『高校三年生の夏』
普段は様々な制服が集まるのに、今日からはTシャツとジーンズが集まる。ちらほら、おしゃれなワンピースに化粧をしている女の子もいる。
閉めきった窓の外から、かすかに蝉の鳴き声がきこえる。
きれいに拭かれた黒板。効きすぎたエアコンに、持ってきたカーディガンを肩から羽織る。
色とりどりのチョークが踊り出し、青緑色の板の上を綺麗な軌跡を残しながら滑っていく。真っ白なチョークが天井にぶつかってはじけ、白い光が広がっていく。
まばゆい光に目が慣れて、じっと宙をみつめると、見慣れたはずの両親の新鮮な笑顔。
突然身体のなかから何かがこみあげて、声をあげて泣くと、いつもよりずっと若い母が優しく抱き上げてくれる。同じくいつもよりずっと若い父が、寄り添って、音の鳴るおもちゃを手にしている。
肩に優しい違和感を感じる。「こら、眠っちゃ駄目だぞ。」憧れの先生の低い声が耳に入る。顔をあげて、ずれた眼鏡をなおすと、黒板には白い字で書かれた数式が並んでいた。