第五章 目覚める力
〜成長する剣〜
俺が目を覚ますと、すぐ横にルナがいた。
「うわっ!どうしてルナ義兄が・・・」
「ラナがな、お前に、これを渡せって言ってよ。」
ルナは、手に青い剣を持っていた。
「それは・・・?」
「これは、フラニティといって前の武器より軽くて更に威力がある、優れもんだ。」
「ありがとうって、伝えといて。」
「あぁ、わかった。」
ルナは俺の部屋を出て行った。
(作戦開始まで、あと、二時間三分か・・・)
「どうするかな。・・・ミサキにでも、会って来るかな。」
俺も、部屋をあとにして、ミサキの部屋に向かった。
「よっ。」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「いや、お前何してるかなって思って。」
「私は、準備してるんだよ。」
「準備って、まさか・・・」
「うん、次の戦いのだよ。」
「おい、お前な。ファイトシュミレーターじゃ、
紋章術師だったから紋章術を使えたものの、今度はゲームじゃないんだぞ。
わかって―――。」
「はいはい、紋章術がどうしたって。ちょっと待っててよ。」
ミサキは、ベッドの横にある鞄の中から杖のようなものを取り出した。
「見ててよ。」
「まさか・・・」
「このものに聖なる光を与えよ。ヒーリング。」
ミサキが呪文を唱えると、俺の体が青い光に包まれていった。
「なんか、体が楽になったみたいだ。」
「すごいでしょ。」
「お前、いつの間にこんな事できるようになったんだ?」
「ここにきて、ラナさんから、この杖貰ってから、できるようになったんだ。」
「はぁ、まあいいや。これで、少しはお前の心配はしなくて済むんだな。」
「少しじゃない!」
「はいはい、わかりました。・・・俺は、こいつを使いこなさないとな。」
「わぁ、何その剣?」
「これは・・・、ラナからもらったんだ。」
「ふーん。ラナさんっていろんなもの持ってるね。」
「あぁ、そうだな。」
「・・・そうだ!お兄ちゃんにこれ上げる。」
ミサキは、ポケットの中から、紐のようなものを取り出した。
「何だ、それ?」
「これは、ミサンガだよ。お守りね、要は。」
「そうか・・・じゃあ貰っとくかな。」
「じゃあ、つけないと。」
ミサキは、俺の腕を持って、手首にミサンガをつけてくれた。
「よし、これでいいはずだよ。」
「いいはずって、・・・大丈夫なのか?」
「うん。多分ね。」
「あのなぁ。」
「いいじゃん。・・・そういえば、お兄ちゃん、その剣使いこなすんじゃなかったの?」
「うわ、やっべ、時間くっちまった。じゃあな。」
「うん、じゃあ、また後でね。」
「あぁ。」
俺は、ミサキの部屋を後にして自分の部屋に向かおうとした。
「よ、シオン。」
「なんだ、ルナ義兄、いたのか。」
「お前、その武器をぶっつけで使うつもりなのか?」
「いや、どこかで練習できればなぁ、って思ってたんだ。」
「そうか、なら、練習できる場所教えてやってもいいんだが・・・」
「ほんと!」
「あぁ。」
「じゃあ、教えて!その場所。」
「・・・なら、ついて来い。」
俺は、ルナについて、歩き出した。
しばらくすると、ルナが立ち止まった。
「ここが、その練習場所だ。ここで、ミサキも練習して紋章術を覚えたぜ。」
「ミサキが!?」
「あぁ。それと、あと作戦開始まで二時間だ、その間で、使いこなしなよ。」
「・・・頑張ってみるよ。」
「気をつけてな。・・・これは一応ゲームだが、ファイトシュミレーターとは違うからな。
痛みとかも感じる、それに、精神をゲームの中に取り入れるから、
ゲーム中にゲームオーバーになっちまうと、ほんとに、死んじまうからな。」
「あぁ、気をつけるよ。」
「やり方は部屋に入りゃいいだけだ。」
「わかった。」
俺は、ルナ義兄を残して部屋の中に入っていった。
「ここが練習場所か・・・フラニティは、構えとかないと。」
部屋の中は、森みたいだった。
「さぁて、どうするか・・・。」
俺が考え込んでると、遠くのほうから、変な声が聞こえてきた。
「うわ、何だ、この声?」
変な声を出すものがどんどん近付いてくるのが分かった。
「来るか!?」
『ギャオース』
「きやがった!」
それがモンスターだと確認出来たのは、よかったが、
