第二章 ヴァンガード不時着 
    〜ミナのオルゴール(1)〜



6日後

『ヴァンガード3号星引力圏内に入ります。乗員は衝撃に備えてください。』
コンピューターの話の後強い衝撃があったが、それも少しで終わった。
墜落はしたが、艦内は安全だった。
「よっ・・・と。」
脱出ポットを降りて、辺りを見回した。
(ここがヴァンガード3号星か・・・。)
座り込んでから、もう一度考えた。
(未だに通信がないって事は、救助まで、何 日かかるんだろうな。)
ポケットの中から、クォッドスキャナーを出して、再度考えた。
(未開惑星・・・ってことは、多少の危険は覚悟しとかないと。)
ビィ
(ん?クォッドスキャナーに反応があるな。時速40kmか。
この速度で動いてるってコトは野生動物かな?凶暴な生き物じゃなければいいんだけど・・・。
万が一のことを考えてレプリケーターで護身用の武器を作っておいた方がいいかもな。)
一度立って、脱出ポットにあるレプリケーターに向かっていった。
(この星の文明レベルに合わせるとすると、刀剣類に擬態させておくのが一番かな。
未開惑星保護条約で捕まりたくないし・・・。)
設定し終わると、隣に剣が出てきた。
(幸い、ファイトシュミレーターでこのテの武器の扱いには慣れてるし。
世の中、何が幸いするのか分からないよな。
最も、こいつを使わないですめば一番いいんだろうけど。)
剣を手にとって一度振ってみた。
(・・・うん、いい感じだ。)
空のほうを見ると、もうすぐ日が沈みそうだった。
(安全なところがあればいいんだけどな・・・
ん?これは?何かあるな。
もう少し分析範囲を拡大してみるか。
・・・人型生物の反応があるな。この反応の数からすると村落かも・・・。)
クォッドスキャナーで確かめると、村らしきものが映っていた
(今から歩けば日暮れまでには何とかたどり着けそうだけど・・・。)
「行ってみるか。未開惑星保護条約には抵触するけど、
この程度の人数への二次接触なら、緊急回避として認めてもらえるだろうし。」
そういって、村落らしいところに向かっていった。



村落に着くと、もう日が、落ちかけていた。
「ようやく、着いた・・・。はは・・・思ったより、遠かったな。
スキャナー上だと・・・・・・すぐ近くに見えたのに・・・」
俺は、そのまま、疲れて倒れてしまった。



俺が起きると、見たこともないところで寝ていたみたいだった。
「ここは?」
そう言って、周りを見回した。
(そうか、俺は辺境惑星に・・・。誰かが助けてくれたのか?)
「・・・気がつきましたか?」
声のする方を見るとそこには、耳が少し大きく尖った男の子が立っていた。
「君が助けてくれたのかい?」
「いいえ、妹のミナです。ミナがあなたを村の入口で見つけました。」
男の子がそう言うと、男の子の後ろから女の子が出てきた。
「君が、・・・ミナちゃん?」
「うん。」
「助けてくれてありがと。」
ミナにそう言うと、男の子に聞いてみた。
「俺はシオン、君は?」
「僕は、ノエルです。
・・・シオンさん、あなたはこの村の者ではない用ですが、何処から来たのですか?」
いきなり聞いてきたので驚いたが、未開惑星保護条約があるので、ホントのことは言えない。
「えっと、俺は・・・」
俺が考えていると、ミナの姿がなかった。
「まさか、ノー―――」
ちょっと戸惑っていると、ノエルが、何かを言おうとしていたが言わなかったみたいだ。
「いや、何でもないです。・・・気にしないで下さい。」
(気になるんだけどなぁ)
しばらく沈黙が続いたが、ミナが沈黙を破った。
「お兄ちゃん!ミナの・・・ミナのオルゴールが・・・。」
沈黙を破ったかと思えば、ミナは、泣きながら、ノエルに抱きついていた。
手にはしっかりとオルゴールを持っていた。
「オルゴールがどうしたんだい?ミナ。」
ノエルがミナの頭を撫でながら、訊いていた。
「お母さんからね・・・グスッ・・・貰ったね
・・・オルゴールがね・・・鳴らなくなっちゃったぁ・・・」
「・・・大丈夫だよ、ミナ、ちょっと遠いけど、町まで行けば、直せるからね。」
(オルゴールか・・・)
「ミナちゃん、ちょっとそのオルゴール見せてくれる?」
えっ!?っという顔をしていたが、しばらくしたら返事をくれた。
「・・・うん。」
ミナが返事をすると、オルゴールをこっちに持ってきてくれた。
「はい。」
ミナが渡してくれると、俺は、オルゴールを少し調べてみた。
(これは!?・・・この星の文明レベルじゃ、とうてい出来るものじゃないぞ!
でも、ノエルは町で直せるって言ったよな。どういう事だ?)
「ねえ、ノエル。町って言ったけど、町まで歩いてどのくらいかかるか分かるかい?」
「・・・多分、4、5日かかると思います。」
(4、5日か・・・。それなら、助けてもらった御礼もあるし、
これぐらい、脱出ポットのパーツを使えば、直せるから、ちょっと助けてやるかな。)
「この部品が悪いんだけど・・・、これなら、俺に心当たりがあるんだ。
助けてくれた御礼の代わりに、オルゴール直して、あげるよ。」
「えっ!?本当ですか?」
ノエルは、驚きが隠せないみたいだ。
「あぁ。でも、村の外に出ないといけないから、ちょっと、俺の武器を返してもらえるかな?」
「はい。・・・ついてきて下さい。」
と、いうと扉の方へ、歩いて行った。
俺は、ベッドから降り、ミナにオルゴールを手渡すと、ノエルの後をついていった。



