第八十一回 お題:「1」
チャンプ作品(2作品同時受賞)
◆WN8IybcvEA
14 名前: 投稿日:04/11/08 00:03:57 ID:a55K0+Ps

溶解という赦しをどうか私に出来ることなら何処までも透き 
通った闇にそうあの一人として戻らなかった瞳に映らない世 
界で強く硬く握りしめていた季節外れの桜の花弁甘酸っぱい 
残り香と人形に囲まれて立ち尽くすのが嫌で無言のまま吹き 
上げる風にわざと散らされぺりぺり音を立てながら柱の影が 
落ち行くほどに爪を研ぎながら考えたことは白磁の肌炎の痕  
そうこれらの断片的イメージは1つの詩に収束すること無し 
にただ眩しい七色の粒子が天から落ちてくるのを待つだけの 


            1 


 

チャンプ作品に対する批評

Canopus ◆DYj1h.j3e.
3点
これはスタイルとしては一発芸に近いんだけど、見事にカッコよかったね。基 
本的にはイメージを反復することばの列で、どうとでも読めるんだけど、ぼく 
は拡散する心と、かなしく収束し沈澱する体(『1』)との対比として読んだ。 
その1の遣いかたも、この詩のスタイルにハマっていて、ふさわしかったね。 

MUJINA ◆iXws.WGCLY 
1点
 やってくれるじゃないの。未完成交響曲というのはあるけれど、完結しない詩、というのは 
初めて読んだ。一言言いたいスレふうに書くと 

<肯定>「溶解」「透き通った闇」「爪を研ぎ」「白磁の肌」「炎の痕」など、それらしい 
 言葉のイメージで優艶な世界を演出している。 

<批判> 
「甘酸っぱい残り香」「眩しい七色の粒子」は、やや既成の感がある。統一的な全体の構図が 
見えてこない。ただ妖艶な言葉を並べただけ、という感もしなくはない。また、「一」とう 
お題に対するアプローチは、切り方に工夫は見られるが、一発芸のようにも感じられる。 
厳しい評ですいません。 

GON ◆rOo2fYBBKk
1点

 

リーフレイン ◆LeafL/oiO.
24 名前:いつか 1/2 投稿日:04/11/10 10:37:44 ID:qW1YGeCG

白く濁った湯につかり、ゆっくりと温まった後、 
湯を止め、浴槽を覗き込む。 
4匹の鼠の死骸が底に転がっていた。 
こみ上げる嘔吐をこらえきれず、湯船に吐いた。 

酸っぱい匂いが充満する浴室 
白くふくれあがった鼠の死骸、吐しゃ物 
裸体のまま立ちつくす自分自身が 
そのまま窮屈な箱へ仕舞いこまれていった。 

収束する心象風景。 
ガンジス川には死体が流れ、糞尿も流れ、沐浴する人が水に浸かる。 
海は全ての死骸を懐に抱く。 
万象の響きは濁り、判別しえない音の塊となって、心を押しつぶす。 

4匹の鼠の死骸を食べるハイエナをわが身に飼う。 
あの湯に浸かり、かみ締めるハイエナを愛しく撫でる。 
あのハイエナは私だ。 
あの鼠が私であったように 
嘔吐する私も私であったように。 

一なる日に、果たして心を壊さずに迎えることができるのだろうか? 



25 名前:いつか 2/2 投稿日:04/11/10 10:40:10 ID:qW1YGeCG

ねえ、あなた。 
どうして私達は一緒にいるんでしょうか? 
あなたは、私を見ていないです。 
私もあなたを見てないですよねえ。 
だって、この鼠の死骸は、あなたのあずかり知らぬものですから。 
きっとあなたにも、何かの死骸があると思うんですよ。 
見えないんですけどね。 

そんなところまで、見せ合うのは失礼ってもんですかねえ。 
そうかもしれないです。 
でも、いつかきっと、そういうものも、 
拾い上げないといけない気がしてならないんですよ。 
拾っちゃいけないですか? 

風が耳元でささやいていくんです。 
”あれ、どうした?”って 
あの風は、きっと人らしき鬼なんだと思うんです。 

ねえ、あなた。 
一緒に人である鬼になってみましょうよ。 


南部風鈴の音が聞こえます。 
もう、仕舞わないといけません。 
”ちりん ちりん”っていうあの澄んだ音は、 
南部鉄の鍛えぬいた密度の濃さが作り出すんです。 
ああいう音は、綺麗ですねえ。混じり物がなくって。 

在り難いから、綺麗なんですね、きっと。 


 

チャンプ作品に対する批評

MUJINA ◆iXws.WGCLY 
2点
 死肉を喰らうハイエナや鬼を我が身に飼っているという指摘は、やはりドキリとする。 
一なる自我の分裂は確かに統合失調や人格崩壊の危機をもたらす。しかも、食うもの、 
食われるもの、という深刻な対立を孕んだ分裂。この分裂はガンジス川へと収束する 
というのは、やや予定調和のきらいもあるが一応、首肯できる。生と死、汚濁と潔斎は 
聖の中に抱合される――この世界観はいいね。 
 惜しむらくは、やや冗長さが残る。2/2の前半はもっと割愛できる。常体(である調)と 
敬体(ですます調)の混用はふつうは禁じ手だが、これはあえて計算してのものだろう。2/2の 
敬体は「笑ウせえるすまん」の喪黒福造の慇懃無礼な不気味な話し方を彷彿させる。 
南部風鈴も気が利いているが、やはり、2/1と2/2のバランスが悪いのは否めない。 


GON ◆rOo2fYBBKk
3点

 

 

 

 


 

準チャンプ作品
MUJINA ◆iXws.WGCLY 
20 名前:正しい日本語講座 第一回/人称代名詞の使い方 投稿日:04/11/09 00:02:57 ID:ww60ciRw

                              ―――世界カラ「私」ヲ放逐スル 

世界で、私、と呼ぶことができるのは、ただひとり 
それは、いま、ここ、にいる、私、だけなのに 
どうして、あなたたちは 
自分のことを、「私」、って言うの? 
                              ―――恐ルベキ僭称 

これからは 
あなたが、自分のことを、「私」、と言うのを、私は許さない 
もう誰も、「私」、という言葉を使っては、だめ 
誓いなさい 
                              ―――剽窃ハ万死ニ値ス 

あなたは 
あなた、以外の何者でもない、のだから 
あなたは、自分のことを、「私」、と呼ばずに 
あなた、と言いなさい 
                            ―――私ハ天動説ノ信者 


22 名前:正しい日本語講座 第一回/人称代名詞の使い方 (続き) 投稿日:04/11/09 00:28:47 ID:ww60ciRw

それから、私に声をかけるときには 
私のことを、「あなた」、って呼ばずに 
私、って呼びなさい 
いい、わかった? 
                              ―――対象化サレルコトノ不快感 

電車の中や雑踏で 
「あなた」、って呼ばれて、返事しそうになる 
振り向くと、私、じゃなくって、隣の人、って気づくこと、あるじゃない 
そんなとき、ちょっと、憮然、よね 
                              ―――人称代名詞ハ複雑怪奇 

でも、もう、これからは迷わない 
「あなた」、って呼ばれても 
「あなた」、は、私、じゃないから、振り向かない 
ああ、なんて、世界はすっきりして、わかりやすいんだろう 
                              ―――朕ノ文法、コレガ正シイ日本語文法