5. 心ねじれて
鵜神正信はネット・サーフィンで時間をつぶす。
一年前まで工場派遣で富山にいた。派遣先の曙工業で事故に遭い左の指が小指を残して欠損した。「欠損」か。太田営業所長がその言葉を使ったのである。鵜神は太田が自分を嫌っていることを知っていたので、この事故を内心はよろこんでいるに違いないと思った。
「欠損しちゃいましたねえ。お気の毒です」「お気の毒です」という言葉に妙なアクセントを込めた。それは「アンデパンダン」という、ナチスが世界征服をしていくという人気ゲーム・ソフトの中で、ユダヤ人が殺されてゲーム・オーバーになったときに、アドルフ・ヒトラーが現われて喋るセリフだった。
♪BOOOOOOOO!アイル・イットラ!!♪
「お気の毒です」
鵜神はこの事故を「小指の思い出」事件と名付けた。恋人は「悪趣味ねえ」と言ったけれど、その事故そのものが運命の悪趣味としか思えなかった。「悪趣味ねえ」と言った恋人に鵜神は言った。
「でもさあ、これからは右手でしかお前を悦ばせられないんだぜ」チンチンと舌はべつにして。
恋人は鵜神の頬を叩き、号泣した。「そこで、Aは号泣した」そんな感じのよく出来た号泣だった。泣きやんだあとでSEXをした。というより泣きやませようと慰めているうちにSEXになだれ込んだ。「二人は『気持ちいいこと』になだれ込んだ」左手もよく協力した。アドルフ・ヒトラーも現われなかったし。
事故は鵜神の生活を変えた。かつてのように喰うための金稼ぎにあくせくしなくてもよいようになった。10年間勤めていた工場派遣会社では日本全国いろいろな場所に飛ばされた。遠洋産業と放射能関係は声がかからなかったが、金さえ高収入が見込めれば、あれもこれも差はないだろうし行ってもいいと思っていた。
遠洋漁業のマルボシ水産ではただいま大量の人員を募集中〜これが最後のチャンスかも〜
1 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 00:42 ID:MW39UK5Q
短期に大きく稼ぎたい。情報交換をを望む。
何でもいいから、色々と教えてくれ。頼む。
2 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 07:51 ID:/agw39Wp
http://www.suiko-van.or.jp/ryoshi/ryoshi_main.htm
漁師ガイド ホームページ
けっこうおもろいでー
3 名前: 名無しさん@引く延縄 投稿日: 02/01/13 09:22 ID:SAGpz+kk
インド洋、大西洋だと14ヶ月から16ヶ月。
4 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 12:11 ID:hHhleB7o
>>2
>>3
情報サンクス。なんか漫画で1年で1000万とか稼げる
ようなこと書いてたが、そんなものは無いのだろうか・・・?
5 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 14:03 ID:g8l4XNT0
マグロじゃなくて、イカや鮭鱒ならアルゼンチン・北方領土へレッツらゴー!
石巻、八戸あたりで探してみ。
あと、大日本水産会にお問い合わせを〜。
6 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 15:21 ID:YVcL8emc
もうかるぜ。たっぷりな。みんないい家持ってるよ。パナマ運河やスエズ運河を通って
世界中にいろいろ行けるしね。どうだろう、おもなところでナポリ、マルセイユ、イスタンブール
ケープタウン、そしてニューヨーク、揚げたらきりがないよ。女はスペインが最高だってさ。
だけどな、狭い船上生活楽しみは、カラオケくらいしかないんだ。
性欲どう処理するか知ってるか?
若い乗組員を便所に連れ込んでケツの穴にぶっこむんだってよ。
別に同性愛者ってわけじゃないんだけどな。上下関係は絶対だよ。
気に入らない乗組員は、海に落とせばわからない。
帰ってきて、シケに飲み込まれたって言えばそれまでだ。
夜の海は人の髪の毛と同じ色してんだってよ。
7 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 22:07 ID:puq/fH+r
>性欲どう処理するか知ってるか?
