第一幕

「起立、礼」
新学期が始まって一ヶ月、春うららかな五月の朝である。今日も室長の元気のいい号令が教室に響き渡った。しかしその教室に生徒は定員の三分の二もいない。これでは参議院の法案可決もできやしない。先生はいつものように出席を採りながらため息をついていた。
「はあ、どうしてみんなこんかねえ」
それは半ば、といわず完璧に諦めてしまった口調であった。近頃先生の顔色が目に見えて悪くなってきた。もうそろそろ自殺を考えているのではないかという声まで聞こえてきていた。
 このように云うとまるで二の七がどうしようもない不良ばかり集まったくずクラスのように思えてしまうかもしれない。確かに考査の平均点は抜群である。がしかし、二十段階という人間離れした奴らも五、六人いるという訳の分からないクラスなのである。二の七には成積優秀者が少数おり、平均並の者がおらず、底辺をうろつく、どころか闊歩している輩が大量に溜まっている。(蛇足ながら私の考えを述べさせていただくと、このクラスは「放任クラス」として作られたクラスなのである。上位者は何もせずとも自分達で勉強するし、下層部はもう落ちていくだけである。学年主任Y氏の企みだと私は勘ぐっている。)と、まあ何が云いたいかというとそんな札付きの悪党がいるわけでなく、札付きの阿呆が沢山いるだけなのである。


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