第九章 潜入 
〜脅威の町ダラス〜



『朝早くて悪いんだけど、あと、3分でブリッジに来てちょうだい。』
俺が起きると、館内放送が流れていた。
「なんだ?こんな朝早くに・・・」
時計を見ると、まだ、5時だった。
「でも、呼び出しだからな。」
俺は、急いで着替えて、ブリッジに向かった。



「悪いわね、こんな早くに。」
「別にいいよ。」
「それならいいんだけど。」
「3分って言ってたけど、どうしてそんな に急ぐんだ?別に、昼ごろ行っても―――」
「早いほうがいいわ。早いほうが、見張りは少ないし、そのおかげで、街に紛れ込むことができるからね。」
「ふーん、でも、まだ2名ほど来てないけど・・・」
「ルナとミサキね、あの二人は何やってるんだか・・・」
「すみません。遅れました。」
「ルナ義兄遅い!」
「すまん。」
「いつも俺に言うくせに。」
「悪か―――。」
「遅れてすみません!」
「ミサキも遅い!」
「ごめんなさい。」
「まぁ、いいわ。それよりも、今日からが、正念場よ。気合入れてくわよ!」
「はい!」
「あぁ。」
「うん。」
「よし、じゃあ、行くわよ。ミラージュ、転送の準備を。」
「了解」
「いよいよ、敵の本拠地か・・・」
「緊張すんなよ。いつもどうりでいいんだ。」
「そうだな・・・」
俺達4人は、転送室に向かっていった。



「ミラージュ、お願い。」
『了解』
ラナが声をかけると、俺たちはヴァンガードへと転送されていった。



外はまだ暗く、みんなの顔をよく見ることはできなかった。
「ここから、少し歩くわよ。」
「わかった。」
俺達は、しばらく歩き続けた。少し経つと、遠くのほうに、光が見えてきた。
「あれよ。」
「あれが・・・ダラス・・・」
「敵の本拠地ってわけだろ。」
「そうだ。」
「・・・行くぞ。」
「え、あ、あぁ。」
俺達は、また進み始めた。進むと同時に、遠くに見えていた光がどんどん大きくなっていった。



ダラスの前まで行くと、ルナが沈黙を破った。
「でっけー。」
「門だけで、30メートルぐらいあるぞ。」
「これが、ダラス・・・」
「入るわよ。」
「うん。」
俺達は、大きな門の中に入っていった。



「すごい・・・」
「これは・・・俺たちの文明レベルを・・・超えてるぞ・・・」
「どういうこと?」
「さぁな、とにかく、魔界のやつらが関係してることには変わりないんだ。」
「そう、だね。」
「よし、それじゃあ、行くぞ!」
「・・・ねぇ、どうするの?これから・・・こんなやつらに囲まれてて。」
俺たちが、行こうとすると、そこには、30人ほどの、人が取り囲んでいた。
「そうだな・・・いつの間にか囲まれちゃってたもんな・・・」
「やっぱり、」
「ここは。」
「強行突―――。」
「待って!」
「えっ?」
「おとなしく捕まりましょ。」
「何で!」
「いいから。」
俺達は、入ってすぐ捕まってしまった。



「どうすんだよ、これから!」
「敵の本拠地にちゃんと入れたんだから。」
「でも、こんな風に、手足を鎖でつながれてたらどうすることもできないだろ。」
「まぁ、それもそうね。」
(ねぇ、ヴァスター。)
『なんだ?』
(前、ヴァスターの能力、戦闘って話してたよね。)
『あぁ、それがどうかしたのか?』
(この鎖、壊せる?)
『やろうと思えば出来ん事はないが・・・』
(じゃあ、やって。)
『今の俺にはどうしようもないんだ。』
(何で!)
『お前が、鎖でつながれているいじょう、一つの方法はムリだ。』
(じゃあ、もう一つの方法を・・・)
『これは、失敗したら、お前の力はなくなってしまうぞ。』
(それでも、みんなの命を救うことが出来るのが、それしか方法がないのなら。)
『・・・これの、成功率は、お前の力があるかどうかによる。』
(それは、どういうの?)
『空の剣を作り出すんだ。』
(くうのつるぎ?)
『あぁ、空気の剣だ。本当の名は、無量新月。
これが、できれば、今よりもっと強くなる。だけど、失敗すれば、おまえの力は、長い間失われる。』
(成功させる!だから、そのやり方を・・・)
『わかったよ。・・・まず、剣の形を想像するんだ。
そのあと、俺がお前に力を注いでやるから、それを利用して、更に強く、剣をイメージすると、できる。』
(やってみるよ。まずは、剣の形を・・・)
『行くぞ!』
(力がみなぎってくる感じだ。)
『剣を想像するんだ!』
(わかってる。剣のイメージ・・・)
「できた!」
俺の手には、透明のようだが、一応見える剣があった。
「な、何急に叫んでるんだ!?シオン。」
「お兄ちゃん!その右手に持ってる剣は!?」
「ちょっとまってて。」
『まさか、本当に作れるとは・・・』
俺は、空の剣を使って、鎖を切った。
「お、切れ味抜群じゃん。」
「どうやってそんなものを・・・」
「そんな事やり早く行くぞ!」
俺は、全員分の鎖を切り、扉も切った。
「すごいね、それ。」
「そんなことよりも、早く行くわよ。」
「あぁ。」
俺たちは、切れた扉を出て、連れてこられた道を戻って行った。
「シオン!大丈夫なの?この道で。」
「あぁ、この道でいいよ。」
「心配ないよ。お兄ちゃん、ああ見えても、記憶力と頭だけはいいから。」
「だけ、って言うのは余分だ。」
「話してる暇あったら走りなさい!」
「はい!」
俺たちは、閉じ込められた、ところから出ようとしたが、俺は、入り口で止まった。
「どうしたんだ?シオン。」
「見張りがたくさんいる。」
「強行突破か?」
「それは、また捕まるわ。」
「じゃあ、どうするんだ?」
「・・・まず、武器を取り返してから、説明するわ。」
「何処に武器はあるんだ?」
「こっちよ。」
「さすが探索能力・・・」
「なんか言った?」
「いえ、なにも。」
「行くわよ。」
俺たちは、ラナの後をついて行った。



