思い出 〜巻き戻し編〜


未来来人(みきらいと)は現在25歳。これといった特徴もなく平凡な毎日を送る普通の人間である。
来人はいつも心の中で思っていた。「ああつまんない毎日だ。何かいいことないかなぁ。」
思い起こせば幼い頃からの記憶が蘇る。小学校、中学校といじめられたこと。会社の上司の意味のない罵声。ああ、あの時こうしておけば・・・・あそこでがんばってたらこんな今はないはず・・・・。途方に暮れるばかりである。
 来人が好んで欠かさず見ているテレビアニメに名探偵コナンという番組がある。主人公の17歳少年はある組織によって身体を小さくされ、見た目は小学一年生にもかかわらず記憶や頭脳はそのまま、次々と巻き起こる難事件を推理によって解決していくといったストーリーである。「俺もこんな風に記憶を持ったまま小学一年生に戻れたら優等生にんされるのに。しかも時空まで超えて過去にもどることができたら・・・・。」そんなことを思いながらいつものように仕事を終え岐路についた。

ならばその望み叶えてやろう

耳元で誰かがつぶやいた。そんな気がした。

 来人、早く起きなさい。学校始まるでしょ。」聞きなれた声とともに目覚めた来人は我に返った。「どうして?僕はいま名古屋で一人暮らしのはず。お母さんがこんなところにくるはずがない。それに学校って?あ!!!?」あたりを見渡した来人は目を丸くして絶句した。そこは生まれて22歳まで育った豊橋の実家だったのである。少し違う、何もかもが懐かしい、今の実家じゃない、18年前の家だ。来人が着ている服、体つき、母親の顔、すべてにおいて小学生のあのころだった。
「ねえ、お母さん今日何年何月何日?2001年じゃないよね。」恐る恐るきいてみた。「なに寝ぼけてるの?今日は1983年の4月4日。あんたが楽しみにしていた小学校の入学式じゃない。もうしっかりしなさいよ。」
「やったあ。あの言葉は本当だったんだ。もどったんだ。最高。これでやり直せる。」
再び小学生にさかのぼった来人に人生のやり直しがはじまった。しかし勉強はあいうえおから覚える。足し算や九九も一から覚えなおす。夜は夜で7時にはねむらされる。違った意味で退屈だった。その日に起こる出来事、知り合う友人、言葉一つ一つにとっても全く同じなのである。退屈ではあったが25歳の時と違い、重圧もなく、嫌なことはさけ、自分の良いように過ごした。
数年が経ち成績が優秀ではあったが来人は頭のいい高校へは行かず、やはり同じ高校に入り、同じコンピュータの専門学校に入学した。皆が不思議がったが、やはり今までと同じ友人に出会うためにそうしたのだ。
あ、あそこでクールにしてひとりでいるのは城野くんだ。声かけよう。確か僕から話し掛けて仲良くなったんだよな。「はじめまして。僕未来来人っていいます。」
城野君とはやり直す前の時代でも仕事の休みにはいつもあって遊ぶ友人である。
そのためからか、今回は今まで以上に急激に親しくなり友情も深まった。

そんなある日のことである。来人は今までの事情を城野君に話そうと決意したのである。
「ねえ、城野君聞いてくれる?」すべてをうちあけた。彼は黙ってそれを聞き、最後に「それはよかったね。」と、遠くの方を見つめて言った。
就職も安全策をとり、同じ会社にはいった来人は次々と見覚えのある人々と知り合った。
結局は同じ道を歩んできた訳だが退屈ではなかった。何度も言うように嫌な道は避け都合のいいように過ごして来たのだから。そして・・・・・
来人は戻ったあの日が今日だと気が付いた。「あれ?どうしよう?明日からどうすればいい?何が起きる?不安だ?好きなバイトの○○ちゃんとはうまくいくんだっけ?ない。うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」明日から思い通りにならないと知った来人は一瞬にして老けてしまったのである。25歳に18歳を足した43歳に・・・・・。

城野君が来人の所へやってきてこう呟いた。
「人生やり直したい。同じ道を都合の良い様に過ごしたいと思ったのなら、一度寿命を
全うして死ぬ寸前に戻るべきなんだよ。わかるかい?」

彼はすべて知っていたのだ。2度目だから。
おわり