第十章 残された希望
〜世界が終わるその瞬間〜
「噴水へ」
俺たちが、噴水の前で戸惑っていると、ラナが、言葉で俺たちを噴水の中に導いた。
「あなたたち、遅すぎるわよ。」
「すまん。」
「ま、敵の本拠地でもめてても仕方ないからね。」
「ん?ちょっと待って・・・」
ミサキが階段に入って、言ってきた。
「どうした?」
「足音が・・・」
「モンスターか?」
「わかんないよ。」
「とにかく進むわよ。」
「いいのかよ、そんなんで・・・」
「敵がこっちに来てるって言うのに。」
「いいから行くよ。」
「・・・わかったよ。」
足音はどんどん近付いてきたが、俺たちも、どんどん下に下りて行った。
「来る!」
俺たちは全員、武器を構えた。
「オマエラ、ナニモノダ。」
「人間様だよ。」
「おい、ルナ調子に乗るな。」
「オマエラ、シンニュウシャ、シンニュウシャハ、ハイジョスル。」
モンスターは、喋り終わると、攻撃してきた。
「うわ、危ないなぁ。」
「とにかく、こいつらを倒すわよ。」
「あぁ。」
「みんな、どいて!」
「わかった。」
「光よ、この者たちを、一掃せよ!ライトニング・バウンド!」
ミサキが唱えると、呪文は、俺たちがよけたところを直線に進んで行った。
「おぉ、凄い威力だな。」
「30体が消えたぞ。」
「この呪文、直線にしか、飛んでいかないけど。威力はあるの。」
「先に進むわよ。」
「あぁ。」
「俺たちは、広い所じゃないと、上手く戦えないからな。」
「そうだね。」
「ラナさん先にいっちゃいましたよ。」
「えっ?」
「ちょっと待とうよ。」
俺たちは、急いでラナに追いつこうとした。
「あれ?一体何処まで行ったんだ?」
しばらく経っても、ラナは見えてこなかった。
「さぁな、俺たちもそんなにも話していなかったんだが。」
「お兄ちゃんたちが悪いんだからね。」
「悪い。」
「とにかく、ラナに追いつかないと、敵の本拠地で、一人でいるのは危険だ。」
「あぁ、探すぞ。」
「ホントに、何処まで行ったんだよ。」
「知るかよ。」
「ちょっと待って、あそこに、光があるわ。」
ミサキは、階段の下のほうを指した。
「よし、まずはそこへ行こう。」
「あぁ。」
光に近付くにつれ、気味の悪い声が聞こえてきた。
「もうすぐだ・・・、もうすぐで扉が開く・・・。」
「なんだ、この気味の悪い声は。」
「魔王の声か?」
「多分ね。」
「・・・こんなところで待っていたって仕方ない。ラナは下にいるかもしれないからな。」
「そうだな。」
「行くぞ。」
「うん。」
俺たちは、光の中に向かって行った。
(ここは・・・)
「地下に、こんなところがあるなんて。」
「広い・・・」
「あれは!」
「魔王だな。」
「こんなところから見ても、俺たちよりでかく見える。」
「おかしい。」
「何がだ。」
「ラナの話じゃ、3万のモンスターがいるって聞いたんだが・・・」
「いないじゃないか。」
「間違っていたんじゃないの?」
「こんなところに立ってるだけじゃ、意味がない。いくぞ、シオン。」
「だけど、」
「ラナみたいに先に行くぞ。」
「ちょ、待てよ。」
ルナたちが先にいってしまったので、俺は慌ててルナの後をついて行った。
「さっきから、何かに見られてる気がする。」
「気のせいさ。」
「気のせいなんかじゃない。さっきから、どんどん数が増えてきている。」
「まさか。」
「多分、モンスターの大群だ。」
「どんぐらい居やがる?」
「ざっと1万は超えてるよ。しかも、囲まれてる。」
「俺たちを逃げられないようにするために、今まで出てこなかったのか。」
「来やがった。」
「ちょっと、多すぎじゃないか?」
「さぁな、でも、こいつらを倒さないと、先には進めないし、戻ることも不可能だ。」
「そうだな。」
「・・・構えろよ。」
「行くぞ!」
「おう。」
「呪文、行きます!
