第一章 脱出(1)
〜襲われるヘルア〜
「緊急時の為に、現在、当ホテルにある全てのトランスポーターの転送先は、避難場
所に直通しております。
転送装置が、空い
ているところから、慌てずどうぞお入りください。」
そんな係員の声を聞きながら、俺たちは、転送装置の中に入っていった。
ポワン
(ここが、避難場所か・・・)
「ここは地球の地下にある緊急避難用シェ
ルターです。
救助艦が到着するまでの間、各自割り当てられた部屋にてお待ちくださ
い。
施設内の移動は原則として自由ですが、一部立ち入り不可能な場所もあります。
そのほか、詳しい注意点などに関しては備え付けのコンソールおよび係員の指示に従ってください。」
俺はコクンと頷いて返事をした。
「・・・あなた方に割り振られた部屋は『506』になっていますよ。お間違えのないように。」
(506号室か・・・)
「分かりました。『506』ですね。」
「大丈夫、すぐに救援は来ますから。安心してお待ちください。」
「はい。」
ミサキはお辞儀すると、俺の手を引っ張りながら、506号室に向かっていた。
「せっかく楽しみにしていたのに・・・」
がっかりしているミサキを、
「大丈夫だよ、連邦がなんとかやってくれるさ。」
励ましながら、506号室に着いた。
(ここが506号室か・・・)
「ミサキ、今日は疲れたな・・・どうする、寝るか?」
「ううん、もうちょっと、気晴らしに歩きたい。」
「・・・それもそうだな、じゃあ、少し歩くか・・・」
俺らは、506号室を後にして、その辺を歩いてみることにした。
「その辺の部屋、入ってみるか?」
「うん。」
そう言って、俺たちは、509号室に入っていった。
部屋の中には6人ぐらいの、人が集まっていた。
一人は、背が高くてすらっとしている女の人だし、
一人は、背が低い女の子みたいだし
、また、ある一人は、大男、また一人は、緑色の道化師のような格好をしているし、
あとの二人は、一人が女の人で、あと一人は背が小さい男の人だ。
「とりあえず、みんなが無事でよかったぞな。
じゃあ、これからのワシらの営業方針についての話をしようと思うのじゃが・・・ん?」
「あれ!?どちらさまぁ?」
女の子に、急に声を掛けられ、ビックリしていたが、すぐに、疑問に答えた。
「あ、えっと、その辺歩いてたら、声がしたもんだから、何を話してるのかなぁって思って・・・」
俺は、慌てて、適当な言い訳をした。
「ふーん。あたしたち、今は、次の公演について話し合うところだったんだ。」
「公演って、何かの一座ですか?」
疑問に思っている事を声に出したら、すぐに答えてくれた。
「そう、あたしたちは、ロセッティ一座だよ。
・・・今回シャインホテルで、サーカスをやる予定だったの。
しかも、あたしは、これが初公演だったんだけど・・・あんなの来なかったらよかったのに。」
(それは言えてるな・・・)
「うん、そうだね、あんなのがいなかったら、よかったのに・・・
あ、そうだ、自己紹介がまだだったね、私は、ミサキ、ミサキ・クリード。で、こっちが、シオンお兄ちゃんだよ。」
ミサキが紹介すると、女の子は、驚く事を言ってきた。
「ふーん、兄妹だったんだ。あたしはてっきり、カップルかなんかかと思ったよ。」
