昔、あるバカな王様がいた。王様に一人息子がいて、この息子をひどく猫かわいがりして育てた。王様はどこへ行っても、自分の息子を自慢し言いふらしていた。父親がそんなふうだから、息子の王子は、何の知識も学びはせず、ひどいバカで大ウソつきに育った。
ある日、王様は王子を連れ、大臣や高官達を従わせて遊びに出た。一行がある河岸に着くと、彼らは水泳の腕前について話し合った。その時、王様が口を開き、また自分の息子自慢を始めた。
「わしの息子は水泳がほんとに上手で、水に潜ると、とても長い時間経ってから頭を出す。それだけじゃないぞ。この他に水の上であおむけになって寝られるんだ」
これを聞いた大臣、高官達がおだてて、口々に王子をほめ始めた。
このほめ言葉に酔った王子は、自分を止められず、他の連中に自分の腕前を見せてやろうと、ドブンと河へ飛び込んだ。
王様の話しのごとく、王子は長く水面に現れなかった。
たちまち王様の顔が青くなった。
大臣や高官達は王子を更にほめて、
「何て上手なんでしょう。水に潜ってしまってからまだ水面に出て来ないぞ」
しばらくして、あおむけで黙って横たわる王子が水面に現れた。
「ほら、ほら、この名演技を見ろよ。水面で手足を動かさず、こんなに気持ちよく横たわるのは易しくないぞ」と、大臣達が言った。
慌てていることを悟られず、息を殺していた王様は、とうとう耐えられなくなり、
「おい、みんな。息子を早く助けてくれ。息子の泳ぎはまだダメなところもあるんだ。早く助けてくれ」と喚き散らした。
大臣、高官達が王子を水から引っ張り上げてみると、王子はすでにあの世へ行ってしまっていた。