夜の蜃気楼 第1回


嘘と虚栄が蔓延る夜の街。

この街ではいくつもの恋、愛、そして裏切りが繰り返される。

男は女を口説く為、女は男を虜にする為、
男と女の様々な戦いが毎夜、繰り広げられている。
そんな戦場に何も知らない人が行けば
忽ち戦いの犠牲者になってしまうであろう。

女の子に何処に行ってもモテる人はまあいいだろう。
(これは議論する余地なし!勝手にやっとくれ!)
でも、普段女の子にモテない人が行くと、
普段の女の子からは決して言われることのない良いことを言われたり、
されたりで、いい気分になり、つい財布の紐が緩み、そして本気になる。
気づいたら、ウン百万使ってしまい、
いつのまにかその女は消えていたなんてこともあるのだろう。

・・・

僕(吉沢直太)は、今夜もそんな夜の街に来ていた。
呼びこみのお兄さんに声を掛けられる。
「キャバクラはどうですか!かわいい子一杯いるよ!」
「あっ、結構です。そういう目的じゃないんで・・・」
「じゃあ、また宜しくお願いします。」

歩きがなら、いつもの如くこう思う。
「また、っつーのはないっつーの。」

別に行く予定の所はなかった。
「なんとなくだな。なんとなく。
 でも、なんか懐かしいなー!
 ちょっとあの頃の思い出に浸ってみようかな・・・」

・・・

当時、僕はキャバクラ歴、約半年。その年の初めから、取引先が変わり、
仕事上の付き合いでよくキャバクラへ行くようになった。
最初は新宿、六本木、そして、最終的に僕の家の近くである
中野へ流れていった。
当初は自分でお金を払うこともなかった為、指名なし、延長なし、
すべて一緒に行った人達に付き添うのみであった。
ちょっと行って、パーっと会話を楽しむ程度であった。
僕も当時はそんな所ではそういう恋とか愛の期待はしていなかった為、
それはそれで良かったのかもしれない。
いい社会勉強にもなったし。

おーぅっと、ここで「キャバクラ」について軽く説明しないとね・・・

「キャバクラ・・・時間制で料金が決まる女の子が一人一人付く飲み屋」
っとでも言っておけばいいのだろうか。

名前の語源は「キャバレー」と「クラブ」が合体したものらしいが
辞書でも調べてくれ。

地方では呼び名が違うであろうが、東京のキャバクラは
ただ、女の子が隣に付いて飲んで話すだけだ。
もちろん、お触りも何もない。
ただ、会話しながら飲むだけの店なのである。
えっ!?
「それで高額な金額がかかるのは酷い所」だって?
まあまあ、この物語を最後まで読みなさい!

キャバクラっという所は、
こちらから「指名」等のアクションを起こさなければ、
20分程度でどんどん隣に座る女の子が変わっていく。
これを業界用語で「チェンジ」という。
気に入った女の子が居て、ずーっと話していたい時は
「場内指名」という形で指名することができる。
ずーっつ話してたい時は「指名するよ。」なんて言えばOK。
最初から女の子を指名する場合は「本指名」をする。
店に入るなり「〜さん、指名です!」なんて言えばOKだ。
しかし、人気のある子だと、途中で他の客の指名も入るので、
暫く一緒居てから違う客の所へ行ってしまうのだが、
その間、違う女の子がその時間を埋める。
「また、○○子ちゃんが来るからね!」ってな具合で・・・
その子のことを「ヘルプ」っというらしい。
この客からの「指名」の数は店の女の子達にとっては実力のバロメータであり、
これで、彼女達のだいたいの給料も決まってしまうみたいだ。

キャバクラって言ったら、そんな高い料金を取るのだから、
「余程、美人で愛嬌があり、話上手な女の子ばかりなのであろう!」
っと考えるであろう。お客にとってもそれは嬉しいことに違いない!

でも、それは一部新宿や六本木の高級店を除いて違う!
大体、そんな美人で愛嬌のある子ばかり揃える事自体、難しいし、
経費もかさむ為、経営的にも非効率的だ。
だから、一握りの指名が一杯取れる子達とその「ヘルプ」をする子達を
お店が回転するくらいの割合(だいたい2:8くらいだろうか?)で
混ぜ、営業するのである。
だから、誰もが憧れる「かわいい子」ばかりではなく、
「どこにでも居そうな子」も沢山居る。
とはいえ、あまりにも酷いと客が怒るので、そこそこは選考してるらしい。
もちろん、指名等が全然取れない時などはクビになることもあるみたいだ。
だから、嘘、涙、色恋、枕、女の武器になるものは何でも使って
営業してしまう子もいる程だ。
(しかし、「枕」なんつーのは稀だとは思うが。
・・・期待すんなよ!これを読んでいる良い子の君には関係ないからな!)

ここもまた実力の世界なのである。

店はだいたい夜8時くらいから開店し、夜は2時くらい、
やってる店では5時くらいまで営業している。
料金は時間帯によってまた異なる。
僕が行ってた店は場所にもよるが、例を出すと
8時から9時までが4000円、9時から10時までが5000円、
10時からラストまでが6000円が一時間のセット料金である。
これに税金や、好みの女の子がいる場合はその女の子の指名料
(これは2000円くらい)更に、女の子が何か飲み物を頼んだ時
(一杯1000円くらいだろうか・・・)もお金がかかる。
更に一時間が過ぎ、延長などをすれば、延長料もかかる。
ま、時と場合によるけど結構お金がかかるものだ。
だから、安い時間帯に女の子を指名もせず、軽〜く飲んで、
一時間で帰るくらいなら、大した値段にはならない。
(5000円とか・・・)
しかし、今思うに、それでも雰囲気は楽しめそうだが、
キャバクラの本当の楽しさを知りたければ、少しハマってみるのも
悪くはないと思う。(くれぐれもハマり過ぎないようにね!)

そして、僕が行ったその店は中野にあった。

(次回「これが出逢い」に続く)



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