>若い乗組員を便所に連れ込んでケツの穴にぶっこむんだってよ。
>別に同性愛者ってわけじゃないんだけどな。上下関係は絶対だよ。
どの漁船でもやってるの?
8 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 22:14 ID:Ht+KBeqa
ケツの話はともかく、
>気に入らない乗組員は、海に落とせばわからない。
これだけは気をつけろ。マジで。
9 名前: 0 投稿日: 02/01/13 22:59 ID:qrns3V5C
性欲処理を船の中でっていうのはウソ。数ヶ月に一度は補給の為港に入ります。
大体何処にいっても船乗り相手の売春宿みたいなのがいっぱいあるし、日本人は
気前がよくもてる。気に入らない奴は確かに海に落とせば分からない。
何ヶ月も顔あわせていれば喧嘩ぐらいはあるが・・・。
10 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/13 23:08 ID:7B4X4QE1
1年で600万くらいもらえるらしいよ。
焼津水産高校出身者の話によると。
11 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/14 18:03 ID:hsCSZL8+
>>6
俺も連れ込まれてけつぶっこまれるッて話しは知っている。そういう船も確かにある。
確かに性欲っていきなりくるもんな。
ちなみに俺は宇和島のマグロ乗組員に聞いた。
12 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/14 19:19 ID:Pl64euGM
船上で、ネットに接続しているやつっている?
13 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/14 22:13 ID:Tli8Crpo
○○○○○のお父さんはマグロ漁船の船員。
徹子の部屋で言ってた。
14 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/15 12:34 ID:uYpuoi8u
素敵な漁船ライフ。
http://www.altec.ne.jp/ajch/
15 名前: 名無しさん@引く手あまた 投稿日: 02/01/15 13:25 ID:QzquuU7+
素人考えですまんが、マグロ漁船に外人のせればいいのに。
1年で数十万円ですむだろ。
16 名前: 0 投稿日: 02/01/15 18:53 ID:XmSZc+Tp
↑そうそう、本当にそうだよ。すでに外国に日本船主が作った漁船員養成所がある。
ちゃんと日本語も教えているし。国名は忘れたが日本漁船に乗り込むことが出来たら
その国の大統領より年収がいいらしい。
17 名前: 名無しさん@引く延縄 投稿日: 02/01/15 19:23 ID:TIBJ3Er4
>>16
既にやっている。
日本にもインドネシア人やフィリピン人に漁船の乗組員として教育している施設があります。
以上「2CH」より引用
岡山、宮崎、愛知、福井、長野、兵庫、鹿児島、和歌山、そして富山である。言葉つきが乱暴で生意気だったから友だちも少なく一人で行動することが多かったが、仕事は人一倍一生懸命やり、力があって手先も器用でよく仕事をこなしたので誰も彼に文句を言わなかった。つまり一目置かれていた。そういうところが太田営業所長の気には入らなかったようであるが。
4. 理想の恋人
兼子は最近退屈していた。かつては信彦に会うときあんなに嬉しく胸ときめいたのに、そういう感情はきれいさっぱり消えてなくなっていた。文字通りきれいさっぱりだ、と兼子は冷静に思う。浴室のカビで汚れたタイルの壁が新しい洗剤ですっかり落ちた、そんな「きれいさっぱり」だった。そんな自分自身の感情がおかしくて彼女は少し笑った。
「どうしたの。何かいいことがあったの」
信彦にはそんな彼女の感情は見えないから、特に不信感も抱かずに、聞いた。信彦は兼子と違ってまだ幸福の中にいた。彼女の心の動きを少しも見透かせないような信彦に対してますます心は遠のいていく。その急激な醒め方は、当の兼子にとっても不思議だった。いったい私の中で何が起こり始めたのだろう。
「ねえ、信彦さん、」彼女はとんでもないことを言いかけている自分に気づいて口をつぐんだ。動揺した。
「どうしたの」
「ううん、なんでもない、ちょっとカラスが」妙なことを言った自分自身にもっと驚いた。カラス?
