5月20日(火)


彼女の意外な行動


 4月のなかばの、ある日の午前中のオハナシである。

 朝一番で健康診断をすませた私は、職場へ向かうべく山手線に乗り込もうとしていた。時間はお昼ごはんには少し早かったが、せっかく外にいることだし先に済ませてしまおうと考えた。うちの職場の食堂はまずいものしかでないのです。場所は、浜松町駅の喫茶兼軽食屋さん。
 カニ肉の入ったカレーライスようなものを食べてました。

 そこへ、黒いリクルートスーツを着た若いお姉ちゃんが入店。
 大変だねえ、この就職難。もうこの時期から就職活動するのは当たり前かア、などと感慨にふけりつつ、彼女の行動をちらりと見やった。
 彼女は注文をすませた後、たばこを出して100円ライターで火をつけた。
 ほどなく、アイスティーが出てきたがそれには手を触れず、しばらくたばこを楽しんでいた。
 数分後、彼女はバッグから15センチ×20センチほどのスタンド付き鏡を取り出し、テーブルの上にポンと置き、鏡をのぞきこむように見ていた。

 ああ、これから化粧直しでもすんのかな

 と私は思ったわけ。最近は電車の中でも平気で化粧直しをする女の人がいるので、喫茶店で化粧直しをすることに対しては、別段驚きもしなかったのです。

 ところが、彼女のとった行動は予想を裏切った。

 やおら、小物入れからごく小さい金属製のものを取り出し、鼻の中に突っ込んだのです。

 チョキチョキ、チョキチョキ

 それは、鼻毛専用のハサミでした。私は生まれてはじめて、人前で鼻毛を切る女の人に出会ったわけです。
 それは、数年前、埼京線車内で歯を磨いているおっさんに出会ったとき以来の衝撃でした。


・・・ところで、電車で歯を磨いているおっさんに遭遇したオハナシは、この日記で紹介したっけか?



4月22日(木)

前回ふれたおっさんについて以前書いたかも知らんが、もう一回書いておこう。


おっさん何してんねん

 もう5年近くも前、ある日曜のこと。夕方も過ぎ、夜になろうとしてた頃。
 私は、新宿で買い物をすませた後、自宅へ帰るべくJRに乗った。
 新宿から池袋までは、JRで行くなら2通り行き方がある。山手線と埼京線を使う方法がそれ。山手線は新宿から池袋まで各駅にとまり、時間にして10分。埼京線は直で行き、かかる時間は5分。ただし埼京線は本数が少なく、5分から10分間隔で運行。山手線は1、2分も待てば乗れる。埼京線であっても、長く待つようなら山手線の方が早い。新宿駅は山手線のホームと埼京線のホームは離れており、電光掲示板で埼京線の発車時間を確認して、すぐ出るようだったら埼京線に乗り、しばらく待つようだったら山手線に乗る、というのが私の毎回のパターン。

 さて、その時は埼京線に乗ったわけである。
 車内は割合空いており、といっても座席は全て埋まっていて、立っていても他の人の身体に接触はしない程度に空いていて、私は立って乗っていて、ボーっと車内広告を眺めていた。
 新大久保駅を通りすぎたところで、つり革につかまって、やや上方を向き、何やら手を動かしているおっさんがいた。よくみると、歯ブラシを口の中に突っ込んでいる。さらによくみると、ちゃんと歯磨き粉もつけている。
 そのおっさんは、ごくごく自然に、おくすることもなく、車内で歯を磨いていた。全く何気なく歯を磨いているので、逆に違和感がない。車内の風景に溶け込んでいた。見た目はだあれも知らん顔。おっさんを見ているのは私一人だった。

 さて、新宿始発だったその電車は、やがては埼玉方面へ向かう。おっさんは果たして池袋で降りるんだろうか?
 新宿から池袋まで5分、トイレにかけ込み口をゆすぐまで、10分たらずですむ。それ以降の駅だと、果たしておっさんは口に含んだ歯磨き粉と諸々を、一体どう処理するのであろう?
 いや、おっさっんは絶対池袋で降りるはずだ。そうに違いない。でなければ、一体どう口の中のものを処理するというのだっ。

 注目してました。

 もちろん、おっさんは降りずにそのまま電車に乗って去っていきました。おっさんの行方がとても気にかかりながら、私は池袋を降りたのです。

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