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夏の風物詩
地元小田原で開催される花火大会に合わせ、久しぶりに彼女を実家に誘った。いつもならば、「私、やだ。」と言うなり、プイとそっぽを向いてしまうのだが、今回はすんなりとOKしてくれた。理由は何となく分かっていたので、敢えて聞かなかった。 待ち合わせの場所は、駅の構内。彼女は、後ろからそっと手を伸ばし、私の肩を叩いた。ちょい長のスカートにノースリーブ。麦わら帽子(厳密には麻の帽子らしい。彼女は麦わらじゃないもんと言って、機嫌を損ねてしまった)を浅くかぶって、左手首に銀のブレスレット。観測記録に残る長い梅雨が前日まで続いていたせいか、夏めいた彼女の格好に少し違和感を感じた。しかし、それもほんの数秒のことで、駅の構内から出るとすぐに自分の感覚の方がズレていた事に気が付いた。刺すような太陽の光と、真っ青な空。まさしくその日は、絶好の花火日和であった。

私、犬に会いに来たの
彼女の目当てはうちの飼い犬だった。彼女は満面の笑みで犬に抱きついた。犬の名前を呼んでは抱き締めて、頭をなでなで。とにかく犬のことしか頭にないようだった。犬は犬で、小刻みにシッポを振るわせて、しっかりと愛想を振りまいている。私の話は全くの上の空で、彼女は犬との求愛を永遠とくり返した。「私、花火行かない。ティナと家にいる!」なんとなく想像はついていた。さすがに「ハァー」となって、「行くぞ!」と強く言った。もちろん強く言えば言う程、剛情な態度を表に出す彼女。「私、いかないもん。」「じゃあ置いて行くぞ!」「やだ!でもいかない!」
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