第七十九回 お題なし
418 名前:壊死 (1) 投稿日:04/10/17 17:52:37 ID:m7pocA+l
初冬
オリオン横寝の真夜中
赤く光る星目指して自転車をこぐ
星は無数にある 心躍らせながら
コンビニ
熱冷ましには アイスクリームを
寄り道は何よりも楽しく
店員の男荒れた指ささくれ
舌で削り取りたい たやすく発熱
フィスト
欲情押さえ握るはハンドル
ぶいーんぶいーんぶいぶいーん
飛ばすごとに落ちていく
私の身体は部品だらけ
欠けた所修理しないまま 自転車置き場へ
419 名前:壊死 (2) 投稿日:04/10/17 17:55:43 ID:m7pocA+l
蛞蝓
壁よじるお前 隅っこに落ち着くのかい
ペパーミントのガム噛んで
セッタの煙プカリわっか ぷううとお前にいたずら
がくりと頭を後ろに垂れ
半分に折りたたまって 私とお前の目が合った
家
蛞蝓が這うように辿り着く
ただいま 私 蝸牛になったのよ
剥いたら山吹色の管ぐるぐるでね
ぐるぐるくねくねの気持ち隠して
ツノは隠さないぞってなデンデンムシで ね
身体
男の荒れた指ささくれ
触れた私の指 やがて来る狼狽の感電
出来るだけ長い時間 痺れてると良いな
少し痛いけど大丈夫 心配しないで良いよ
ぞわーと鳥肌立ち じゅくんと濡れた
溶けていく身体 忘却のアイスクリーム
―――何を心配しないで良いんだっけ
420 名前:壊死 (3) 投稿日:04/10/17 17:57:37 ID:m7pocA+l
夢
眠りたくない
眠りは死
明日が安産を祝福しても
産まれるのは昨日までの私
夢見る度 腐っていく両の手足
べランダの隙間 白い幽霊覗いて
こっちにおいでと誘う正夢 始まる
そっちはどうですか
たいして変わりはしないんでしょう?
私の寝言に相槌打つのは離脱した私
幽霊と手を繋ぎ 誘導された空はパノラマ
見上げると星は無数で心だけが踊っていました
(終)
チャンフ゜作品に対する批評
ななほし ◆lYiSp4aok.
2点
当たり前の日常を詩にすると、困惑してしまう。危険嫌悪オージーザズ、
ない、目標も援助の言葉も、詩を忘れよう。……何を心配しなくていいんだっけ?
……という詩のか? よくできてる。読まなくても入ってくるようなレベルを
目指してほスィ
Canopus ◆DYj1h.j3e.
1点
痛みを感じない壊死だね。淡々とした日常だからこそ、ゆっくりと
腐っていくのかな。ぼくだったら、そんなとこをより前面に押し出していく。
何にしてもこの詩では、ナメクジはただのゲストにしか感じない。
MUJINA ◆iXws.WGCLY
2点
オムニバス形式というんだろうか。短い情景描写のフラッシュが小気味よい。
「男荒れた指ささくれ」など、細部をうまく拾っている。音感もよい。(2)の濡れ場
がややステロタイプなのを差し引くとしても、全体的な構成よし。体言止め、脚韻((3)のイ音、死―私―手足)
のリズム感など、随所に光るものがある。作者はかなり書き慣れてますね。
構造 ◆/Cej999/v6
2点
女性の心つーのはよくわかりませんが
エロスがあるからねえ
園川 ◆nWfXpQxHHM
3点
韻律を意識した措辞が主題→展開、主題→展開・・・という構成を取る。
行為を時間軸に沿って展開する筋に描写される風景を、主題=名詞が転々とズームアップさせながら転がって行く。
描写から零れる主観のリズムと両者のバランス。さらに進んで蛞蝓を見ることにより蛞蝓になってしまう私、主客の融化もある。
構成、韻律、描写と主観の戯れ、それらの要素に律され諧和した言葉の列が一個の音楽を作っている。
主客の融化とは例えばこの作品では「蛞蝓のような私」という比喩の事だがそれを一点使いでなく全体に散らせば尚良かった。
この作品では比喩という要素だけが律されてなく、それが物足りなさの理由だと見た。
今更ですが最近詩とは拡大された音楽のことだと思うようになった。正確には音楽を派生させたもの?
