むかし、むかし、夏と秋の間で、こんな事があった。
ある池で長い間、たくさんのカエルたちが仲良く暮らし、この池で増え、夜は賑やかに音を奏で、歌舞をしていた。
ある日、カエルたちの何匹かが気勢を上げて、
「こんなに臭い池で暮らすのか、みんな。きれいで澄んだ水がある池へ移って行こうじゃないか」と騒いだ。
いくらかのカエルたちは彼らに賛成し、まるで池の臭いことをやっと気がついたかのように嫌悪し、口や鼻をふさいだ。いくらかは後々のことを考え躊躇した。いくらかは移ろうといった。いくらかは移らないといった。
それで、移るものたちと移らないものたちの間で争いが起こった。カエルたちは二つのグループに別れてしまった。
この池にある年取ったカエルがいた。彼はカエルたちの争いを聞くと、事の顛末を監視してしばらくの間、何も口出さなかった。
カエルたちは結論が出せず、終いにこの年取ったカエルに相談しに来た。
「お前たちは、いい匂いがしていて水が澄んでる新しい池へ移るつもりなのか」と、年取ったカエルが、移るというものたちにたずねた。
「そうです」
「お前たちはこの池が臭くて住めなくなってしまったのか」
「そうなってしまった」
「お前たちが移ろうとする池はここよりもいいのかね」
「当然、いいよ」
「新しい池へ移ってから、食べるのかね」
「おかしなことを聞くんだな。食べなくても生きられるのか。おじいさん、あんた頭がおかしくなったのとちがうのか」と、移るというものたちが笑いながらいった。
「待ってくれ」と、年取ったカエルが説明し始めた。
「あんたたちがいったように、食べなければ生きられないならば、あんたたちが新しい池に移ってから二日も経たない内に汚すだろう。その後、そこからも移ろうと騒ぐのだろうよ。問題はわしら自身にある。わしら自身が臭くて怠け者なら、あそこも直ぐに臭くする。わしらの先祖がここを住みかとした頃、この池もすごくきれいでいい匂いがしていて、水が澄んでいた。しかし、わしらは怠けて食うことしか知らなかった。働かなかった。わしらの池を随時、掃除しなかった。罪は池ではなく、わしら自身だ。『清潔から蜂蜜、不潔から病気』という諺がある。ここから移ろうというものたちよ、気をしっかり引き締めて汚れを掃除すれば、この池も他のどんな池とも引けをとらないぞ」
移ろうというものたちは、年取ったカエルのこの的を射た言葉を聞いて恥じ入り、静かになった。
それで、全てのカエルたちが一丸となって、池を掃除し始めた。
終いに、この池はすごくきれいでいい匂いがする澄んだ池に変わってしまた。
その後、カエルたちはあの年取ったカエルをほめて、『賢いカエル』というようになった。