3 ディル山に向けて
|
シン……とした空気があたりを満たしている。 今朝も草原で、フィルは無限法力の別な側面を発現させようとしており、だが結局うまくいかず。やがてあきらめて草の上に寝転がる――。 無限法力は依然としてうまくいかないし、戦闘法師達――リースの安否も気になっていて、すこし落ち込んだ気分になる。 無限法力とは――想念による、この世界が内在させるエネルギイの方向づけである。 たとえば、賢者の石を結晶化させるためには、原石にわずかに含まれる成分を抽出するわけだが、人間が持っている法力程度では、抽出することはできない――途方もないエネルギイが必要だ。エネルギイを創り出すのが無限法力の役目、そして錬金の法術となるが――だからといって法力と法術の相性が合うかといえば、まず無理だ。そのため、現存する法術で無限法力を使う事は難しい。 2万年前に存在していた、ローム文明……。同時期に現れた数多の文明のなかで最強の武力を誇り、今からは、想像も出来ない種類の法術で発展し、突如消え去ったなぞの超文明。そして、無限法力の発現方法の情報は何一つ残されていない―― そして、夜の巨人は虚空に向かって叫びをあげている。ヤツらはいつからこの世界にいたんだろう……。きっと何億年も前からだろう。 現在の世界に唯一残されたローム文明の痕は、ラムダの街から見える、あの、霞むようにおおきな、ロームの樹だけだ。 リースを見つけたが、昨日の事もあり、話しかけるのに少し躊躇していると、リースがこちらに気付いて、手を振りながら近づいてきた。 「昨日、キミに貰ったこのペンダントのおかげよ」 そのとき、集合の声がかかった。 息子や娘を送り出す親、泣いてしまったり、真っ青に緊張してしまったりしている生徒、この何人が無事帰ってこられるのか、再会できるのかを考えると、フィルは少し気分が沈む。 やがて一行は、ラムダの石畳の坂を降り始めた。その純白の一団が小さくなっていく姿を、坂の上の院でみていたフィルは、説明の出来ない切なさが湧き上がってきた。 休日のラムダの街を陽がゆっくりと照らし始めた。 |