ノエルが、立ち止まると、椅子の上に上り、手を伸ばして、棚の上から、剣を取った。
「どうぞ。」
ノエルから、剣を受け取った。扉から、ミナが、こっちに来るのが目に入った。
「ありがとう。じゃあ、明日までには戻るよ。」
ミナの方を向くと、俺は、もう一度声を掛けた。
ミナの顔は、もう泣くのを止めていたみたいだった。
「ミナちゃん、明日までには、このオルゴールの音色が聞けるから、それまでまっててね。」
ミナは、コクンと頷いた。俺は手を振って返し、ノエルの家を後にした。
(じゃ、明日までには戻らないといけないから、急がないとな。)
村を出ると、脱出ポットに向かっていった。



脱出ポットに近付くと、遠くからでも、ポットの部品がないコトに気付いた。
「ちょっと待てよ、おい。なんで部品がないんだ!?」
誰かに訴えるように言ったが、もちろん、そこには誰もいない。
脱出ポットの近くまで言ってよく部品を見てみた。
(レプリケーターもなくなってる。それに、メインエンジンまで、まだまだたくさんある。
・・・あの村の住人は、こんな部品、ガラクタとしか思っていないはずなのに・・・)
「よし、もう一度、村に戻ってみるか・・・」
そう言って、村のほうに戻っていった。



村に着くと、もう空は、暗かった。
「ノエルの家に行って、ちょっと、事情を説明するか・・・」
ノエルの家の前につくと、中から、ミナの泣き声が聞こえた。
急いで家の中に入ると、そこは、荒れ放題になっていた。
「ミナちゃん、どうしたんだい?」
ミナの方に近付き事情を聞いてみた。
「お兄ちゃんがね・・・ノートンってヤツにね・・・連れていかれちゃったぁ。」
泣きながら、ミナはそう答えた。
(ノートン?誰だ、そいつは。たしか、ノエルもノーとか何とか言ってたな。)
「ミナちゃん、ノートンは、どこにいるか知らない?」
俺がきくと、ミナは、首を横に振った。
(知らないか・・・)
「大丈夫だよ、俺が、ノエルを助けてあげるからね、泣かないで待っててね。」
ミナを、慰め、ノエルの家を後にした。
(助ける、ったって、居場所がわからんとな・・・)
俺が考え込んでいると、近くから、気になる話が聞けた。
「・・・の家の・・・ノエル・・・ノートンの・・・アジト
・・・連れてい・・・たんだそうですよ。」
近くにいる人から切れ切れだったが、ちゃんと、『ノエル』『ノートン』と、聞こえた。
詳しく聞こうと、近くの人にいろいろと聞いてみた。
「すみません。
ノエルが連れて行かれた、ノートンのアジトについて詳しく聞かしてもらえませんか?」
俺が聞くと、いろいろと教えてくれた。
ノートンは、2ヶ月ぐらい前に最初に現れて、この村を襲った事、
3日ごとに、村を襲いに来る事、
襲いに来ると、村の食料や村人をさらう事、
村人がノートンに刃向かってアジトに攻め入ったが、それ以降帰ってこない事、
攻め入ったほとんどの人が、次に来る時ノートン側に付いている事など、いろいろ聞けた。
「あと、一つ聞きたいんですが、ノートンのアジトの場所を教えてくれませんか?」
最後に聞くと、村人は驚いていたが、しばらくして、場所を教えてくれた。
「ありがとうございました。」
村人にお礼をいい、村を後にした。
(ノートンのアジトは、村の外の森の途中にある、遺跡を越えたところにあるって言われてもなぁ。
その遺跡が何処・・・あっ!)
俺が聞いた話で考え込みながら歩いていると、すぐ横に遺跡が見えたので、驚いて立ち止まった。
「あれだよな、多分。・・・よし、いくか。」
遺跡に向かって行った。
(ここみたいだな。)
周りを見ると、崩れた壁があったり、壁には草が生えていたりと荒れ果てていた。
さらに、遺跡には、ノートンの部下の村人が見回りとして立っていた。
(村人だから・・・傷付ける訳にはいかないしな。
どうするか・・・見つからないように行くかな・・・)
俺は、身を低く保ち、木の影を進んで行った。
(コレ、けっこう疲れるな・・・)
疲れながらも進んで行った。



(あれは?)
俺は、人だかりを見つけた。近づいていくと、そのなかにノートンがいるのが分かった。
背が村人より高く、金髪で近代の服を着ている。
(あれがノートンか・・・俺と似たような服を着てるけど、現代の文明レベルもあるというのか?)
俺が考え込んだあと見上げると、ノートンたちがいなくなっていた。
「くそ!見失ったか!」
俺は慌てて飛び出すと、周りには、ノートンの部下がたくさんいた。
「!?囲まれていたか・・・しかたない。」
俺が剣を構えると、遠くから、銃声がした。
足元に、銃で撃たれた跡が残っていた。銃はノートンが持っているみたいだった。
「動くなよ。動くとお前の命はないぜ。ん?」
ノートンは俺を見て言葉を切った。しばらくして言葉が出てきた。
「そうか、前か。」
「何がだよ。」
「お前だろ脱出ポットみたいな高価な物に乗ってきたのは。」
(こいつ、脱出ポットのことを知ってるのか!?)
「お前、この星のものじゃないな!」
「だったらなんなんだ。え?」
ノートンの言葉の後、ノートンの部下に頭を殴られて気を失ってしまった。



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