ハミウリとスイカの伝説
ずいぶん古い時代のこと、タクラマカンのある所にセリムという名の老いた農民がいました。
ある年、セリム老人が作ったハミウリとスイカが、非常においしく熟れました。他の農作物も豊作でした。セリム老人はこのおいしいハミウリとスイカを自分だけ一人占めしないで、遠い所へ持って行き売って来ようと思い立ちました。それで、馬車にハミウリとスイカを満載して出発しました。
数日間進むと広い畑に出たので、人がいる所に近付いたのだと喜びました。夜になったので馬車を村はずれに止め、明日の朝早く出発することにしました。馬を放して自由にさせてやり、セリム老人は荷車の下で横になりました。
翌朝、セリム老人が目を覚ますと、馬が近くに見当たらず、方々探し回りました。しばらくして、麦畑の中で麦を荒らしている自分の馬を見つけました。セリム老人は大変なことをしてしまったことを恥じて、畑の所有者に弁償のつもりで、ハミウリとスイカを一個ずつ麦畑に置きました。
次の日、農民が麦畑を見回りに来ると、畑のちょうど真ん中が空っぽで白くなっていました。驚いた農民が近付いてみると、得体の知れない丸いものが二つ、畑の真ん中に座っていました。それらのどこが目、どこが口、どこが足だか分かりませんでした。
「こりゃ、大変だ。こいつら、怖ろしい生き物に違いないぞ。小さいくせに俺の大事な麦を食っちまいやがった。くっそー」
わーわー大騒ぎして仲間達を呼びました。みんなで麦畑に行くと、本当に畑の麦がなくなっていて、畑の真ん中に奇妙な生き物が二つ丸まって寝ていました。
「こいつら、俺達の麦を食い荒らしやがって。また起き出したら麦畑は食い尽くされるぞ。こいつらの寝てるうちにやっつけてしまおう」
農民達は持って来た棒切れで、その畑荒らしを叩き始めました。農民達から棒で叩かれたその奇妙な生き物は、真っ赤な血を流し、お腹の卵が方方へ散りました。
「あーあ、こいつらの血が俺達の土地を染めてしまいやがった。こいつらの卵は何て多いんだ。こいつらが生まれたら大変だぞ。俺達の農作物は全部食い尽くされて全滅させられるぞ。さあみんな、こてんぱんにやっつけてしまおう」
次の年、この村では大変なことが起きました。方々に散ってしまった、あの奇妙な生き物の卵から芽が出ました。花が咲いて実を結び始めました。そして、熟すると畑はその奇妙な生き物でいっぱいになりました。村人達はこの不思議な事件に驚き合いました。好奇心のある子供がその奇妙な生き物を割って食べてみると、とても甘くておいしかったので、村人は先を争ってこのおいしい奇妙な生き物を家に持って帰りました。
その後、村人達はこの奇妙な生き物が、ある正直者の農民が麦の弁償に置いて行った、ハミウリとスイカであることを知りました。 それで、この村の農民達は、とても甘くておいしいハミウリやスイカを作って商売を始めました。この村はとても有名な産地になりました。
泣き山伝説
むかし、クシャン(亀茲)王の妃が女の子を産みました。その女の子はシーリンと名付けられ、とても美しく成長しました。シーリンの美貌が評判になり、世界中に詩や歌になって広まりました。
ホータン国のパルファド王子もシーリン王女の噂を聞き、ぜひ会ってみたいと思い、クシャン国を目指して旅立ちました。
クシャン国王は、シーリン王女を妻に迎えたいと使者を送ってきた者達に、このような条件を出しました。
「前方に見えている山に千仏洞を造って完成させた者に娘のシーリン王女を嫁がせよう」
クシャン国王の条件を聞いて、諸国の王子や金持ちの息子達は、みんな失望し帰って行きました。
ホータン国のパルファド王子はクシャン国に到着してからこの条件を知り、必ずシーリン王女を妻にしてやる、と決心しました。
パルファド王子はホータン国で学んだ石工技術を使い、千仏洞を造り始めました。
シーリン王女はパルファド王子を一目見るなり好きになって、食べ物や飲み物を運んで上げました。
パルファド王子はとても苦労して九百九十九の洞窟を造り終え、最後の一つを造るのみとなりました。
ずっと前からシーリン王女を好きだった大臣の息子は、条件を満たすことができなかった腹いせに、魔法使いのおばあさんを使ってパルファドを殺させてしまいました。
パルファド王子の死の知らせはホータン国民をとても悲しませました。
