第七十三回 お題:「生・生きること」
チャンプ作品
イタチ小僧 ◆8rr1u/54T2
641 名前:放浪航海日誌(1/2) 投稿日:04/08/15 01:09 ID:Y4HciTxd

ぼくの目的地は いつも部屋 
旅立つ船は どこへも行かないけれど 
確かに星々の煌くむこうへ 暗闇を消して行くようだった 
恋もした 
ページの数だけの 甘い戯れをした 
ティッシュペーパーに染み付いたぼくの子らは 
けっしてどこへも行かないけれど 甘い夢のレトルトパウチ 
ありがとうと微笑みかけると 空いた口の底に酸っぱい金色 

生きるとは 死んでいないこと 
生身でなくとも そこにいること 
おおきな月は見ないで モニターのむこうに月をめざすこと 

ぼくの目的地は いつも部屋 
街はいつでも 通りすがりの道 
誰にも声はかけられたくないけれど 
誰にも声をかけられないと淋しくて 
偶然見つけた 一人歩きの背中美人 
声かけられるまで 追って歩いた 
部屋で寝たときは べつの女だったけど 
生の胸が上下するさまを見つめるのはいつもおなじ安らぎ 
イヌみたい 
選択肢が出現する 入力画面が出現する 
あなたのなまえは? 

生きるとは 忘れられていないこと 
本名でなくとも 名前のあること 
呼んでくれるひとがいて 答えてくれる自分がいること 



642 名前:放浪航海日誌(2/2) 投稿日:04/08/15 01:10 ID:Y4HciTxd

目的地は いつも部屋 
そのうちすべてに飽きて することなくなって 
目的地にずっといることに気づいた 
星々も 恋人も 消えてしまった 
ぼくの名前も消えてしまった 
目的地にずっといることの退屈さに 
気晴らしはすべて夢だったと 
気づけば開く 船への憧れ 
ほんとうの世界への ほんとうの船! 

生きるとは 絶望をしること 
そこから新たに 船を漕ぎ出すこと 
せむしの男に そっと後ろから打明けられること 

でもその船はどこへ行っても部屋ですよ と 

ぼくの目的地は いつも部屋 
結婚しても 子供が出来ても 
彼女らを 彼女らの望むところへ 
おもちゃの港へ 海のレールで導きながら 
ぼくの目的地は いつも部屋 

 

チャンプ作品に対する批評

園川 ◆nWfXpQxHHM
2点
詩人の世界認識が詩的言語で上手く纏められていた 

Canopus ◆DYj1h.j3e.
2点
やっぱり上手さではこれがピカイチだと思う。 
特に前半の茫洋とした世界は上手く書けている。「生きるとは」の繰り返し 
もグッドだけど、当たり前とはぐらかしをもっと徹底させてもよさそう。 

MUJINA ◆iXws.WGCLY 
2点
生きること、という大仰なテーマに対し、大袈裟な解答を持ってこず、軽く雑感ふう 
に綴っているところの味わいがある。「目的地はいつも部屋」ですか。個人的には 
これに反発がある。私は常に「船への憧れ」を抱き、「漕ぎ出」したい、と思っている 
から。けれど、これは極めて冷静で的を射たオトナの指摘であるからこその反発なのかも 
しれない。結局、狭い閉鎖空間の人間関係に閉じていくことしかできないのですね。 

 

 

 


 

準チャンプ作品(2作品同時受賞)
(名無し)
640 名前:いきてますせんせい 投稿日:04/08/14 12:24 ID:V0PEzDkH
はなくそほじりながらみらいえいごうこうやっててれびをみながらせんべえをくって 
はらをかかえてわらってそんでもってどこかのくにでだれだれがしんだとかどうでも 
よくてちかくのばばあがごうとうにころされたとかもしょうじきどうでもよくてくちをぽかんと 
あけたままけつをかきながらひとことおれはいきてるとかいっとけばきっといきてるんだろうな 
とかおもいながらときどきおんなをだいてさんだんろんほうをふりかざしててあたりしだいばか 
をろんぱしてにやにやわらっておれさまてんさいとかいいながらまちをかっぽしてきがくるった 
とかいわれながらいづれか夜のベンチの下でひっそりと眠るのです 

 

 

豆腐 ◆POM/5/.7A.

 

647 名前:ペコンペコン 投稿日:04/08/16 01:14 ID:8ouEbO0C
飲み干したビールの空き缶で作られた道を行く 
一歩踏み出す度に空き缶は甲高く鳴き 
ペコンペコンと俺は歩く 

時折銀色に鈍く連なっていた道が途切れていることもある 
乱雑にも的確に途切れた道の先は 
砂利が波打ち 
疎らに揺れる雑草の緑が宵に見る提灯の灯りのように 
寂静に俺を惑わすのだ 

くそったれ 
道の突端に胡坐をかいて俺はビールを飲む 
枯れたビールの空き缶を放り出すと 
それはコロコロと転がり道の先端に連なり 
俺に諾う証のように最後に一滴垂らすのである 

おそらく俺は酔っている 

後背に累々とした空き缶の骸ひとつひとつに 
時には涙を落とし撫でてやりたいと思い 
また時には小便をひっかけてやりたいとさえ思うのだ 

酔っている 

嚥下するビールの苦さに倦んだとしても 
空き缶が成す行程に冷灰を見たとしても 
ペコンペコンと人事のように鳴らし続ける 

俺は酔っているのだ