ame ◆yUHAxrOw2c
449 名前:風邪薬の効用,もしくは勝手な記号論(1/3) 投稿日:04/10/21 22:33:48 ID:WsIEkhHp
──あなたが 風邪薬を飲みすぎた
夕べから付き添っている犬/が部屋の中で 床
居ない主人の影を踏み走り/回る 空間
ベッドの下で眠る引き出し/の向こうから声を 空間
テレビの多重音声のように/複成させて 空間
床
カーテンは閉めたまま/窓の外から途切れて 彼女
テーブルの上に猫の形/の影が見える 空間
彼女が挟まれた空間は/コンクリートの壁と 空間
断熱材という嘘の塊に/並べられた 天井
階段は逆らせん状に/ベクトルを向けた 床
その段差を不定期に/更新させて 空間
上ってはドアの向う/で平地を生み出して 空間
何人もの空想がそこ/で酒盛りを始めて 空間
床
酒瓶が垂直に立て/られたその図形を 酒瓶
浮き上がった風が/つかむことなく 空間
少し冷めていた酒/の臭気を引き連れて 空間
視線とともに雲を/突き上げていく中で 空間
その 彼ら皆が想定しようとした視点 月
450 名前:風邪薬の効用,もしくは勝手な記号論(2/3) 投稿日:04/10/21 22:34:26 ID:WsIEkhHp
ビルの上で/空に
向かって/酒だ
酒を空/に
掲げ/
て/
一斉に飛び上がって
……空が反転した
一斉にぶら下がることができる
雲\
のな\い
空の下\で高い
ビルの最\上階から
駆け下りて\叫ぶ彼ら
いま 視点の足元にある下弦が5つ 月
451 名前:風邪薬の効用,もしくは勝手な記号論(3/3) 投稿日:04/10/21 22:35:02 ID:WsIEkhHp
ビルの羅列の間を\駆け抜けてゆく声と 空間
雪を呼ばない軽い\風さえ隙間をうならせ 空間
それでも踊り場は\それらを遮っては 空間
子供達の駆け下り\る反響と振動を寄せ 空間
階段
昔から気にしないでいた\だけの窓の下で 空間
蹴られた石がドアに跳ね\返されて 空間
猫はのっそりと夏から這\い出て背伸びをして 子供
部屋の中を見回して四隅\を埋めに行く 床
カーテンは開けられたまま\外が見える 天井
向かいの窓に映る光が犬の\影のように 空間
何も遮らない色のない高さ\の床の外には 空間
足の置き場も見当たらない\ほどの人の頭 空間
床
部屋の中で電灯の切れた空間\から 空間
テレビの映像だけが明るさを\くれて 空間
広げたままの布団の中でいま\寝返りを打ちながら 布団
眠れないでいるのはいつもの\こと 床
──ぼくは 風邪を引いていない
チャンフ゜作品に対する批評
Canopus ◆DYj1h.j3e.
3点
いちばん効果的だったのが、風邪薬という軽いテーマでした。鏡の間のような、
微妙な対称性、非対称性で揺らぐ詩世界とマッチして、成功しています。
右に並ぶことばの座標は必要だったかどうかは正直疑問。しかし、座標として
の月はきっと必要だったんだろう。
しいな まほろ ◆tYbIWmaS5o
1点
MUJINA ◆iXws.WGCLY
1点
毎度ながら、緻密な詩を書いてくる。ビジョンをいったん解体したあと、詩的な言語で
再構成する手腕は職人芸の域に達している。ウェットな抒情を排する理知的な言葉の質感は
正直、私の好むところではないけれど、やはり好き嫌い言っていられない技量の凄さがある。
今日は思いっきり遊んでいるところが、楽しくまた微笑ましい。でも、やっぱ、作者が何を
イイタイかわかんね。浪花節のわたしから見たら、この作者は武満徹あたりの現代の純粋音楽、
といったところ。
構造 ◆/Cej999/v6
2点
イメージ的な飛躍でいったらやはりコレですね。
フィルムワーク的な構図処理がかっこよすぎ
園川 ◆nWfXpQxHHM
3点
「'''スリープモード...」では余白の配列が眠りの情緒の形象化だった。
「星屑」でも意味の破壊や記号のもたらした読み手からの逃走、実在化を書き手の情緒だと言ってもいい。
この作品では風邪薬により眩暈を起こした意識が記述の形態と意味の破壊により表現されている。
3作とも詩行を追う意識へ直接伝達される前内容がそれぞれ内容を表現している。
この作品を具体的に見ると記号の使用と改行が視覚的効果、そして音韻と目線の動きのリズムを律する。
これは「'''スリープモード...」と同じだが前述の様にその情緒は風邪薬の眩暈である。
眩暈の上を駆け抜けてゆく記号が詩行の真ん中で鏡像をつくり意識の運動にそれまで描いた軌跡を逆走させる。
逆走の生む二重の軌跡が対称的レイアウトがによって生み出される。それが内容と照応する。
眩暈のうちに円運動をした二人称は終着点では螺旋を一段上がって一人称に変身している。
鏡を隔てたあなたとぼくだ。
文脈が破壊され、意味の世界からはじき出された読み手の意識は意識に直接する文字と音韻の世界に注意を向ける。
内容の破壊と形式の効果が結びつくことにより、「'''スリープモード...」と「星屑」をもう一段超えている。
薬を飲みすぎた読み手が部屋の外からビルの外、そしてビルの内から部屋のうちへと一周してくると
詩の中で薬を飲みすぎたぼくを見守るあなたが薬を飲みすぎた僕になっていた。
錯乱した意識の上に実在感を増して輝く言葉たち。客観的に読み取れるのはそこまでだし、それだけで十分面白い作品だ。