昔、ある王様に美しい娘があった。その娘を嫁に欲しいと、たくさんの国から使者が来ても、娘は承諾しなかった。
娘が何を思っているのか分からない両親は、娘にどんな要求があるのかたずねた。
「特に条件はありません。誰でもいいから私に、一瞬の内に、貧乏人でありお金持ちであることを証明して見せて、私を敬服させれば、私はその人に嫁ぎます」と、娘は答えた。
王様は全ての住民に娘の条件通りに通達した。
定められた日、方々から人々がやって来て、王宮前の広場に集まった。
娘は、輿に乗っていた。
「では若者たちよ。集合しなさい。誰か一瞬の内に、貧乏人でありお金持ちであることを示せば、娘はその者に嫁がせる」と、王様が言った。
広場に集まっている人々の誰もが声も出せず、じっとしていた。
最後に、ある王子が出て来て、
「はい、私が見せましょう。私はある王子です。私には金銀が数限りなくあります。つまり、私のような金持ちは他にありません。それで、全ての財産を結納にやれば、私は貧乏人になります。どうですか、納得されましたか」と、得意げに言った。
娘は王子をバカにして笑い、
「不可能です」と、頭を振った。
そのようにして、人々は次から次と進み出て来ては自己紹介した。
ある者たちは、金持ちであることを示したが、貧乏人であることを示せなく、またある者たちは、貧乏人であることを示したが、金持ちであることを示せなかった。
娘は誰にも敬服しなかった。
最後に、粗末な服を着て肩にずだ袋を担いだ若者が、
「では、私が言いましょう」と、進み出て来て、ずだ袋を地面に置き、話し出した。
「私は今、貧乏人です。信じないなら調べてみればいいです。私には金や銀、持っている財産はありません。この有り様です。しかし、私は誰よりも金持ちです」
「何にもないなら、どう金持ちになれるんだ」と、王様が驚いてたずねた。
「待って下さい」と、若者は落ち着いて、ずだ袋から細々とした物を取り出して話しを続けた。
「これはヒゲ剃りです。私は散髪ができます。信じないなら来て下さい。髪の毛、ヒゲを整えて上げます。これは包丁です。私は料理ができます。どんな料理をご命じになっても今直ぐ作って上げられます。これはノコギリとカンナです。私は大工仕事ができます。壊れた戸や窓があれば見せて下さい。今直ぐ直して上げます。これはハサミとカナヅチです。私は鍛冶屋仕事ができます。王宮の全ての馬を連れて来て下さい。王様のお気に入るような蹄鉄をはめて上げます。これは墨汁瓶です。私は字が書けます。本があれば持って来て下さい。いろんな字体を使ってきれいに書き写して上げます。これらの職人仕事の全ては、私の尽きない財産です。私はこれらの職人仕事をして、いつも飢えることはありません。どこへ行こうとも花のように生活できます」
「その通りです」と、娘は嬉しさの余り叫んだ。
「本当の財産は金銀、財宝ではなく、職人仕事、知識です。あなたは一見、貧乏人のように見えます。しかし、実際はあなたは誰よりも裕福です。あなたに敬服しました」
それで、この王様の美しい娘は、職人青年に嫁いだ。