無題




明け方、私は自分が死ぬ夢をみた。
なぜ明け方だと覚えているのか、もしかしたらそれは夢ではなかったのかもしれないし、
明け方に夢を見る夢をみただけかもしれぬ。
どちらにせよ、冬の明け方、私は手足を凍えさせながら夢を見た。
誰かに、何かに首を締められて、とても苦しい。
果てない苦しみの中、何分か、何時間か、何日か、
時が過ぎて行くのが分かった。
地獄の苦悶のような中、私はある時死んだ。
体が死んだかは分からぬ。
私は心が息絶えるのを感じた。
そうして認識した瞬間、私は目が覚めた。
私は自分の首を毛布で圧迫していて、苦しんでいたようだった。
自分に殺される夢だったのだと思った。
自分に殺される。

私は春に首を吊って自殺をした。





墓場にはいつでも死人がいる。
そして季節が来ると、人は死人に会いにゆく。
人は生きている。
死人は死んでいる。
生死の境は墓石一つ。
しかし私には墓石が無かった。
棺桶も無かった。
訪ねる人も無かった。
私は生死の中間を生きていた。
死にながらにして矛盾を抱える人の子であった。

「もし」

私は時々、死人の墓場へ訪ねて行く。
休める場所を持てぬ私は、安穏と地の中に眠る死人を羨ましく思っていた。

「もし」

「私を呼ぶのは誰(たれ)か」

墓場の下から、地を通して声が聞こえる。
私は墓石の前にお辞儀をする。

「私です、生きることも、死ぬことも叶わぬ、哀れな人の子です」

「お前か。休める場所も、訪ねる人も、名前すらも無い、哀れな子」

「そうです、私です」

砂利の上へ正座をし、私は手をついた。

「お話を聞かせて頂けませんか、私はまだ分からないのです」

「もうお主に話す事は無い」

「そんな事仰らないで下さい、お願いです、もう少しな気がするのです」

私は砂利の上で額を擦りつける。

「もうここへは来るな、諦めを知れ」






続く