来人(らいと)27歳強盗および殺人により禁固15年と処す。
俺が刑務所へ送還されたのは2233年4月桜の舞う季節だった。
そして俺は3人部屋の禁固室にいれられた。
小太りの男が言った。「俺は1193番大麻でパクられてもう3年ここにいる。
あそこの窓のヘリに腰掛けて外を眺めているのはリーダーの88番ここで7年になるらしいぜ。」
振り向くと俺の身長165cmよりも高いところに少し多きめの窓があり、そこには小柄の50近い男が腰をかけていた。
「ここでは番号で呼び合うんだ。そしてこの部屋のルールはすべて88の意見に従え、いいな。お前は何番だ?」1193が尋ねた。
俺は応えたくは無かったが余計ないざこざはごめんと思い返事をした。
「1610。」
すると突然88が窓のところから飛び降りて俺にこう言った。
「あの窓は俺のものだ。わかったな。」
「判ってますよリーダー。こいつにも言い聞かせておきます。それりも今日はどうだった?いいモンみれたか?」
「ああ、桜が満開だ。どこまでも続く壮大な菜の花畑と一本だけ大きくたたずんでいる桜は絶品だ。俺はここを出たらあの桜の木の下で酒を飲みながら花見をするぞ。」
そういうと88番は布団をしいて寝てしまった。
1193が俺に小声でいった。「あの人は一生ここから出られないんだ。妻殺しで無期。窓に近づくなよ。お前も殺られたくなかったらな。」
どうせ俺も殺人だ。あいつと俺はかわりゃしねえぜ。

規則正しい厳しい生活が何ヶ月つづいたろうか?朝早くから起こされ、トイレに行くにも看守の許可がいる。うんざりだった。ただ一つの楽しみを除いては。

「リーダー、今日外は何がみえた?」
「藍々とした桜の木にはセミが留まってそれを子どもが網で捕まえようとしていたな。菜の花畑は一面のひまわりに様変わりだ。綺麗だぞ。空は青いし。」
俺は窓の方を見てみたがたった今降り出した雨の音しか感じとれず何もみえなかった。

これが俺と1193の楽しみだった。

秋になれば紅葉、冬になれば雪の降り積もるあの桜の木の話をする。早く出たいおれにとって窓の外は宇宙だった。
ここへ来て一年がたっただろうか?
桜の季節がやってきた。俺は桜の木をこの目で確かめてみたくて仕方なくなった。

ある日のこと、来人にチャンスがやって来た。
小太りの1193が面会でリーダーとふたりきりになったのだ。運良いことに仮眠をとっている。来人は窓のヘリに手を伸ばした。
「何をしている!!!その場をどくんだ!!!」ものすごい勢いでリーダーが足にとびかかってきた。「放せ!お前だけにいい思いをさせてたまるか!俺にも外をみせろ!!!」
おもいきり振りほどいたせいでリーダーは壁に頭を打ち付け倒れ、意識をうしなってしまった。
「この窓はこれでおれのものだ!」
来人が外を覗き込みました。

外は高黒い刑務所の塀しか見えませんでした。

数十年後、4月。
ひとりの若者が刑務所に送還されて来た。禁固室では窓のヘリに座り、外を見つめている白髪混じりの来人が座っていた。
若者が言った。そとは何がみえるんだ?

「ああ、桜の木が満開でとても綺麗だよ。」

おしまい       2003.10.2

※この作品は僕が子どものころ誰かに聞かされた話を元に作成しました。原題をしっていたら教えてください。