遠い昔、遙か彼方の銀河系で....
―――――――誰かを助けるのに理由がいるかい?だけど・・・たまには叱ってほしいアルよ。一人でいると、寂しさがたくさんおしよせてくるの―――。
王女らしくね・・・!!
南太平洋沖4649マイルかつ上空4000メートル。そこに彼女はいた。
回転速度は常よりもさらに速く、コンコルドにも達する勢いだ。
押しかけるレインバンドを饒舌に従えた彼女は天をも懼れぬそのイントネーションで、再び世界を恐怖に陥れる候補に上がっていた。
「あれに見えるは茶摘ボクサーん♥」
プリマの消極的な歌声は満を持してお送りされる。レインバンドは次第にその深みを増しスプリンクラーの泡がそれを優しく抱いた。
やがてそのパワーはEランクをはるかに上回り、高まったそのスピードで辺りに寒冷前線を端線で築いた。溢れだしたメギドは空気を震撼させ、白波が波を呼び、遂に前代未聞の大渦を起こした。
―――――――プリマどんなの嘶き
ホワイトアウトとも呼ばれるそれは学名ベンジョコオロギとして山野教授によって世界に広められたことは言うまでもない。
次第に北上するそれはフリーウィリーを飛び日付変更線を越え、僕らの町へやって来た、ハットリくんがやって来た。
それこそが世に言う、第3次逢坂(あふさか)の大急襲である。折角街を守るためにやって来たハットリくんをものともせず、プリマはその踵を悠久の大地へとlandingした・・・。
「ここが・・・今回のメインねん♥」
プリマは首を巡らせ、ぼそりと呟く。
「師叔、そろそろ暇乞<いとまごい>*1の時間でございます」
彼女の傍らでそううそぶいたのは、ジェニファーの死語まもなく彼女のお目に留まった一番弟子、ミッチェル=ド=アーリマン――天の召された落とし子である。彼はロシア人の母とイタリア人の父を持つ、いわば良家の血筋を継いだ印象派の影響を色濃く受ける『合の子』だ。
「わかったわん♥行くわよん♥」
プリマはその長いもみあげを撫でつけ、あらん限りの力で叫んだ。
「破ッ!!!」
叫ぶと思うが早いか、彼女の足元から七色の龍神が首をもたげ、逃げ惑う十二仙達を次々と呑みこんでいった。
折からの京風に自慢の天然パーマを煽られながらも、ミッチェルは愛すべき師叔から視線を外そうとはしなかった。やがて強さを増した龍神は、彼の切妻屋根創始者の邸宅上空の農場まで到り着いた。
「あ・・・・あれはなんじゃっ!!?」
場<フィールド>が完全に龍神の巣と化そうとしたとき、卑弱な生命が自らの扉を開け、空へと吠えた。
「あーらん♥貴方の時代はもう終わりん♥The Endよん♥」
―――――――――そう、彼こそはあの有名なチンギス=ハンも尻尾を巻いて逃げたというフランス流球棒術の使い手にして切妻屋根創始者。
ナント=デリカット・・・・その人だったのだ。
「わしの土地でお主の好き勝手にはさせん!!!」
ナントは思うさま手元の鍬を振りかざして強風の中心地下2kmにいるプリマの喉元を狙って躍りかかった。
「うぉるあああ・・・!!」
ナントの咆哮は、それはそれは凄まじかった。だがしかし・・・
「甘いわん♥」
プリマはお特異の科白を地面に向かって吐き捨てると、遠隔見守りを続ける弟子のミッチェルに向かって瞬時に合図を施す。
合図を受けたミッチェルは、人とも思えぬ迅速な行動で、己の師匠にモールス信号を送った。
「なかなかよん♥ミッチェルん♥」
頷くが速いか、プリマは反動をつけ、おもうさま反時計に回りはじめる。
「な・・・何ッ!!?」
ナントが彼女の姿をその視界に納むることもままならず、恋のシュプールは旋風によって掻き消されてしまった。
*1…『こころ』参照
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