(カップル!?そんな風に見えるのか、俺たちって・・・)
「そんな風に見えるの?私たちって・・・」
ミサキも俺と同じことを考えていたみたいだった。
「うん、見えるよ。あ、そうそう、あたし達も自己紹介がまだだったね、
あたしは、マエネ、マエネ・ロセッティ、この、ピエロみたいな人が、バジルちゃんで、
あのお姉ちゃんみたいのが、カルツォーネちゃん、
こっちの大きな人がゴンゾーラちゃん、
あと・・・」
「私が、マエネの母のパンナコッタです。こっちが、夫のタルトレットです。」
「わしが、このロセッティ一座の座長のタルトレットぞな。」
(あのちっちゃい人、さっき話していたけど、座長だったなんて・・・)
「シオンです、よろしく。
・・・あ、そういえば、次の公演のことについて、話していたんですよね。」
俺は、マエネたちの自己紹介を聞いたあと、出て行く口実を言った。
「え、あ、うん。」
「それなら、俺たちがいても意味ないですよね。」
「そうだね、お兄ちゃん。」
ミサキも、答えた。
「じゃ、俺たちはこの辺で、部屋に戻ります。」
「えー、戻っちゃうの、もっと話したかったのに。」
「こら!スフレ、シオンさんたちは、疲れているんだ、仕方ないぞな。」
「ちぇ。」
「それでは・・・」
俺たちは、509号室を後にして、自分達の部屋に向かった。
部屋に戻って、ベッドに座ろうとすると、ミサキが倒れかかっていた。
すぐにミサキのところにいって支えた。
「大丈夫か、ミサキ?」
「ん・・・平気。」
「疲れてるんだよ。少し休んだ方がいい。」
「・・・うん。」
そう言って、俺は、ミサキを支えたまま、ベッドまで連れて行って、寝かした。
「ごめんね。」
「いいよ、お休み。」
「あのね・・・お兄ちゃん。」
「何?」
俺が、返事を返すと、ミサキは、少し間を空けて、お願いをしてきた。
「私が寝るまで、ここにいてね。・・・どっかいっちゃヤだよ。」
「ああ、ココにいるよ、だから、安心してお休み。」
「うん。」
しばらくして、ミサキが、眠ったのを確認して、一言言った。
「お休み・・・。」
(さて、俺はどうするか・・・)
考え込んでいると、眠たくなってきた。
「ふぁあ、考えてても仕方がないか・・・、俺も寝るかな。」
俺は、部屋の明かりを消すと、ベッドに横になって、しばらくすると、眠ってしまった。
(ここは・・・?
・・・ああ、そうか。地球が何ものかの攻撃を受けて・・・
そういえば、父さんたちは大丈夫だろうか、ホテルの近くにいたはずだけど・・・
ちゃんと避難しているのか・・・?)
目が覚めると、周りの風景に驚いたが、そういえば、と、思い出した。
(・・・3:52か。まだこんな時間なんだ―――。)
ふと、時計の方を見ると、3:52で少し驚いた。
プー、プー、プー
「な、何だ!?」
「お兄ちゃん・・・なぁに・・・この音?」
ミサキは、警告音で、起きたみたいだった。
「何かの連絡だと思うんだけど・・・」
放送が流れた。
『避難中の皆様に現在の状況についてお知らせします。
地球に対する先日の攻撃は、バーンによる奇襲攻撃であることが判明しました。』
(バーン?ディオンと交戦中の戦闘国家じゃないか!?
確かに以前連邦からの支援を断わったっていう話だけど、特に敵対してるってわけでもなかったはずじゃ・・・?)
