第七十回 お題:「庭」
チャンプ作品(2作品同時受賞)
くみ。 ◆/DExt4SBtc
474 :意識のある庭1 :04/07/09 18:51 ID:AO0Y7CVX

僕には世話をしてくれる
狭くて苦しい家に住む
女の人がいます

彼女は花を植えます ごく普通の花です
パンジーやらペチュニアやら
買ってきては植えます
最近僕は 手入れされる事が
ガーデニングと呼ばれるのを知ったので
何度も呟いてみたりします

植えるには掘らなくてはなりません
花と同じくらい普通の赤いスコップで
彼女は一生懸命穴を開けます
正直痛いので やめて欲しいですが
生憎僕には口が無いので
伝える以前の問題です
仕方なく僕は黙っています

ついでに 草抜きも嫌です
人間で言うならきっと
髪の毛なるものを引っこ抜かれるみたいなもので
昔はそんな拷問もあったと聞きます
壮絶です
ありもしない体がのた打ち回るようです
特に ストレス発散と名付けられた
勢いのある抜き方には 泣きそうです
実際僕は 叫ぶのですが
あくまで例えで 声など無いです
この時僕は 口が無くてよかった
と思うのですが
抗議できない事に 苛立つ事もあります


475 :意識のある庭2 :04/07/09 18:52 ID:AO0Y7CVX

彼女は
そうやって痛めつけた僕を
自慢にしているらしいです
何故なら
必死で手入れしたからです
誰かに認めてもらいたいんです
僕は痛くても 彼女は何ともないし
それに 花があります
少なくとも花は綺麗です
お客が来ると
僕を見せに来ます
皆は
一応褒めていますが 僕は知っています
本当はぶっちゃけた話 どうでもいいんです
彼女にはガーデニングなど似合わないし
決して上手いとも言えませんので
そんな人の目は ひどく冷たいです
冬に撒かれる水に似ています
僕は そういう目を向けられるのは
霜ふる夜に似た辛さを感じるのですが
頑張って手入れしている僕が
こんな目を向けられていると知らず
見せびらかす彼女が すこし哀れなのと
ざまあみろ という気持ちが生えるのを
楽しく思うのです
それはまるで
人に飼い慣らされた従順な庭が
飽きられて荒廃していく様を見るようです
雑草に栄養を吸い尽くされて
打つ手も無く死んでいく庭を見るようです
僕はそんな楽しさを芽吹かせるのと同時に
密やかな憧れの花を咲かせるのです

 

チャンプ作品に対する批評

MUJINA ◆iXws.WGCLY 
1点
本当に庭がしゃべっている(これも一興)のかと思ったが、「それはまるで/人に飼い慣らされた 
従順な庭が/飽きられて荒廃していく様を見るようです」とあるから、庭は作者=僕の比喩だとわかる。 
それでは、彼女とは誰か。母親か。 
ともかく、発想が奇抜でおもしろい。これに哀しみが加わってくるようだと、この詩も 
いよいよ本物だ。 

ななほし ◆lYiSp4aok.
2点
先の読めるような書き出しに、さて、さて、……と読み進めた。 
「人に飼い慣らされた従順な庭が」<ここでちょっとがくッ ときた。 
 最後は、詩人のやさしさがあいまいに話を終わらせてしまったようだ。庭は苦しみ 
持ち主はあざけられ。……なのに時だけが過ぎていく。この詩チェーションの終り方ではなかった。 

山田 ◆jipx.wAXvs 
2点 
「庭」というテーマに一番沿っているのがこれだと思う。 
庭が喋っているのか、比喩なのか、作者の解説キボン。
 
Canopus ◆DYj1h.j3e. 
1点 
発想がいいよね。最終部、能動的な庭が少し弱いかも。 

 

 

グリーンブック ◆yCYysoyX.A

 

