ある農民が用事で、十歳ぐらいの息子を連れてバザールへ行った。
途中、古い馬の蹄鉄を見つけると、息子に、
「お前、あの蹄鉄を拾ってずだ袋へ入れろ。必要になる」と言った。
この息子はとてもなまけものだった。だから、わざわざ地面に屈んで蹄鉄を拾うのを嫌がり、
「そんな古い蹄鉄をどうするんだ、父ちゃん。いいから行こう」と拾わなかった。
「お前、そんなこと言うな。『必要な石は重くない』って、諺がある。一回、地面に屈むのを嫌がるな」
「もういいじゃないか」と、息子は言い返した。
父親は終いに自分で蹄鉄を拾った。バザールで用事を済ませてから、例の蹄鉄を鍛冶屋に銀貨一枚で売って、そのお金で砂ナツメを買った。砂ナツメ百個をポケットに入れて歩いた。息子はお腹が空いたので砂ナツメをすごく食べたくなった。しかし、『父ちゃんはたくさんくれたからな』と、何も言えずに歩いた。少し経ってから、父親が砂ナツメを一個ずつ地面に投げ捨てながら歩いた。息子は嬉しくなって、地面の砂ナツメを一つずつ屈んで拾っては食べて歩いた。そうやって、家へ帰って来るまでに、息子は百個の砂ナツメに百回屈んだ。
父親は息子を見ながら、
「お前は何という子だ。さっきの蹄鉄に一回屈むのを嫌がったのに、その蹄鉄がお前を百回も地面に屈めさせた。覚えておくんだ、ほんの小さなものでも、それを無視してやりすごすのはだめだ。お前はそれから逃げても、どうせ腹の中へ入れるんだからな」