そのモンスターは、体が青色で、鰭があって、首長竜みたいなモンスターだった。
「こういうのって海の生物じゃないのか?」
モンスターは、俺に噛み付こうとしたり、鰭で叩こうとしたり、首を振り回したりして、
よけるのが大変だったが、動きがある一定であるということに気がついた。
(首を回して・・・噛み付こうとして・・・鰭・・・首・・・
やっぱり、こいつ、一定の攻撃しかしない。これは、相手が近付く鰭のときに攻撃するかな。)
「首・・・歯・・・鰭!」
俺は、モンスターの攻撃をよけてから、首を攻撃した。
モンスターはその攻撃でもう倒れていた。
「案外あっけないもんだな。」
モンスターはその場で消えて行ったが、骨がその場に残っていた。
「ちょっと―――。」
俺がむごいと言おうとしたら、モンスターから攻撃があった。
「いって!ほんとに違うな、痛みも・・・、やばいぞ、こりゃ。」
(どっから攻撃されてんだ?こんな森の中じゃどうしようもないぜ。)
俺が考えていると、背後の木陰から木の葉がかすれる音が聞こえた。
「後ろか!」
後ろを向いた瞬間攻撃してきたので、反射的に剣でガードしたら死んでしまった。
「この剣が強いからか?・・・おっと、油断大敵、さっきみたいに攻撃されちゃあ、意味ないからな。」
(・・・少し歩いてみるかな。)
歩き出してから、少したつと不気味な森も抜け出すことができた。
森から出ると、そこは広大な草原があった。
「ここだったらモンスターが遠くからでもわかるからな。」
俺は、草原の真ん中で剣を構えた。
「ここで少し待つか・・・」
5分ぐらい立っても一匹もモンスターと遭遇しなかった。
「おいおい、もうモンスターいないのかよ。」
考え込むと、後ろのほうで、サ、サ、という音が聞こえた。
「お、ようやく来・・・」
俺が後ろを向くと、そこには、2匹のモンスターがいた。
「ちょっとまて、2匹は俺一人じゃどうしようも・・・」
前を向き直すと、そこにも2匹のモンスターがいた。
「ちょっとやべぇぞ。このままじゃ―――」
俺の言葉をさえぎり、後ろの2匹が攻撃してきた。
「うわ、はや!」
気付いたときにはもう10メートルぐらいあった距離が1メートルもなかった。
「くそっ!これじゃあ、攻撃できねぇ。」
モンスターの攻撃を防ぎながら、俺は、2,3歩後ろに下がった。
「ウゥ・・・。」
(うなり声?やべ!前にいた敵も混じりやがったか!)
俺の目にはそのとき、3匹は映っていたが、もう一匹は見当たらなかった。
(一匹いな―――)
「うわぁ!」
モンスターの攻撃は、背後から、背中を切り裂かれた。
その攻撃によって、早い動きをするモンスターの攻撃を、まともに何発も食らってしまった。
「やば・・・い。」
『我を呼べ・・・』
俺の中で声が聞こえてきた。
「な・・・ん・・・だ?」
『我を呼べ・・・我を使え・・・』
「なん・・・な・・・んだ・・・」
その時、フラニティが光っているのが分かった。
『我を呼べ・・・我が名は・・・ヴァスター』
「ヴァスター?」
俺が言った瞬間、フラニティからの光で、俺の体まで包まれた。
「何だ・・・これは・・・傷が・・・どんどんふさがっていく・・・。」
光の中に包まれると、俺の体は、ミサキにヒーリングを掛けられた時と、同じような感覚になっていた。
『我はヴァスター・・・。お前は、強くなりたいか・・・』
「なれるもんならな・・・。」
『ならば我の力を与えよう・・・。』
今度は、青い、光に包まれて行った。
「なんか、力がみなぎってくる感じだ・・・。」
俺は、再度、フラニティを握り、光の中から出た。
光の外には、モンスターで、あふれていた。ざっと、百匹くらいは、いるだろう。
「さっきより、かなり増えたぞ・・・。」
『心配ない・・・大丈夫だ・・・』
「ほんとかよ・・・」
『いくぞ・・・』
「ちょ、え!待って、うわ!」
俺は、何かに操られたかのように体が勝手に動いていた。
「どうなってるんだ・・・?」
時間が経つにつれ、どんどんモンスターの数は減っていった。
「すげぇ・・・」
『止めだ、行くぞ。』
「あ、あぁ。」
『・・・今こそ受け入れよ・・・次なる生のための意味ある死を・・・』
