第百八回 お題:「チップ」
チャンプ作品
Canopus ◆DYj1h.j3e.
404 名前:地球かゆい 1 投稿日:2005/11/01(火) 23:30:00 ID:uoTaZ1T6
頭かゆいんですよう 鹿野センセと差し向い
鹿野センセは禿げてて中年で少しだけセクシーなきらきら瞳の脳外科医で
頭かゆいのにどうして脳外科なのかというと
そんなら鹿野センセがいいわようピコピコ という
君の熱烈な推薦をいただいたからなのだが
「なに 頭かゆい ならば手術しなければ ぜひしましょう」
ちょっと待ってくれ どーして頭かゆくて手術やねん と反論するヒマもなく
鹿野センセがおもむろに取り出したトンカチで
ピンピキ パカーン! 俺は気を失った
「手術は大成功でぇす」
ちょっ ちょいと なんで勝手に手術しとるねん
「『かゆくないチップ』埋めときましたよー」
丸刈りにされた俺の頭頂部には 親指大くらいの硬い突起が新たにできていて
センセ チップてもう少し薄いんと違いますかー 出っぱってますよ これ
「あぶなかったです 手遅れになるとこでした」
いや 頭かゆくてどーして手遅れに あーあ 変なモン埋め込みやがって
「頭は1週間は洗わないでねー その後はチップ専用のコレでシャンプーしてねー
お願ーいしまーすびょーんん」
オッさん!!これ!!「おクルマ用洗剤」て書いてあるやないか!!!
「まあいどううぅぅぅ あぁぁりぃ」
鹿野センセはセクシーに瞳をきらきらさせて
(オッさん 眼が死んでないのはいいことやで)
クラゲのようにゆらゆら揺れてるこっぱげ野郎で
なんか赤塚不二夫と話をしてるような気分になって
かなしくなって 会計をすませて帰った
405 名前:地球かゆい 2 投稿日:2005/11/01(火) 23:31:19 ID:uoTaZ1T6
というわけで俺は頭のかゆみを克服したのだったが
チップは体に対する異物なわけであるから当然なんらかの副作用がある
俺の場合は まず
頭頂部をかるく押すと
ぴよぉーーん と笛のような音が鳴るようになった
君はそれを ひとりテルミン と名付けて歓んだ
朝 目がさめると 君が俺の頭をおもちゃにして
伴奏つきで「あめふり りんちゃん」なんか唄ってる
それはそれでかわいいんだが 頭は叩かれると痛いのでやっぱりやめてくれ
次には 俺は「マツケンサンバ2」が完璧に踊れるようになった
軽やかなサンバのステップは俺の両脚に完全になじんだ
俺は歌が下手クソなので ダンスの披露の場がないのが残念ではあるが
バイト先で パートのおばはんたちにさりげなく自慢したところ
なんと集計の結果
おばはんの85%が「マツケンサンバ2」を完璧にこなせることが判明した
しかも『かゆくないチップ』なし でだ なんでだ
俺は驚愕の事実を びっくりした時にメモする「びっくりしたメモ帳」に
克明に記録した
それから いや おかしなヤツだなんて思わんでくれ 実は な
犬とか猫とかと話ができるようになった
それは君が夢みてたような面白いことではなかったよ 残念だが
たとえば うちの猫 イノセントミルハウザー14世が
「めし」「ねる」「かゆい」しか言わないハードボイルド野郎とは知らなかったし
あと あん時は最悪だったな 君の友だちが連れてきたシーズー
発情期のメス犬が あんなこと言うとは夢にも思わんかった
406 名前:地球かゆい 3(ラスト) 投稿日:2005/11/01(火) 23:32:59 ID:uoTaZ1T6
木とも 話をした
悠久の時のながれ っていうのかな
返事がかえってくるのに四時間二十分を要した
地球の声がきこえるようになったのはそれから間もなくだった
「かゆい」 ん? 「あーかゆい」
「そこやない あーもそっと上 かいてくれえ」
地球むちゃくちゃ痒がっとるやん
そうだな お前の上で なんや判らんものが何千億もうようよ動いとるし
お前のあちこちで 掘ったり突き刺したり爆発させたり しんどいわな
いくら痒くても腕がないので掻くこともままならない地球の身の上を
俺は心の底から痛切に感じた
そして知らず知らずのうちに
携帯のメモリー 鹿野センセのホットラインを ポチッと押したんだ
「なにぃ チタマかゆいぃぃ! しゅじゅちゅ しゅじゅちゅうぅぅぅぅ」
(フェイドアウト というより 驚いた俺が携帯を落っことしたのだが)
あれから 鹿野センセとこは 休診の札がさがったままで
どうやらチタマ用の『かゆくないチップ』を不眠不休で鋭意開発中らしい
あんなこわれたオッさんに地球の命運が託されるのかと思うと
うすら寒いものを感じるのだが
今までよりもマシになるような気もするから不思議なもんだ
もうすぐだ 地球 かゆくない
かゆくないから
安らかに眠れ
チャンプ作品に対する批評
Y.TAKEO ◆GL19takeoY
3点
えーわたくし普段ならこういう審査員は参加しないのです。
なぜ自分の作品を出していないのにも参加したのは、この作品があったから(仕事の休み)といっても過言じゃありません。
1番バカバカしいと思います。詩的なのかは分かりませんがバカバカしい見せ方が一つ一つ考えられてます。
細かいネタづくり、『ピンピキ パカーン!』という効果音の陳腐さ、頭の痒みを抑えるためのチップというのがSF詩的です。
うちの猫の表現が良いためシーズーの部分がカットされているのが残念。
作品をピンク色したくないのなら『あんまりここで書くと18禁になるから残念だ』とか断り文句を書いてほしかった。
作品のしめ方が綺麗なので深読みすると『ぼくたちが地球にできること』など環境テーマを感じさせられる。
長いものだが最後まで一気に読ます力がある良い作品でした。うん、ごちそうさま ありがとうございます。
◆L4LyBSss3w
1点
葉土 ◆Rain/1Ex.w
2点
いやあ、2段構えになってるんだよね、このストーリー、、、凄い凝ってる。。笑いました。おなか痛いです。。
前半のテリブルな医者もおもろいし、とんでも医者のとんでも手術を
「かなしくなって、会計をすませて帰った」とあっさり受け入れちまった彼もいい味してる。
小道具のマツケンサンバとかテルミンとか犬猫の話とかもいい。
で、この呆れるほど面白い前半が実は伏線で最後に地球のかゆみにいっちゃうんだけど、
微妙に楽観的な未来像で、読んだ後なんとなくほっと暖まるような気がしました。
力作です、、、