『地球は第7深宇宙基地が防衛の任に当たっておりましたが、
バーンの奇襲攻撃は巧妙であり、基地は地球への侵入を許してしまいました。
ですが心配はいりません。その後、銀河連邦政府は各周辺宙域からスクランブルで救援のための艦艇を派遣しております。
只今の時点では未だにバーン軍を壊滅させるには至っておりませんが、
事態は急を要しますため、地球の一般市民の方々には救助艦によって第6深宇宙基地へと順次避難を開始していただくことになりました。
避難民の皆様方は慌てずにお近くの係員およびコンソールの指示に従って行動してください。』
俺達は、コンピューターの説明を黙って聞いていた。
「ミサキ、行くぞ。・・・・・・大丈夫か?」
「うん・・・平気。寝たら少しは楽になったから。」
「後少しの辛抱だ。第6深宇宙基地へ行けば、安全だから。」
「うん。」
ミサキの返事を貰ってから、俺は、部屋内にあるコンソールの方へ向かっていった。
「ねえ、お兄ちゃん。お父さんたちは、ちゃんと避難しているかなぁ・・・」
「ちょっと調べてみるか・・・コンピューター、ウイン・クリード、レミト・クリードの現在位置を教えてくれ。」
『・・・・・・指定の人間は現在の位置を特定できません。』
「それは・・・どういう意味だ?」
『ウイン・クリード、レミト・クリードの両名は宇宙歴769‐12131923に位置を消失しています。』
「消失!?その後は?」
俺は驚いたが、さらに、質問を出した。
『・・・・・・不明です。現在情報系統が混乱し、不確定情報が大量に発生しているため、確定は不可能な状況にあります。』
「そんな・・・・・・くそっ!」
「・・・お兄ちゃん?」
「いや、何でもないよ、行くぞ。」
部屋を出て、転送装置の方へ向かっていった。
転送部屋に近付くと、係員の声が聞こえた。
「連邦艦への転送はこちらで行います。定員には十分な余裕がありますからどうか落ち着いてください。」
係員が、転送装置を指さしながら、言っていた。
「転送装置に入るぞ。」
「うん」
そういうと、転送装置に入っていった。
ポワン
ポワン
転送装置から出てくると、輸送艦の中にいた係員の声が聞こえてきた。
「ようこそ。大変だったでしょう。この艦(ふね)は連邦輸送艦 GFSS‐12372ヘルアです。
この後すぐに第6深宇宙基地に向けて出発するはずです。
この部屋を出て、まっすぐ通路に沿って進んでいくと、展望室に出ます。
そこで第6深宇宙基地へ到着するまでお待ちください。何、重力ワープですぐですから。」
俺は、係員に軽く頷くと、言われた展望室に向かっていった。
通路に出ると、俺は、周りを見回した。
「これが銀河連邦の輸送艦か・・・。」
通路を一通り見終わると、また、展望室に向かっていった。
展望室に入ると、ミサキが何かを指しながら聞いてきた。
「ねえ、お兄ちゃん、何かな・・・あれ?みんな何か見てるけど。」
「え?」
指さされた方を見ると、人が集まっていた。
「ホントだ・・・何だろ?モニターに何か映ってるのかな?」
「行ってみよ。」
「・・・そうだね。」
俺達が人ごみの方に向かっていくと、モニターが、目に入ってきた。
「これは・・・!?」
そこには、地球の前で、連邦とバーンとの、戦いが、モニターに映し出されていた。
「地球が・・・・。」
「ひどい・・・。」
『当艦はまもなく戦闘宙域を離脱するため、重力ワープに入ります。
繰り返します。当艦はまもなく戦闘宙域を離脱するため、重力ワープに入ります。
避難民の方々は衝撃に備えてください。』
艦内放送が流れると、モニターの前に集まっている人たちは、展望室の椅子に、座っていった。
「・・・俺たちも座ろう。」
「・・・うん。」
俺たちが座ると、少し大きな衝撃が走った。
そのまま、何も話さず待っていると、ミサキは、眠ってしまったようだ。
10分ぐらいたったところで俺が少し動くと、ミサキが見を覚ましたようだった。
「う・・・うん。お兄ちゃん・・・?」
「あ、起こしちゃったな、ごめん。」
「ううん、平気。・・・今、どの辺りなのかな?」
「どうだろ?まだ詳しい放送とかは入ってないけど・・・。」
「係の人に聞いてみる?」
「そうだね・・・そうしよう。」
そう言って立って、係の人に聞いてみようとしたが、モニターに、バーンの戦闘艦が映し出されていた。
(あれが、バーンの戦闘艦か!?
あんなのに攻撃されたら、この救助艦のシールドじゃひとたまりもないぞ!)
「お兄ちゃん・・・。」
『艦長より、全乗員へ。当艦は現在、バーン戦闘艦により攻撃を受けています。
既に重力ワープは無効化され、逃走は難しい状況にあると言わざるを得ません。
全てのパワーをシールドにまわしているため、何とか持ちこたえていますが、
このままでは轟沈も避けられないでしょう。
出来れば我々の手で、皆様を第6深宇宙基地までお送りしたかったのですが、それも適わないようです。
避難民の皆様には、当艦に備え付けている脱出ポットで脱出していただきます。
慌てず、騒がず、お近くの係員の指示に従い、搭乗を開始して下さい。・・・・・・幸運を。以上。』
ドカーン!