488 :Sky Fruits (1/10) :04/07/10 23:30 ID:bLfsl8kg

背景は大きな太陽のおかげで
水色ひとつ

昼下がりの蒸れた暑さで
けだるくなった公園に立ち並ぶ
珍しくも無い ありふれた木々

 ふうふる

やわい風が吹き通り
疎らに揺れる色鮮やかな枝葉たち
茶色や緑色の彼らに全方位を取り囲まれ
産声あげる その隙間

 空へと直結した
 空気が走るトンネル
 透明に貫く光線

そこでは 常に形状を変化させながら
大小数え切れない『空』が実っている

●

僕は見た
果実を育むことの無い木々でほほえむ
晴れ渡る 瑞々しい空の欠片を

 名付けるならば
 スカイフルーツ


489 :Sky Fruits (2/10) :04/07/10 23:31 ID:bLfsl8kg

空と空が隣り合うけど空々しく無い
みな親しげな笑顔のスカイフルーツ
サワサワサワ
とおしゃべりする葉っぱたちと違い
肉声を発さず 空(ソラ)だけど空(カラ)じゃ無くて
実のある心と心で 静寂を保ち会話してるのかな

今 僕が魅了されたせいか
吊り人形となって操られて
頭 両手両足が一本の木の根元に近づく
目の届く範囲で スカイフルーツが最も鈴なりの木だ

それはきっと 至近距離で
手に取るように まじまじと観察したくなった
というよりも
木によじ登り
本当に一つ 手に取って
頭上へ掲げ
力強く スカイフルーツを握りつぶし
頭髪から土踏まずまで その果汁のシャワーを浴びたくなったから
頬を湿らすであろう果汁も舐め ガラガラ痛む喉も癒したい

しかしどれもこれも
この暑さが原因で
そうでもなければ
こんなことを僕は
考えずに済んだ
はず

●

木陰に入った


490 :Sky Fruits (3/10) :04/07/10 23:32 ID:bLfsl8kg

根元から見上げても
スカイフルーツは遠い宝石
幹から伸びる小枝も 手近に皆無
樹皮に爪を喰い込ませても
上へ上へと登るきっかけは作れず

汗を吸い続けるTシャツの重みで
乾いた地面は沼地のように陥没し
バランスを崩し
果汁の代わりに
僕の頬へ砂粒が
流れ込んできた

●

顔を地面から離し
汚れも構わず直立すると
周囲が異様にうるさく感じ
顎を上げれば 大きな太陽
あいつだ あいつのせいだ
苛立つ僕は左手の指五本をめいっぱい広げて
やかましいその丸みを覆い隠そうと
綺麗な水色の上へ載せてみた
とき

あることに気づいた

 僕の指と指の隙間
 発芽したばかりの
 空の果実


491 :Sky Fruits (4/10) :04/07/10 23:32 ID:bLfsl8kg

 底辺を持たない
 縦長の三角形で
 まだ開放されたままの
 スカイフルーツとは呼べ無い
 未熟なものが四つ
 並んでる 

 空の中
 左右に何度 手を振っても
 地上へ逃亡せず
 僕の指の隙間に留まってる
 可愛らしいその笑顔

●

果樹園経営者の気分になって
おしべとめしべを受粉させるように
親指と人差し指の先端を 期待を込めて繋ぎ合わせると
円とも四角ともいえる 不恰好なスカイフルーツが一つ
空で 僕の指間で 成熟を迎えた

思いがけず スカイフルーツを手に入れた僕は
当初の計画通り 水分を求めて 果汁のシャワーを浴びるため
握りつぶそうと
手のひらに力を
込めようとした


492 :Sky Fruits (5/10) :04/07/10 23:33 ID:bLfsl8kg

けれども
なぜか 力は一向に入らず
挙手したまま 銅像みたく凝固してしまった
唇は開いたまま動作せず 息はできるが
助けが呼べ無い


◎


  ああ
  僕は
  この公園で佇む木に
  なってしまったのか
 
  あるのか
  無いのか
  わから無い
  ような
  スカイフルーツを
  人間の身体に寄生させたため
  自分は一本の木として
  生まれ変わったのか

  自分の姓は
  『木』から始まる
  珍しくも無い アレだ
  より相応しい容姿に
  落ち着いたのか


493 :Sky Fruits (6/10) :04/07/10 23:34 ID:bLfsl8kg

  動物模様のバックを提げた
  幼稚園児らしき子ども達が
  僕に話しかけず
  前方を横切った

  僕の姿は
  見えている?
  彼らの目には
  自然の一部として
  映っている?

