害のうち、心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、ぼうこう・直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の6つの障害の総称です。1級、3級、4級の障害等級があります(ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害は2級もあります)。
 内部障害者へのアンケートによると、食事や着替え、トイレ、入浴などの日常生活動作については、約9割の人が「一人でできる」と回答しています。食事の支度や後片付け、身の回りの掃除、整理整頓、洗濯、日常の買い物などの日常家事動作については、約8割の人が「一人でできる」または「時間をかければできる」と回答しています。この結果からは、多くの内部障害者の日常生活には問題がないかのように読みとれます。しかし、疲れやすい、ストレスを受けやすいなど、外見からは見えにくい状態であるために、周囲から理解されにくいという面があります。たとえば電車でシルバーシートに座ると「元気そうなのに」と非難されるなど、誤解を受けることも少なくありません。
 では、内部障害とはどういう障害なのでしょうか。以下に、内部障害の概要を障害別につかみ、生活上の困難さや必要とされるサービスを整理し、今後の課題につき考察します。

2.障害の概要と、困っていること

(1)心臓機能障害
 この障害は、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)や、弁膜症、高度な不整脈などの疾患のために、心臓の機能が低下してしまうものです。薬物療法、手術、ペースメーカーの埋め込みなどの適切な治療を受けることにより症状はかなり安定します。全体的に、動悸、息切れ、疲れやすいなどの体力低下の症状があるために、他の病気になりやすい、かぜをひきやすいという特徴をもっています。継続した医療的なケアのもとで自己管理をすることが大切です。通院や生活管理をしながら、仕事を続け、日常生活をしていくことができる人もいます。
 ここで、ペースメーカーについて紹介します。以前は、ペースメーカーの寿命は約5年といわれていました。また、携帯電話やPHSがペースメーカーに影響を与えるといわれていました。しかし、現在では、機器の精密化によってペースメーカーの寿命は15年から20年に延び、携帯電話などの影響についても埋め込み部位から30cm以上離して使えば問題はないといわれています。周囲の人が、電車の中では携帯電話の電源を切るなどの配慮をすれば、ペースメーカーをつけた人が安心して街中を歩けるのです。
 今後の課題として考えていかなければならないことは、心臓移植の問題です。心筋症は治療法がなく、対症療法が中心となりますが、欧米では心臓移植による治療で日常生活が改善されています。しかし、日本では移植のための医療はまだ開発途上であり、費用についても医療補助の適用ではないため、何千万円という自己負担金が必要になります。医療環境の整備や移植のあり方が課題となっています。

(2)呼吸器機能障害
 この障害は、肺結核後遺症、肺気腫、慢性気管支炎などの疾患によって、肺呼吸が不十分で、肺胞内のガス交換が妨げられるものです。慢性的な呼吸困難、息切れ、咳の症状があり、いつでも息苦しい状態です。このため、階段の上り下りや布団の上げ下げのような、やや負担を伴う日常的な活動が困難になります。外出に困難を感じる人も多くいます。その理由として、階段や坂道がある場所では、呼吸に負担がかかるため、移動が困難になることがあげられます。また、公衆の場では禁煙の場所が少ないため、外出するときにたばこの煙を避けることが困難です。人ごみを避けることが難しい場合もあります。
 症状を改善、安定するためには、酸素療法、薬物療法、吸入などの治療が必要です。近年、在宅酸素療法(以下HOT)を行う人が増えています。HOTとは、鼻にチューブを入れて、携帯用ボンベから酸素をとりこむ方法で、これによって、日常生活の息苦しさが改善されます。ただし、携帯用ボンベは重くて持ち運びにくく、「見た目が恥ずかしい」「通行人に『邪魔だ』と言われた」などの理由で、使用することに抵抗を感じている人もいます。周囲の人に奇異な目で見られた経験などから、外出がおっくうになったという人もいます。
 多くの呼吸器機能障害者が、病気の進行や予後がわからないこと、加齢、体調の急変について不安やストレスを強く感じています。また、苦しさを人にわかってもらえないために、精神的なストレスを感じる場合もあります。不安やストレスを軽減するためには、本人が医療関係者に病気に関するきちんとした説明を受けること、情報の提供を受けること、精神的サポートを得られる体制づくりが必要です。

(3)腎臓機能障害
 この障害は、慢性腎不全、糖尿病性腎症などの疾患のために腎臓の機能が低下してしまうものです。適切な治療を行って症状が安定していれば、日常生活上それほど困難を感じることはないのですが、疲れやすいという特徴があります。食事、薬物、運動などの保存療法によって改善できない症状がある場合には、透析を行うことになります。
 透析には、例えば週3回、1回4時間といった、一定の時間がかかります。体調の改善のために透析を受けるのですが、治療や通院が心身の疲労につながることもあります。時間の制約があるので職場や学校を続けながら透析を受けるのが負担になることもあります。このような場合、周囲の人が通院について理解し、時間を配慮することが必要です。また、透析は継続して受けなければならないため、長旅がしにくくなるという人もいます。手続きをすれば旅行先でも透析を受けることは可能ですが、手続きが複雑で、慣れない場所での透析は不安に感じる人もいるため、利用は多くありません。治療機関の整備や、他地域で透析を受ける手続きの簡略化が必要です。