悲しみに打ちひしがれたシーリン王女は、パルファド王子の後を追ってこの世と永久に別れました。
パルファドとシーリンの死を見た山は、耐えきれなくて涙を流しました。
今日もこの山の『悲しみの涙』は止まることなく流れ続けており、千仏洞のある山の麓は青々としたオアシスに変わってしまいました。
絨毯伝説
むかしむかし、ヨルンカシ河の側のある村に、クルバンという老人とギュラムというきれいな一人娘が住んでいました。父親はフェルトを作り、娘は桑の葉で蚕を養い、絹をバザールで売って暮らしていました。
ある年、ケリヤの王様が王宮を豪華に建てるため、国民に、 「コンロン山から玉を、森から木を切って持って来い」と命令しました。
人々は仕方なく王様の命令に従い、それぞれ山に向かって行きました。ある人達はこの重い労役から逃れるために、また首を斬られるのを怖れて、流れ者になってよその土地へ逃げ始めました。
長くはかからず王宮が完成しました。
次ぎに、王様は王宮を美しく飾るため、国民に、 「花柄模様のフェルトや色鮮やかな絨毯を織って来い」と命令しました。
この命令を受けたクルバンは、家に帰ってからどうしたものかと悩み沈んでいました。賢い娘、ギュラムは父を悲しみから救ってやろうと、自分の才能を活かし、色鮮やかな花模様の絨毯を織る決心をしました。
ギュラムは羊毛を紡いで毛糸にし、それを赤、緑、黄、黒などの色に染め上げると、自分で工夫したものを織り始めました。徹夜して休む暇なく織り続けましたが、まだ完成しませんでした。日夜、織り続けているギュラムの強い意志と働き者ぶりに感動した神様は、ギュラムを助けるため、天から仙人を送りました。
ある早朝、大きな馬にまたがり、顔から光を放った真っ白いヒゲの老人が、ギュラムの家の前にある小川の側に舞い降りました。その老人は目を眩ますような、すばらしく美しい絨毯を持っていました。
ちょうどその時、ギュラムは小川へ水をくみに出たところでした。
ギュラムはその老人を家に招き入れると、クルバンもそのお客を大歓迎しました。真っ白いヒゲの老人はお茶を飲みながら、ギュラムの織っているものを目に留めて、まだ織っていない所を助言しました。
賢いギュラムはこの老人がただ者ではないことが分かり、自分の師匠になってくれるようにとお願いしました。
早速、老人はギュラムに馬の背にある絨毯を取ってくるように命じました。ギュラムから絨毯を受け取った老人は、その絨毯を壁に掛けてギュラムに、
「娘よ。この絨毯を手本にして織りなさい。お前にわしの持ってる全ての技術を授けよう」と言って、教え始めました。
ギュラムは糸の紡ぎ方から始まって、染め方、乾かし方、織り方、そして織り上げてから仕上げまでの手順を一つずつ詳しく学びました。
「娘よ。お前はほんとに働き者だ。働き者は願いがかなう。わしの教えたことをしっかり覚えて、人々を幸せにして上げなさい。アーミン、アッラーフアクバル」
老人は別れを告げると、馬にまたがりギュラムの前から消えてしまいました。まるで夢の出来事のようなので、ギュラムはとても驚きました。
師匠の教えてくれたことをしっかり頭に入れて、新たに絨毯を織り始めました。二十八日間費やして、この世のものとは思えないくらいの、とてもすばらしい絨毯を織り上げました。つぼみが開いている花園そのもののような美しい大きな絨毯でした。
王様に献上するために、この絨毯をクルバンに渡しました。
王様はギュラムが織ったすばらしく美しい絨毯を見て大喜びしました。王妃や王宮の女達もその絨毯を鑑賞してほめたたえました。王様はほうびにたくさんの金、銀貨をクルバンにやろうとしましたが、クルバンはほうびを辞退し、
「国王陛下。この金、銀貨の代わりに、ヨルンカシ河畔住民の税金を三年間猶予して下さることを心からお願いいたします」と頼みました。
「大ばか者だなお前は。まあいい、お前の好きなようにしろ」と王様はにこにこしながらクルバンの願いに応えました。
ギュラムは仙人から学び習得した技術を、村の老若男女全員に教えました。人々はギュラムを深く尊敬し、『絨毯職人の祖』とたたえました。そして、ギュラムの名を永久に残そうと、絨毯をギュラムと名付けました。
それ以来、人々は絨毯のことをギラムと言っています。