『煙草を吸う女』

 ガサッ、トントン・・・シュボッ。
「ふぅ・・・。」
 窓の外に目をやると、気怠い午後。
 ベッドには、今朝までいた男と自分の絡みあった匂いがかすかに感じられる。
 ランジェリーをTシャツとスウェットに着替えて、部屋の鍵を探す。たかだか10平方メートルの空間の中を探し歩くのに、缶ビールの空き缶や、ウィスキーのボトル、脱ぎ捨てたシャツ、絹の靴下、いろんなものが足にまとわりつき、離れていく。
 やっとみつけたキーホルダーを手に取り、ポケットに煙草と千円札を押し込み、素足に運動靴を履いて、ドアを開ける。
「あ・・・。」
 午後の光が瞳を焼く。

 角の弁当屋で弁当と水を買い、誰もいないビーチに出て、海を眺めながら、午後になってしまったブランチを食す。
 景色の中には、防波堤と、そのむこうに小さく見える漁船の往来がある。
ボオー
 汽笛が耳に入り、頭の中で反芻する。

 食事を終えて、一服すると、コンクリートの階段から砂浜へと降りる。
 子供が大きな犬とはしゃいでいる。
 少し歩くと、靴の中に砂が入る。


 まだ肌寒い四月の初旬、彼女は、海水を手のひらですくいあげた。

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