  中学生くらいの女の子が
  飼い犬に引っ張られて
  こちらへ向かって来る

  お尻をもぞもぞせたあの犬
  まさか 僕という木へ
  小便をしかける気じゃ?

「こらっルーシー」


494 :Sky Fruits (7/10) :04/07/10 23:34 ID:bLfsl8kg

  リードはぴんと張られ
  首輪が抜けそうなほど
  躍起になって犬は前進する
  女の子の抑止は無視


「そっちには、木があるだけでしょ」


  隣の小部屋での野蛮な遊びが
  厚い壁から不覚にも漏洩したようだった
  音量は微々たるものだった
  しかしそのフレーズは
  僕の血液中へ不法侵入し
  体内を何度も駆け巡った

  ・・・そっちには、木があるだけでしょ・・・
  
  ・・・そっちには、木があるだけでしょ・・・
  
  ・・・そっちには、木があるだけでしょ・・・

  ・・・

  ・・

  ・

  赤の他人により
  遂に証明されてしまった
  本物の木なのだ
  僕という奴は


495 :Sky Fruits (8/10) :04/07/10 23:35 ID:bLfsl8kg

  あはは!



   (風を切っている)

   (走っている ようだ)

   (それぐらい わかる)

   (どこへ行くのか)
  
   (それだって 知っている)

   (さあ ひねるんだ)

   (おもいっきり)


◎


ばしゃばしゃばしゃー

顔面を叩く水流の冷たさで我に返った
スカイフルーツが破裂したんじゃ無い
水源は公園の一角にある上向いた蛇口
一分間ほどスピード全開で浴び続けた


496 :Sky Fruits (9/10) :04/07/10 23:36 ID:bLfsl8kg

止水して辺りを見渡すと
さっき自分のいた場所――木陰で
犬が伏せして 隣に女の子がいた
彼女は僕と目が会うと軽く会釈をし
犬を連れ立って公園の出口へ歩いていった

●

相変わらず今日は暑くて困る
スカイフルーツを握りつぶせば
水分補給は常時可能だった
しかし僕はそうしなかった
できなかったんじゃない
しなかったんだ

僕はこの空想の果実を手にしたまま生きる

つぶそうと思えば つぶせるものを
一生一度もつぶさずに育ててみたい
一時の欲求で手放したくは無い


腕を垂れ下げたままの姿勢で
親指を人差し指の先端を繋いだ
勢いよく青空の中へ放り投げる

一つのスカイフルーツが実る


497 :Sky Fruits (10/10) :04/07/10 23:36 ID:bLfsl8kg

思い通りの展開に満足すると
僕は蒸れたズボンのポケットへ

そっと それを仕舞いこんだ


 ふうふる


風が吹いていることを
すっかり忘れていた

どうでもいいな

ペッ

唾を吐き捨てた


僕の立ち去った数秒後 その跡で花が咲くことは無かった
数年後咲くことは あるのかもしれない
チャンプ作品に対する批評

MUJINA ◆iXws.WGCLY 
1点
大長編力作。木の枝間に見える空間を果実に見立て、これをスカイフルーツと命名した 
ところにオリジナリティーを感じる。そして自分の指でつくるスカイフルーツ。ここまでは 
よい。ただ、その果実が熱さを癒す水分、果汁を求める心性にだけ直結している、というのは 
どうか。もちろん、その後、自分が木になる展開につながるのだけれど、そこのあたりが 
やや強引な気もしないではない。やはり、もう少し短く圧縮・整理したほうがよかったのでは。 
着想がいいのだから、その切れ味を生かすには、詩は短ければ短いほどよい、というのは個人的な 
意見。 

ななほし ◆lYiSp4aok.
3点 
長くて読みにくいけど、庭にいる植物の気持ちなんてこんなもんでしょ? 