「きゃっ!」
すぐ後ろが、攻撃されたみたいだった。
「直撃したのか!?」
「皆さん、急いで脱出してください!脱出ポットはこの上のフロアの格納庫に収納されています!
ポットは人数分ありますので慌てないで!」
係員が、大きな声を出して、案内をしているみたいだ。
「ミサキ、行くぞ!」
「う、うん!」
俺たちは、急いで、脱出ポットへ向かっていった。
その途中で、ロセッティ一座が、集まっていた。
「どうしたんですか。」
俺が聞くと、マエネが答えた。
「あたしは、みんなと一緒に最後に行くんだ。
離れ離れになんか絶対になりたくないから・・・。」
「そうですか・・・、じゃあ、俺らは先にいってますので、後でまた会いましょう!」
ロセッティ一座との会話の後、俺らは、脱出ポットに向かっていった。
脱出部屋に入って、残っているポットを探すと、少し探すだけで、見つかった。
「よし、このポットはまだ空いてるな。・・・ミサキ、早く乗るんだ。時間がない。」
「やだ・・・私、怖い。」
「大丈夫だよ。」
「・・・・・・でも。」
「なに、すぐに連邦の艦艇が回収してくれる。第6深宇宙基地で会えるよ。な?だから早く。」
「・・・うん。後でね・・・約束だよ。」
「ああ、約束だ。」
ミサキは頷くと、脱出ポットに入っていった。
残りのポットを探そうとすると、係員の声が聞こえてきた。
「こっちです、急いでください!この中にはまだポットが残っています!」
「は、はい!」
慌てて返事をすると、言われた脱出ポットに向かっていった。
(急がなきゃ・・・。)
脱出ポットに入ると、コンピューターの声が聞こえてきた。
『起動完了・・・10秒後に離間します。』
10秒後大きな揺れとともに離間すると、この、戦乱をまず抜けるために加速されていた。
しばらくすると、コンピューターの声が聞こえてきた。
『救難信号の設定は終了しました。』
「分かった。」
『またヒューマノイドが生息可能な惑星の検索も終了しました。』
「どこだ?」
『ココから0,5光年程度の距離にあるヴァンガード3号星です。
地軸の傾きが35度。この為、季節変化による寒暖の差が激しい惑星です。ヒューマノイドタイプの生命体の存在も確認されています。連邦区分では未開惑星に該当しており、確認されている文明レベルは地球16世紀程度とあります。未開惑星保護条約を確認しますか?』
「たのむ。」
『未開惑星保護条約は未だに文明の発達していない惑星を保護するために作られた条約です。
ある一定以上のレベルに達していない文明に対する接触を連邦法により厳しく制限しています。』
コンピューターは、未開惑星保護条約を、説明してくれた。
『これは高レベルの文明の接触は、その星の歴史そのものに大きく干渉してしまう可能性が高いためであり、
銀河連邦に所属している人物及び勢力はたとえ誰であろうとも、
明確なる生命の危機に瀕した場合を除いて、この条約を守ることが義務付けられています。
この条約は銀河連邦内における最も重要な決まりごとの一つであり、
緊急時における一般人の行動指針にもなっています。
違反者は何人であれ、連邦評議会による裁判にかけられることになります。』
軽く頷くと、コンピューターにもう一つ質問した。
「あと、どれくらいで着く?」
『現在の速度、すなわちワープ6で移動した場合、144時間で到着すると推察できます。』
「ヴァンガード3号星に向かうに当たって何か問題はあるか?エネルギー残量は?」
『問題ありません。エネルギー及び乗務員の食料に関しても十分な量が搭載されています。』
「わかった。しばらく休む。何かあったら知らせてくれ。」
『了解いたしました。』