・・・炎の使者よ、この者たちを、炎の嵐で焼き尽くしたまえ・・・ファイアーストーム!」
炎の弾が、モンスターの頭上に出現した。
そのあと、炎の弾は急激に回転して、モンスターに向かって下りていって、700匹ほど吹っ飛ばした。
「俺たちも行くぞ!」
「わかってるよ。」
(ヴァスター!)
『分かっている。』
「無量新月!」
『イセリアル・ブラストも行くぞ。』
「あぁ。・・・受け入れよ・・・次なる生のための意味ある死を・・・
運命の輪廻には、何人たりとも逆らうことを知れ・・・
イセリアル・ブラスト!」
この前のときよりも、凄い威力があった。
『大丈夫か?』
(あぁ、なんとかな。)
イセリアル・ブラストで3000匹ほどぶっ飛ばせた。
「これでも、全然減らないぜ!」
「どうする?」
「やらなきゃ仕方ないだろ!」
「そうだな!」
「話してる暇あったら、倒してよ!」
(ヴァスター、何かいい方法ない?)
『私には無理だが、クロウズのあの技なら、2万ぐらいは、倒せる。』
(ラナがいないと、結局は出来ないのかよ!)
「ラナは、こんなときに何処行ったんだ!」
「私を呼んだ?」
「ラナ!」
「お前、いままで、何処に、うわっ。」
「少しでも気を抜くと殺されるわよ。」
「ラナさん、手伝ってください!」
「えぇ、分かってるわ。
・・・使いたくなかったんだけど・・・ヴァスターが、無を有に変える剣ならば、
クロウズは、有を無に変える剣、この有量円月には、これだけの数は、無に等しい。」
「なんだ?その円月剣は?」
「この円月剣は、普通のとは違うわ。
クロウズが作り出したこの円月剣は、1マイクロメートルの薄さでありながら、重さは、100キロを越す。」
「100キロ!そんなもんどうやって持ってるんだ?」
「魔力で浮かせてるんだよ。
それよりもみんな、何かに捕まっといたほうがいいわよ、死んじゃうから。」
「死んじゃう、ってお前何する気だ!」
「この円月剣に高速回転を加えてやると、光も飲み込む、重力の固まりになるんだ。」
「ちょっとまて、俺たちはモンスターと戦ってるんだぞ、何に捕まればいいんだよ!」
「じゃあ、がんばって踏ん張ってて。」
「ちょっとお前、待て、うわっ。」
「いくよ、・・・ストレイヤー・ヴォイド!」
ラナが、技を使うと、円月剣が回りだし、大きな黒い、渦を巻いた塊が出来てきた。
「あんなの、当たったらひとたまりもないぞ。」
ルナが言葉を発したときにはもう、直径2メートルぐらいになっていた。
「食らえ!」
ラナが黒い塊を更に大きくすると、俺たちは、その塊に吸い込まれそうになった。
「うわっ。」
「耐えろよ。」
「あぁ。」
モンスターは、それにどんどん吸い込まれていった。
塊がなくなりかけると、モンスターは、数匹しかいなかった。
「あと・・・たのんだわよ・・・」
ラナは、そう言うと、気を失ってしまった。
「あぁ、任せておけ。」
「こんだけだったら、俺一人でも大丈夫だから、お前らは先に行け。」
「・・・あぁ、頼んだ。」
「え、でも、ラナさんは?」
「大丈夫だ、俺がちゃんと護る。」
「ミサキ、行くぞ。」
「うん。」
俺たちは、ルナとラナを残して魔王のほうに向かって行った。
「でかい・・・」
「なんだ、お前たちは・・・、」
「俺たちは、お前を止めに来た!」
「ほう、そんな小さい身体で、我に勝てると思ってるのか?」
「思ってるね、お前を倒して、魔界の扉を閉めなきゃ、この世界が終わってしまうからな。」
「貴様らは、扉を閉めようとしているのか?」
「あぁ、そうだ。」
「この世界を、魔界に飲み込ませてたまるもんか!」
