帆 船 の 旅 5
4月21日から25日まで  日付変更線通過


4月21日(木)   9:00ブリーフィング。
現在本船は高気圧圏の後尾にひっついているという状況。 従って真っ正面からの向かい風を受けており、帆を張ると抵抗になるだけなので すべての帆を畳んで機走する。

午後、昨日の抽選に従ってボング変え。
いったんすべての荷物を甲板に運びあげ、 ボングの大掃除、シーツの交換、新しいボングに
荷物を運び込む、 ごく隣室への移動なのだが、結構汗だくになる。
私は4号室から1号室への移動。
クルーに言わせると天国から地獄への移動なんだそうだ。
たしかに最船首なので不規則によく揺れる。
ただ4号室に比べ居室のスペースがやや広く、ボングの幅も少し広くて快適。

昨日・今日はカツオが一匹も釣れていない。 その代わりと言うか、鳥が釣り糸によくかかる。 あほうどり、そしてもう少し大振りのがかつお鳥である。 中に元気な鳥がいて、針にかかったまま水上スキーをやって見せたり、 凧よろしくひも付きで空を飛んだりするのもいる。 少しドンくさいのは潜水して、釣り上げられてからゲーゲーと水を吐く鳥もいる。 救命救急士も乗ってはいるが、誰も人工呼吸をしてやろうという者はいない。 大概針にかかった鳥は死んで(殺してではない)水葬に付される。

4月22日(金)
9:00ブリーフィングで、 多分今日は一日ずっと雨、しかも向かい風のため 一切操帆を行わず終日機走とする、 したがってすべての作業及び練習も中止して 休日とする、と伝えられる。

休日と言われてもデッキに出ることも出来ず、何もすることがない。 午前中はメスルームで凧作り、紙の代わりにTシャツヲ切って張り付け 一応凧らしきものができあがったが、とても揚がりそうにもない。
午後もメスルームでぶらぶらとして時間をつぶす。
進路は110(やや南向き)である。

4月23日(土)
今朝もまた雨である。
余りよい風ではないけれども、昨日、おとついと帆を張っていないし、 揺れ止めのためにも、また、せっかくの操帆技術の維持のためにも フォアスル・メインスルの2枚を張ることにする。
そのまま新生スピカは8−0のワッチにはいる。 雨、時々非常に激しく舵を取っていても雨粒が眼鏡をたたいて すぐにジャイロコンパスが見えなくなってしまう。

15:30ジブセール2枚を増やす。
バウスプリット(船首に付きだしている棒)に出て
ルーズガスケット(帆を縛り付けているロープをほどくこと)をしているとき 真下からバシャッと波をかぶってしまった。

夕食後6−8のドッグワッチ(2時間の短ワッチ)に入る。
進路90,ほぼ真南から20ノット近い安定した風。
対水速度7ノット、対地速度9ノットで順調に走る。
午前中は向かい風に遮られた機走で4ノット程度しか出ていなかったため 日付変更線通過は26日かと思っていたが、午後の調子では 25日中に日付変更線を通過してしまうかも知れない。

天測に関する懸賞問題。
『天測計算(電卓使用可)で一天体のI(インターセプト)とZ(方位角)を10分以内で計算せよ』
出来た人には金刺繍入りのクルーキャブとあこがれのロゴ入りクルー用ポロシャツを賞品に。 賞品には大変魅力を感じるが、今までコツコツと計算してきた天測クラブの人に聞くと 10日間やって今でもこの問題を解くのに3時間かかるというから 今からの参入では勝ち目はないとあきらめる。

4月24日(日)
3:30起床、4−8のワッチにはいる。
雨はほとんど止んでおり、曇天ではあるがかなり明るい。
風も少し暖かくなってきている。
波は相変わらず船首で大きくくだけてバウデッキを洗っている。

今まで張っていた4枚に加えて、フォアステイスル、メインステイスル、トップスル、 メインガフトップスル、ミズン、ミズンガフトップスルの6枚を増やし、計10枚で帆走。
帆走になると帆自体が揺れ止めの役目も果たし、エンジンの音も消えて ずいぶん快適になる。
ただ進行方向2時の方向からの南風を受けているので 船体は常にポート側に5〜10度傾いた状態が続く。

昨日・今日とは釣り糸を出すとすぐにカモメが集まってきて疑似餌をつつき 時に針にかかってしまう。
今日も針にかかったカモメを何とか釣り上げて逃がしてやろうと頑張ったが 暴れて、途中で潜ってしまい水死。


メスルームでは看護婦資格を持っている お京さんを囲んでの血圧測定がはやっている。
次第にエスカレートして、 どこからか新品の聴診器を持ち出して お医者さんごっこに発展 みんな腹を抱えての大笑いとなった。

16:00畳帆。
今朝張った6枚を畳み、4枚の帆で機帆走。
今日は風もあって、かなりのスピードが出たようで、 日付変更線通過は25日午後か26日早朝になりそう。

午後、進路を110度に取りややなんかさせている。 ミッドウェーを見たいという希望も出て、 ひょっとしたら航路を変更するかも知れない。

夕方、船尾より日没・夕焼けを眺める。
雲があってまん丸い夕陽はみられなかったが 波もおだやか、夕焼け雲がまるい水平線に美しい。


4月25日(月)
すばらしい晴天である。
進路は110,かなり南に下がってきている。
今夕ぐらいには日付変更線を通過することになりそう。
午前中の作業はハンドレール磨き。 何も考えずに丸い水平線を眺めながらサウンドペーパーで手すりをこする、 気分良好である。

午後はメインセールの張り替え。
というのは、現在メインセールには「2008年オリンピックを大阪に」という オリンピック誘致マークとスローガンが描かれているが、 IOCの規定では9月までは公式に誘致活動をしてはいけないことになっている。
ハワイが近づいて来るにつれ、 もしアメリカの報道機関にこのあこがれの帆走写真を撮られたら規定違反で オリンピック開催地候補を取り消されてしまうおそれがあるからである。

新しいセールにはワールドセイル2000の レース用の番号「JS−593」の入った新品である。

15:00過ぎ、オールハンドオンデッキの放送が入る。
日付変更線通過が近づいてきたのである。
秒読みがあって15:37わがあこがれは西半球に入る。
180度線を通過すると今までは海図上、178,179と進んできたのが これからは179、178と数字が少なくなっていく。
日付変更線通過のイベントとして 何やら裸踊りのようなものあり。
そしておやつにオハギが出る。

夕方、船尾から作った凧を揚げて見る。
何となく揚がりそうな様子を見せながら、 なかなか揚がってくれない。

今日一日は、久しぶりに太陽が顔を出し、 ハワイの夏を感じさせてくれたかと思うと、 一転して濃霧、船のまわり数十メートルしか視界がきかなくなったり、 輝く夕陽が海を美しく染める、など 自然の豊かさを存分に感じさせてくれた一日であった。

20:00〜24:00のワッチ。
霧があるとはいうものの満天の星。
水平線近くから反対の水平線まで、まるまる半球全体を星が覆っている。
風はほぼ真正面から。
これが30度(船首に対し1時の方向)になったらタックを変えるようにとキャプテンの指示。
同じことなら私たちのワッチ内になどと思っていたが、 結局は明朝までタック変えで起こされることはなかった。
これで前半の部は終わりである。
次は、日付変更線を西から東へ通過したため、 もう一度25日をやることになる(リピートデーと言う)ので、 再度4月25日からの書き出しとなる。
             続く