Theme『雁字搦め』 「絡まる・・・」
また、か・・・・
何度巻き取った事だろう。何度やっても先っちょは踊り、コードは生き物みたいにのたくって絡まり、いっこうに最後まで巻き取れない。
このまま全部コードを引っこ抜いて、バラバラにして捨ててやりたい気持ちになるが、それも大人気ない。
絡まりを解き、今度こそとコードの端を持って部屋を横断し、なるべくコードがまっすぐになるようにしてみる。
準備万端、巻き取りボタンを力強く押す。
コードは勢い良く本体に吸い込まれてゆき、最後にコンセントが掃除機のオシリに収まった。
ふぅ・・・良くやった。自分で自分を誉めてやりたい。
がしかし、コードの先端は、まっすぐになった分、足枷となる物が無くなり、思い切り暴れてくれていた。
おかげで、せっかくきれいにしまったはずのペン立てが倒され、床にシャーペンやボールペンが散らばっている。
あ〜あ。そんなにオレを虐めたいかよ・・・
折角すっきりしようと思って随分な時間をかけて部屋の掃除なんぞやってみたが、慣れないことはすべきじゃない。
おかげで余計イライラしてきた・・・。
そういえば、5時からスタジオじゃん・・・今何時よ?げっ!もう4時半か?!間に合わねーよっ!カンベンして・・・
とか言いつつノロノロ準備をして部屋を出て、途中で遅れる旨の連絡を入れ、ちんたら歩いてスタジオに着いた。
20分遅刻。やれやれ。
受付のお兄さんは、だるそうにコーヒーを飲みながらMTVを見てた。
オレが「ちわっ」て言うとオレに視線をくれて、「Cスタね。」と言ったきり、またテレビを見出した。
振りだけでも急ぐか・・・
階段を一気に駆け上がって、ちょっと息を弾ませ気味で、重い扉を開く。
視線がオレに集中する。
「おせーよっ!!」
・・・何もみんなで声合わせて言わんでも・・・
「いや〜、すまんすまん。処々の事情によりまして・・・」
と言いつつ楽器をケースから取り出し、ケースのポケットからシールドを・・・おいおい、こいつもぐちゃぐちゃだよ。
またコードを解く羽目になる。
「お前、いっつもシールド絡まってるよな・・・」
練習終了後、ドラムの奴が言い出した。別にいいじゃん。
巻き方なんて、使えりゃ・・・
「いつもどうやって巻いてるかやってみ?」
うーん。そう言われると、どうやってたか分からん。
なんかぐるぐるってやってケースに突っ込んでる気がする。
そう言ったら、
「8の字巻き知らねーの?教えてやろか?」
ハイ、ともイイエ、とも言う前に奴はオレのシールドを取りあげて、するすると巻き出す。
「こうやって輪っかを作っといて、今度はこの手をちょっとひねって、こう。んで、また輪っかを作って・・・これの繰り返しな。」
きれいに巻きあげて、やってみろと渡される時に、奴がシールドの先っちょをもってぱっと手を離したら、きれいにシールドが解けた。
おお、すげぇ。これは画期的!
言われたとおりにやってみるが、意外と難しい。
輪っかの大きさが揃わん・・・何とか巻きあげて解いて見ると、絡まずにきれいに解けた。
GOOD JOBオレ!
「まぁ、初めてにしては上手く巻けたんじゃん?んじゃ、もう一回巻いて早く片そうぜ。」
オレと奴が階段を降りていくと、先に降りてたメンバーがもう清算をしていた。
金を払って、お疲れっス、と外へ出ると、もう暗くなっている。
「今日、遊びに行っていい?」
奴がオレに言う。
「やだ。掃除したばっかだし。お前来ると絶対散らかす。」
「うそ?掃除?お前が?絶対明日雨降るぞ。」
「うるせぇよ。」
「まぁまぁ。シールドが絡まるのも、部屋が散らかるのも自然の摂理だ。あきらめろ。どうせ散らかるんだし、それが早いか遅いかの違いだろ?気にすんなや。」
無理矢理許可させられる。まぁ、しょうがねぇか。
ビールでも買って帰るかな・・・。
END
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