「我をとめることは出来ん。貴様らは、ここで死ぬのだ。」
「俺らは、負けない!この世界を終わらせるわけにはいけないんだ!」
「貴様らでは、我に、ダメージを与えることは出来ん。」
「それはどうかな。」
「なんだと。」
「無量新月!」
「それは!お前、天界の使者がいるな!」
「俺の中に入ってるのは、ヴァスターだ!」
「しかし、お前一人では、我は倒せん。」
「一人?」
「私もいるんだから。」
「そんな、小娘に何が出来る。」
「私には、紋章術があるわ。」
「紋章術など私には、利かぬわ!」
「やってみなくちゃ、分かんないだろ!ミサキ、一発、やってやれ!」
「うん!・・・氷の使者よ、その氷を持ってその者を凍らせたまえ・・・アイスロック!」
氷の塊が、魔王の頭上に現れ、しばらくすると、その氷は、魔王目掛けて落ちていった。
「ぐわっ、・・・おのれぇ、貴様ら、殺してくれる!」
魔王は、背中にあった大きな剣を取った。
「貴様らは、我が剣、命封剣に斬られるのだ。死ね!」
「わっ!」
魔王は、剣を、上から垂直に振り下ろした。
「すげぇ、威力だな。当たったら確実に、死んじまうぞ!」
「くらえ!」
「うわ!危なかった・・・」
「逃げてばっかじゃ、攻撃できないよ。」
「でもなぁ。」
「何を喋っている!」
「うわっ!危ないって言ってるだろ!」
(くそ・・・どうすれば・・・)
『無量新月で、攻撃するんだ。』
「攻撃するったって、あんなにも大きいと、何処を攻撃すればいいんだよ!」
『心臓を攻撃すればダメージを与えられる。』
「心臓って言ったって、どうやって攻撃するんだよ!」
『相手は、図体が、でかいだけだ。だから、間合いを詰めれば、攻撃できないはずだ。』
(はずだ、ってお前なぁ。)
「何をごちゃごちゃ言っておる!」
「おっと!危ない、危ない。」
「なに余裕こいてんのよ、おにいちゃん。」
「・・・ミサキ、お前にちょっと頼みがある。」
「何?」
「紋章術で、あいつを引き付けてくれ。」
「・・・わかった。」
「俺は、ルナを呼んでくる。」
「え、ちょっと、私一人!」
俺は、魔王を少しの間、ミサキに任した。
「ルナ義兄!」
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「大丈夫?」
「ギリギリだ・・・」
「じゃあ、無理か・・・。」
「そっちは片付いたのか?」
「いいや、今はミサキに任してある。」
「大丈夫なのか?ミサキに任して。」
「あぁ、それよりも頼みがあったんだけどその体じゃ・・・、そうだ!ミサキの紋章術で!」
「何だ?」
「ルナ義兄、少し歩ける?」
「あぁ、大丈夫だ。」
俺が、ラナを担いで、ミサキのほうに向かっていった。
ルナは、右足を引きずりながら、ミサキのほうに向かって行った。
「この者に、雷の鉄鎚を・・・サンダースピリット!」
俺たちが魔王に近付いて行くと、ミサキが呪文を唱えたときだった。
唱えた呪文は、魔王の頭上に黒い雲が現れ、数回、頭に雷が落ちた。
「ミサキ!呪文唱えた後で悪いんだが、ルナたちに、回復呪文かけてやってくれ。」
「魔王は?」
「俺が引き付ける。・・・ルナたちの回復が終わったら俺に伝えてくれ。」
「うん、わかった。」
「魔王!お前の相手は、俺だ!」
「貴様一人で何ができる!」
「俺一人じゃ何も出来んさ。だけどな、仲間と協力すればどんなものだったとしても乗り越えられるって、俺は信じてるぜ。」
「お前らが力を合わせたとしても、我を倒す事など出来ん!」
「お兄ちゃん!出来たよ!」
「サンキュー。」
「何をした・・・?」
「紋章術は、攻撃だけじゃないんだぜ。」