(4)ぼうこう・直腸機能障害
 この障害は、脊髄損傷、先天性奇形、炎症性疾患、悪性腫瘍などの疾患のために、ぼうこう・直腸が機能低下または喪失し、排泄機能が妨げられるものです。排尿・排便のコントロール、ストーマのケア、食事などの生活管理をすれば、日常生活が可能になります。
 最も大変な管理は、排尿・排便のコントロールです。たとえばある人は、週に1回下剤を飲まなければならず、土曜日の夜に下剤を飲むと、その影響があるために日曜日には外出できません。また、オムツを使っている人は、1日に数回オムツを交換しなければなりません。自宅のトイレでなら問題はないのですが、外出先ではトイレが狭い、数が少ない、汚い、オムツを棄てるごみ箱がないなど、困ることが多々あるのです。オムツがかさばり荷物になることや、トイレに時間がかかることで周囲に気を遣い、旅行をやめてしまう人もいます。便・尿や臭いが漏れるのではないかと不安に感じる人もいます。
 ストーマとは、人工的に造設した、腸内容や尿の排泄孔のことです。ストーマ用装具は身体障害者福祉法で補装具として交付されます。ストーマを造設したことにより精神的ショックを受けている人もいます。また、性機能障害があり負担を感じる人もおり、精神的サポートを得られる体制が必要です。災害時の補装具補給が保障されることも今後の課題です。

(5)小腸機能障害
 この障害は、クローン病、小腸軸捻転、先天性小腸閉塞症などの疾患による小腸機能の低下または喪失のために、栄養の維持が困難になるものです。消化・吸収をつかさどる器官の障害であるため、食事のコントロールや制限が治療の中心になります。
 たとえば、ある人は、プリンや豆腐は食べられますが、これ以外、経口での食事摂取はできません。このため、鼻から自分で管を入れ、寝ている間に栄養を落とすのです。また、完全絶食が必要な人は、中心静脈栄養を行います。これは、栄養素を静脈から直接注入する栄養法で、在宅でもできます。
 この障害は、特に食生活に制限があるため、周囲の人が病気についてよく知らない場合、本人の精神的負担となることがあります。たとえば外食や宴会の時に、食べたくても食べられない場合や、人に勧められても断わらざるをえない場合があるのです。このような時に周囲の人が「おいしいから食べてごらん」など言うことに対し、ストレスを感じる人もいます。職場などで、頻繁にトイレに行っていると「さぼっているのではないか」と言われることもあります。精神衛生を守ることのできる環境、つまり、本人が病気のことを相談できる環境や、本人に飲食などについて強要しない環境づくりが必要です。

(6)ヒト免疫不全ウィルスによる免疫機能障害
 ヒト免疫不全ウィルス(以下HIV)感染によって免疫機能が低下する障害です。ウィルスや細菌などの弱い病原体で病気になったり、脳や神経に症状が出たりすることがあります。平成10年4月1日から、身体障害者福祉法による障害認定の対象となりました。手帳を取得すると、医療費助成、各種手当の交付など、様々な福祉制度を利用することができます。しかし、手帳には、住所、氏名、疾病名、写真などの個人情報が掲載されるため、プライバシーに関して不安を感じ、申請しない人もいます。病状が安定していれば、薬を定期的に服用し、飲食物や生活のリズムを管理することで、職場や家庭での日常生活が可能です。
 この障害は、周囲の誤った知識や偏見、病気に対する差別がもっとも大きな問題です。宴会の席で回し飲みをするときに、「ぼくは悪い病気はもっていないから大丈夫だよ」と何気なく言う人がいますが、このような発言が感染者を傷つけることもあります。HIVは感染力が弱く、体液を通さない限り一緒に生活しても感染することはありません。正しい知識を一般に広め、偏見を除いていく必要があります。

3.医療・福祉サービス

 内部障害者のためのサービスに欠かせないものは、医療費助成と、公費負担です。高額な医療費を必要とする人が多いので、身体障害者手帳を取得して医療費助成を受けることは、生活の保障につながります。補装具、日常生活用具については、まだ対象範囲が限られており、また、現在ある医療・福祉サービスについて情報を得たり相談したりする場が少ないという問題があります。表1は、内部障害者対象の主な福祉サービスを障害別にまとめたものです。


4.まとめ
 内部障害について、大まかに述べてきましたが、今後の課題として、主に3つのことに整理しました。

(1)サービスの充実
 内部障害者が利用できるサービスは、まだ十分ではありません。医療費助成や、公費負担といった経済的な保障は、対象範囲が増えてきてはいますが、まだ高額の医療費を自費で払わざるを得ない人もいます。
 病状を安定させたり悪化を防いだり、日常生活能力(ADL)の低下を防いだりするためには、訪問看護、訪問リハビリ、補装具、日常生活用具など、在宅ケアサービスの充実が必要です。

(2)情報提供、相談の場
 内部障害者のなかには、病気や健康管理についての情報が不足しているため、予後がわからず不安を抱いたり、誤った健康管理をしていたりする人がいます。身近な地域に、専門的な医療機関、医療や福祉に関する相談・情報提供の場を充実させる必要があります。さまざまな疾患や障害について、患者会などの当事者団体があり、情報交換の場として有効です。このような場は、同じ障害をもつ人が互いにわかりあえる場でもあり、精神的な支えとなっています。

(3)周囲の理解
 内部障害については、一般にまだあまり知られておらず、周囲の人に誤解を受けることがあります。内部障害者がより快適に社会生活を送るためには、周囲の理解が必要です。特に職場では、本人と十分に話し合えるような職場環境の整備が必要です。今は障害のない人も、将来、内部障害をもつ可能性をもっています。自分が障害をもったとき、どのような配慮が必要か、どのような援助があれば社会生活を続けられるかを考えてみることも大切です。(東京都心身障害者福祉センター 情報シリーズNo.15より)

 

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