「何言ってんの?ヴァスター?」
『運命の輪廻には何人たりとも逆らえぬことを知れ・・・醜きモンスターよ。』
「かっこ付けてんのか?」
『イセリアル・ブラスト!』
ヴァスターがそう言うと、俺の体、光の羽が生えてきた。
「うわ、なんだよこれ!?」
手が勝手に、前に出て、その手から、光があふれていた。
『食らえ!』
「何、勝手にやって―――。」
手にあふれていた光は、モンスターめがけて、一筋の線になって、飛んで行った。
しかし、そこで気を失ってしまった。
俺が、気付いたら、モンスターが、一匹もいなかった。
「あれっ?確かモンスターが、まだ、30匹ぐらいいたような気がするんだけど・・・、
アレは夢だったのか・・・?」
『お、気が付いたか・・・。』
「うわっ!・・・夢じゃなかったのか・・・」
『何が夢だ、まったく。あんなんで、気を失ってどうするんだ。』
「あんなん、って言われてもなぁ・・・つーか、あんたどこにいるんだよ!」
『お前の中だ。』
「え、俺の中・・・、んなわけないじゃん。」
『本当だ。私は、お前の意思でもある。』
「誰がそんなの信じるか!」
『お前は現に、俺に助けられている。』
「何言ってるんだ。お前なんかに助けられた覚えなんてない!」
『お前は、自分の意思でもないのに、体が勝手に動いたのを覚えているか?』
(体が勝手に・・・?)
「俺が死にそうになったとき、体が勝手に動いたのはお前だったのか!」
『あぁ、そうだ。あれは私が動かした。』
「お前、俺の体から出て行け!」
『それは無理だな。』
「なんだと!」
『私は、お前が名前を呼んだんだ。だから、お前の中から、出られない。』
「な、何言ってるんだ。」
『お前が、私の名前を呼んだんだ。私らは、名前を呼んだ者の体を使って、その体の中に入り込む。』
「なら、出ることもできるんだろ。」
『あぁ、できるが、おまえが死ぬ事になる。』
「な、なんだって!」
『だからお前は私をと一緒に一生を、過ごすことになるな。』
「ほんとかよ・・・もう・・・」
『ほんとだ。』
「・・・なら、これは俺の体だからな。俺が呼ぶまで出てくるなよ。」
『初めからそのつもりだ。』
「ならいいや。・・・よし、ちょっと疲れちまったな・・・フラニティもっ―――。」
俺が見たそこには、フラニティとは別の形の剣が置いてあった。
「なんだ。これは!」
『お前知らなかったのか?その剣は、成長するんだ。』
「せ、成長!?」
『そうだ。私は、この剣が気に入ったからな、これをもっと強くするために剣に力を注いでやった。』
「それは成長って言わないだろ・・・って、言うより、勝手にやんなって言ってるだろ!」
『あぁ、悪かった。これからは、勝手にはやんないよ。』
「それにしても、前の時より、髄分長いな・・・。」
前のときは、70センチくらいあったが、今は、1メートルぐらいあった。
「重さは・・・、しかも、変わってないな。」
『私の魔力を使えば、こんなの簡単だ。』
「ふーん。威力は?」
『威力は前より更に上がっている。』
「そうか・・・じゃあ、試してみるかな。」
俺は、立ち上がり、戻るついでに、不気味な森に入って行った。
「戻ってりゃ、敵は出てくるだろ、多分。」
入り口に近付いてもモンスターは一匹も出てこなかった。
「なんで、こういうときに限って、出てこないかなぁ。」
『そんなにためしたけりゃ、振ってみればいいんじゃないのか。』
「あ・・・、そういえば、そうだな。」
俺は、ヴァスターの言われた通りに、木に向かって剣を振ってみた。
すると、当たってないのに、木は倒れ、その奥の2,3本も倒れた。
「すげぇ・・・。」
『言ったとおりだろ。』
「あぁ、そうだな。」
しばらく剣を見ていたが、少し疲れてしまった。
「疲れたな・・・作戦開始まで、あと、1
時間半くらいあるだろうか・・・あったら、少し休むかな。」
俺は、そう言って、練習部屋から出た。
「よ、お前大丈夫だったか?」
「何とかね・・・」
「そうか、なら、まだ作戦開始まで、1時間20分あるから、部屋で寝てな。」
「あぁ、そうするよ。」
俺は、ルナを置いて、自分の部屋に向かった。
「じゃあ、少しの間寝るかな。」
俺は、ベッドに、横になり、そのまま眠った。