「シオン!俺たちは、もう戦えるぜ。」
「ラナもか?」
「えぇ、私も戦えるわ。」
「よし、ルナ義兄、魔王を引き付けてくれ。」
「俺がか!?」
「頼む。」
「・・・わかった。」
「ラナ、お前はさっきのやつ出来るか?」
「有量円月のこと?」
「あぁ。」
「あれは、もう無理だわ。」
「・・・なら、この前脱出のときに作った、銃は?」
「それは、出来るわ。」
「なら、あいつの顔を狙ってくれ。」
「わかったわ。」
「それともう一つ、頼みがある。」
「ミサキの紋章術で上がっても、たぶん心臓部分まで届かないと思う。
そのとき、ラナには、俺の背中を最大出力で撃って欲しい。」
「そんなことしたら、あなたまで・・・」
「それじゃないと、あいつに勝てないよ。」
「でも・・・」
「大丈夫だよ。俺は死なない。」
「・・・わかったわ。」
「まぁ、危なくなっても、ミサキがいるからな。」
「えぇ。」
「ミサキ、頼みがある。」
「なに?」
「風属性呪文で、俺を心臓部らへんまで、飛ばしてくれ。」
「お兄ちゃん、そこまで届くと思うの?」
「やってくれ。」
「・・・だけど、お兄ちゃんの体が持たないよ。」
「大丈夫だよ。俺は、死ねない。母さんに会うまでは・・・」
「お兄ちゃん・・・。」
「大丈夫だって、・・・頼むよ、ミサキ。」
「・・・わかった。」
ミサキは、俺の後ろに立ち、呪文を唱え始めた。
「・・・風の精霊よ・・・この者を、聖なる風で舞い上げよ・・・エアーストリーム!」
ミサキが唱えると、俺の周りに風が出てきた。
「うわー!」
俺の体が、突然浮かび上がった。浮かび上がったと思うと、俺は魔王のほうへ飛んでいった。
(くそ!このままじゃ!)
俺は、空中で体勢を整えた。
「ラナ!」
「えぇ!」
ラナが銃を構えて、俺に銃を向けて撃った。
すると、巨大な光線が銃口から出てきた。
「シオン!」
「うぉーーーー!」
剣を魔王に向け、光線で、スピードを上げ、そのまま魔王に向かっていった。
「イッケー!」
「倒せー!」
グサッ
魔王の左胸には、無量新月が刺さっていた。
「刺さった!」
「グォ・・・我を・・・止めたとしても・・・魔界の侵食は・・・止まらんぞ・・・」
魔王は、地面に倒れてそのまま、動かなくなった。
「・・・死んだのか?」
「たぶんね・・・」
「うわ!」
俺は、魔王が倒れた少し後に上から落ちた。
「シオン!」
「お兄ちゃん!」
ミサキたちが、俺に駆け寄ってきた。
「大丈夫?お兄ちゃん。」
「・・・・・・」
「おい、大丈夫か?」
(大丈夫じゃ・・・な・・・い)
「ミサキ、回復呪文を。」
「え、はい!」
ミサキは、紋章術を唱え始めた。
「光の精霊よ・・・この者に光の加護を・・・セイントヒーリング!」
「・・・・・・う、あぁ。」
「シオン!」
「気が付いた?」
「・・・あぁ。」
「大丈夫か?」
「何とかね。」
「一時は駄目かと思ったぜ・・・」
「ホント、もう死んじゃったのかと思ったよ。」
「まぁ、無事だったからいいとして、あんな無茶なことしないでよね。」
「あぁ、しないよ。」
「でもさぁ、魔王を倒したんだからいいじゃんか、これで、終わりだよね。」
「いや、違うと思う。」
「えぇ!何で!」
「魔王が最後に言い捨てた言葉、我を止めたとしても魔界の侵食は止まらない、って言葉、凄く気になる。」
「そうだわね。」
「あんな事、言うからまだ何かあるね。」
その時、大きな揺れが起きた。
「うわ!何だ?」
「地震?」
「・・・でも、普通の地震って、こんなにも長いかよ!」
「地震って、訳じゃなさそうだ。」
「どういうこ―――。」
「これは!」