「カラス?」信彦はその言葉に特に驚きもしていないようだった。最近はたしかにカラスの数は多くなっている。先日は女性が襲われるという事件も起きた。
「君のほうでも、カラスが増えてるの?」信彦は優しく聞いた。
「ええ、増えてるわ、すごく。いつか子猫が殺されてた」彼女は思い出した。「でも不思議なのよね。カラスに攻撃されて死んでたんだけど、食べられてはいなかった。カラスは自分の餌にするために攻撃するのよね」
「たぶん、そうだと思う。子猫が攻撃されてるとこを君は見たの」
「私は見てない。見てたのは、お母さん。それからしばらく様子が変だったわ、わけのわからないことを言ったりして。突然死んだ兄さんの名前を呼んだりしたわ。もう20年も前に死んでるのに」
「君んちで飼ってた猫だったの」
「ちがう。のら猫。でも、たまに餌とかやってたみたい、お母さん」その言葉のあとで兼子は何かがはじけるみたいに言った。
「ねえ、信彦さん、私たち、別れましょう」
3. 3人の自殺者
Sという名の小説家は47歳の時に「A」というタイトルの小説を書いてベストセラーになった。それまでSが書いていたものは軽い推理小説で、謎を解明して読者を楽しませるというものではなく、登場人物の間抜けな行動で笑わせるという内容のものだった。爆発的に売れたわけでもなく、どの年代の人も彼の名を知っているというわけでもなかったが、ギャグ・センスが中学、高校生の、特に女子に受けて小説がシリーズ化される人気は持っていた。ところが「A」という小説はまったく違った。それまでの読者は最初の数ページを読んで、唖然とした。多くの読者は自分が間違って本を購入してしまったのではないかと表紙を見て作者の名前を確かめた。これはきっと新種のギャグなんだ、これがきっと腹を抱えて笑う仕掛けになっているに違いないともう数頁を我慢して読む、しかしその深刻な物語をあっけなく裏切るような今まで経験したことのないようなギャグは一向に訪れない。不思議に思って読者はもういちど確かめてみる。表紙のカバーをはずして作者の名前とタイトルを確かめる。間違いなく、作者の名はSと印刷されている。怪訝に思いつつも読み進め、その深刻で暗く残虐な物語がうっとうしくて結局読むことを放棄してしまう読者が過半数だったが、最後まで読み終えてしまった読者は今までに経験したことのない感動に深く浸り、彼らの口コミであっという間にベストセラーになった。それにはインターネットが果たした役割も大きい。
「A」は不思議な小説だった。三つの物語が同時に進行していくのだが物語の最後でその主人公たちは自殺してしまう。それが第1章。第2章は、この章が最も見かけは過激で、ネットであれこれ取り沙汰されたのもこの章だったのだが、SM的な生活を送るカップルの一日が生々しく描かれている。ただそのカップルの性別が不明で男なのか女なのか、同性愛者なのか、そもそも人間ではないのか、よく分からないのである。しかも読者は第1章との関わりで読もうとするから、登場人物が謎めいた行動や会話をするたびに、伏線、あるいは鍵が隠されているのではないかと何度も第1章に戻ったりするのである。何しろ作者は本格ものではないにしろ推理小説の作者なんだし、読者がトリックに惑わされまいと思ってそういう行動をしたとしても決して妙ではないのである。ただし、どうもトリックは仕込まれていないようでトリックが巧妙に取り除かれていることが最も大きいトリックではないかと後に語った批評家もいた。第3章は、第1章の三人の登場人物の自殺の原因を作ったらしい女性の物語。彼女の一生がわずか100頁足らずで語られる。こんな陰惨で苦痛に充ちた人生を送る人間が現実に存在するとは思えないが、書きようによっては笑ってしまわざるを得ないような彼女の人生を作者はじっと残忍に凝視するように描写する。そしてここまで忍耐とともに読んできた読者を呆然とさせる第4章。仕掛けは夢野久作の「ドグラマグラ」と同じなのだが、神経を逆なでするような背景設定がタブーを破ってしまっており、とにかく開いた口がふさがらない。たしかに読後、読者に残された感情はただ笑うことでしか慰められないという意味合いにおいては、小説自体が奇抜で新奇のギャグであったのかもしれない。
2. 種子1. 爆発0. 空無