山田 ◆jipx.wAXvs
1点 
人間が木になる夢をみた、というのは誤解釈? 
発想は面白いけど、長さがやはり気になります。 
同じ事を言うなら短いほうがいい、と思いますね。 

Canopus ◆DYj1h.j3e. 
1点 
内容のわりに長すぎると思うんだけど、構成の妙があるよね。 
ちょっとしたスパイスのような表現も、いい感じ。 





 

 


 

準チャンプ作品(2作品同時受賞)
Canopus ◆DYj1h.j3e.
446 :愚者の楽園(マリーノ超特急):1/2 :04/07/05 23:33 ID:np9Cnou+

水曜日には
お気に入りのアクアバイクに跨がって
積めるだけ積みこんだジャスミンの花束を届けに
海上に浮かぶ列車整備駅まで出かけていく

海に囲まれたプラットホームで
彼は私を待ってるだろう
明日やってくる海洋特急の準備に大忙しで
流れる汗と機械油にまみれて
彼は私に手をふってほほえむだろう

明日はマリーノ超特急がやって来る
海に敷かれたレールをしずしずとやって来る
停車時間は一時間 次から次へ迫りくる仕事を
彼はひとりでこなしていくだろう

エンジンの点検と調律 車輌のサビ落とし
滑車にこびりつく塩塊の除去 客車に機器に侵入するフナムシ退治
フナムシ退治にはジャスミンガスが有効で
それは彼の独自の研究成果で
私は毎週ジャスミンガスの原料を届けにいく

かつて駅には整備士がふたりいて
私の入り込めない硬い友情で結ばれていて
ある日ジャスミンガスの効能を管理局に報告した同僚は
めでたく上級技術職に転身して
彼はひとりになった

(だってさあ
 エラくなって迎えにいくなんて不可能だよ
 えっ 誰をって?)


447 :愚者の楽園(マリーノ超特急):2/2 :04/07/05 23:34 ID:np9Cnou+

たったひとつの彼のこだわり
それは
ジャスミンガスは使用前日につくること

ジャスミンを抽出している間に
私は彼の庭をのぞきにいく
武骨な駅舎の片隅に設けられた
こじんまりとした花壇に
ひと株の野バラが取り残されたように咲いている
色褪せた小さな花と乾いた葉っぱ
吹き荒れる海風のなか枯れずに咲いてるのは奇跡だった

(ここには潮の香りしかない)

葉っぱにしがみつくアブラムシをちくちく取りながら
私は野バラに話しかける ねえ 結婚しない?
私はあなたの助手もできるし
それからプラットホームでジャスミンを育てよう
海に侵食されたこんな世界だけど
この駅だけは花の香りでいっぱいにしよう
そしていつか私の子供たちが
広いジャスミンの庭ではしゃぎまわるそんな日を夢みよう

(マリーノ超特急の旅人よ もしあなたが
 海風のなかにジャスミンの香りを感じたら)

いつの間にか 見渡すかぎりの海に月がのぼって
私は今週も帰りそびれてしまった
明日は彼の助手をしよう ジャスミンガスも出来たし
彼もまんざらでもないふうで
実のところ海洋特急はいつ到着するのかわからないし

 

 

虚構の真実

 

482 :幻想庭園 :04/07/10 22:25 ID:PycFRa8H

昨日と今日の 境界線で

うろうろして

うとうとして

月光の中で 見たものは

黄金虫でした

あの緑色に輝く翅を 震わせて

月へと向かって 飛んでゆく

黄金虫でした