「わっと。」
突然ラナが立ち止まったので、俺は驚いて声を出してしまった。
「ん?何だ?」
(やっべ、気付かれちまった。)
「どうするんだよ。」
「仕方ないわ、使いたくなかったんだけど・・・、クロウズ!」
(何を始める気だ?)
『さっきのと似たようなやつだよ。』
ルナの手から光が溢れ、光が消えたと思ったら、手には、銃を持っていた。
「来たぞ。」
「ん!お前たちは!」
「食らえ!」
小さな銃声がして、男は倒れた。
「すごい威力だな。」
「あんたのもでしょ。」
「とにかく、あの武器を取らないと。」
「あぁ、そうだったわね。」
「早く取ってきて。」
「あぁ。」
俺たちは、急いで、自分の武器を取った。
「行くわよ。」
「うん。」
俺たちは、入り口に戻っていった。



「なぁ、ラナ、敵の数はどれほどいる?」
「ちょっと、待ってて・・・、敵の数は・・・この町には、300ほどしかいないわ。」
「本当か?」
「えぇ、どこにも・・・」
「どうしたんだ?」
途中で、言葉が詰まったラナに疑問を思った。
「地下に・・・えっ!3万!多すぎるわ。」
「3万ってどういうことだ?」
「この町の地下に、大きな力を持ったものと、その周りに、3万ほどのモンスターが居るわ。」
「大きな力を持ったものって言うのが、魔王のことだな。」
俺が、分かったことを伝えた。
「多分ね。」
「じゃあ、そこに行こう。」
「でも、どうやって?」
「それは、一度戻ってから考えたほうがいいよ。
こんなところにいたら、いつ見つかるか分からないからね。」
「そうだな。一度戻って、作戦を練り直そう。」
「うん。」
「ミラージュ。回収して。」
『了解』
しばらくして、俺たちは、転送されて行った。



「何か作戦はある?」
「あるよ。」
俺は、作戦はあると告げた。
「どんなの?」
「ブリッジに行ってから話すよ。」
俺たちは、ブリッジに向かって行った。



「まずは、ダラスの地図を書かないといけないんだけど、ちょっと時間をくれないか?」
「別にかまわないけど、覚えてるの?」
「あぁ、一度見たものは、ほとんど忘れない。」
「ふーん。」
「ダラスで、捕まるとき、地図があったから、それを見て覚えた。」
「それで書けるわけね」
俺は、ラナに大きな紙と、ペンを貰った。
「よし書くか。」
俺は、しばらく地図を書きながら、その場その場を思い出して、作戦まで考えていた。



「よし、できた!」
5、6分で地図が出来た。
「ほんと?」
「あぁ。」
「それで、何処が、地下へ通じる場所なんだ?」
「ここさ。」
俺は、地図の一点を指しながら、そう言った。
「ここ?」
「あぁ、そうだ。」
「こんな、何もない、ただの噴水がある広場じゃないか。」
「そうだ。だけどな、ここには、結界が貼ってあって、結界がなかったら、地下へ向かう、階段が見えるんだが、
結界のおかげで、階段が噴水に見えるわけだ。」
「そんなことなんで分かるんだよ。」
「捕まったときに、噴水を見たら、微妙に、ゆがんで見えたからな。たぶんそこだと思うぜ。」
「そうね、少しでも魔力があると、結界が張ってあるところがゆがんで見えたりもするものよ。
多分、そこが、地下へ通じる階段の場所だと思うわ。」
「ラナがそう言うんだから、間違いないだろうな。」
「なら、俺が言ったことは信じないのかよ・・・」
俺は、素朴に思ったことをボソッと口にした。
「じゃあ、今度こそ行くわよ。」
「待って、闇雲に突っ込んだって、さっきみたいに捕まるのが落ちだよ。」
「それなら、どうすれば。」
「ちゃんと考えてあるよ。」
「どうやるんだ?」
「簡単だよ。」
「単に、噴水の前に、転送すればいいんだから。」
「それは、そぐに捕まってしまうって、自分で言ってたじゃない。」
「大丈夫だよ。ダラスの文明は、俺たちより遥かに凄い文明を持ってる。
だから、転送装置は、あるんだよ。」
「そうか!そういえば、急に人が現れたときもあったぞ。」
「噴水の前に転送して、俺たちはすぐに入る、ばれたとしても、階段まで入ってしまえば、あっちも気付かないからな。」
「よし、それで決定だな。」
「じゃあ、行くわよ。」
「うん。」
「あぁ。」
「ミラージュ、よろしく。」
「はい。」
「転送室に行くわよ。」
「そうだな、急がないと、夜になっちまう。」
「夜は、モンスターのほうが有利だからな。」
俺たちは、転送室に向かって行った。



「ミラージュ、噴水の近くにね。」
『了解。』
「転送されたら、すぐに、噴水の中に入るのよ。」
「分かってるって。」
俺がそういった瞬間、転送された。



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