『愛おしい人』

 満天の星空の下、寝袋にくるまって、あの人のことを考えた。
 浮かんでくる、よそゆきの顔、微笑み、笑顔、泣き顔、ちょっと困ったような顔…。
私は彼のちょっと困ったような顔が好きだ。

 初デートの遊園地。
 ジェットコースターから降りて喉が渇いた。
 彼が飲み物を買いにベンダーまで歩いていく後ろ姿を観ながら、乗り物の支柱の影に隠れた。数分もすると、日曜日の雑踏の中で、あたりをきょろきょろと見回す彼がいた。
 彼の額に汗がにじみはじめた頃、ゆっくりと背後に近づく。
「わ!」
 彼の大きな背中に両手をあてる。
「わぁ!」
 驚いて振り返る彼。私をみて、ちょっと困ったような顔をした。

 吸い込まれそうな真夏の夜の下。
 そっと瞼を閉じて、やっぱり私は彼を愛おしく想う。

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