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激烈な振動が上空を占めた――
鬼の王はデュ・ムドを殴りつけるも、インフェーブの重厚な障壁によってはじかれる。
デュ・ムドの死力を尽くすかごとき、インフェーブの攻撃も、鬼の王のインフェーブが弾く。
その攻防の繰り返しが延々続く。
だが、ある瞬間からデュ・ムドには勝算が見えていた。
鬼を叩きつけるインフェーブに紛れさせ、霞むほど彼方のロームの樹に向け、衝撃波を放ったのだ……。
ロームの樹から今だ鬼の王に力が降り注いでいる。
――そう、一瞬でいい、防御をとく瞬間が必要だ……
衝撃波は少ししてロームの樹を捕らえ、――粉砕させた。
だらりと、一瞬、鬼の王から力が消えた、瞬間デュ・ムドは迷わず鋭いインフェーブの刃で鬼の王の肩から腹までを切断した……
ダランと皮一枚で垂れ下がった、鬼の王の右腕は、恐ろしい動きを、筋肉が痙攣で起こし、インフェーブの障壁が薄い場所から、デュ・ムドの左脚に拳を叩きつけた……
生身となった人間の体に鬼の王の拳が叩きつけられる――
つまり、デュ・ムドの左脚は根元から弾けたかのように筋繊維が飛び出し、その痛みでショックをこした体が絶命を選ぼうとした。
鬼の王は真っ二つになりながら、落ちていく……
エーテルを練りこみ、全身に行き渡らせ、デュ・ムドは活動を止めようとする体に歯止めをかけた。
「くそう……」
デュ・ムドにとって始めての痛みが体を今にも死へ向かわせようとするが、次の手がある……
前代未聞の強敵を倒した喜びがデュ・ムドの全身に行き渡った。
城に向かって、デュ・ムドは降りていく……
宝石に閉じ込められた人々は、全員恐怖の表情を浮かべていて、ある瞬間、時間からはずれてしまったような印象を受けさせる……。
しかし、フィルには生体エネルギィが感じられていた。
つまり宝石の中の人々はいまだに生きているということ……
この人たちは、レスザの街の人々だ。
デュ・ムドが何を考えこんな事をしたのかはしれないが、魔人のあげる熱線に街もろとも焼かれることは避けられた……
――とにかく今は助けることが懸命だとフィルは考え、人々の入った、宝石に手を置いた――。
インフェーブの波動はその宝石に広がり、物質の結合を変え、宝石だけを気化させていった。
人々は絶叫をあげつつ床に落ちてきて、不思議そうな顔をする。
記憶が、宝石に閉じ込められる瞬間で止まっているためか――
すると、リースが、この窪みへ降りてきた……
「ロージ、ラッカ、ナム、ネネ――」
たしかに法院の戦闘服をきた若者がいる……宝石は気化し、人々がきょとんとした表情で落ちる中、その四人も宝石から放たれた……。
「うおおお……、って、あれ……」
ロージとラッカが顔を見合わせる……悲鳴を共にあげていたナムとネネも一瞬、記憶が途切れたかのような表情で、あたりを見渡す、そして――
「リース――」
ナムとネネは共になってリースにしがみつく。
「ちょっと、重いよ――」
リースは嬉しそうな表情を浮かべていた。
よかった、魔人のために触媒にされなかったようね……
リースが再開を喜び、シャオタム、ハーヴがことごとく現れるインフェーブ使いを倒きった頃、フィルが宝石をすべて、気化させる事に成功した。
助け出された人々は、ロージ、ラッカ、ナム、ネネが先導して安全なところまで連れて行くという――
そして、全員が出て行ったそのとき、地下にいたフィルたちは刃物で切りつけられたような感覚を覚えた……
上空からとんでもない狂気が近づいてくるのを感じた――
「デュ・ムド――」
シャオタムが叫んだ。
「ああ、間違いねーな」
ハーヴの筋肉がいっせいにエーテルを吸収し始めた。
「鬼の王じゃあ、倒せなかったのか……」
フィルは少し足が震え始めていた。実際の戦闘には慣れていないためか――
「怖いわ……」
リースも暗い表情を浮かべる。
史上最強の存在がいま4人めがけて近づいてきた。
どーんという音と、一緒に地下胴の天蓋を突き破り、デュ・ムドは降りてきた
4人は身構える。デュ・ムドはまるで絵画の英雄、神話の神をかたどった石像のような美しさで――
だが、左脚がグシャグシャになっている、鬼の王との戦いでそうなったのか。 「よお、ハーヴ、久しぶりだな」
ハーヴは有無を言わせず、デュ・ムドに飛び掛った。
音速を遥かに凌ぐ速度で叩きつける剣は、すべてインフェーブの障壁で弾かれた……
その隙にシャオタムはプリズムをデュ・ムドに走らせるが、効果が無い。
リースはデュ・ムドだけに、本来の人間なら小石程の球体になってしまうような重力をかけたが、まるで効かない……。
デュ・ムドはその攻撃を軽くあしらいながら、声を発した。
「私の宝石をどうした……」
何の攻撃も仕掛けてこないフェイルを向いた、その瞬間――
デュ・ムドのインフェーブ障壁が消し去られた。
次の瞬間、恐ろしい攻撃がデュ・ムドを襲う……、この世界でもっとも強力な爆撃
――純粋エネルギーの放出。
だが、インフェーブの障壁が取り去られたデュ・ムドは、傷一つつかない状態で――
「鬼の王との戦いで、インフェーブの障壁は貧弱ということに気が付いてな……体中に強力なエーテルを這わしているんだよ」
決戦へ
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