「だ−っもう!
何度言ったらわかるんですか!」

ちょっといつもより高めの声が
部活を控えた放課後の廊下に響いた。


























cigarette
























全くもう。
何度言ったかもわからない。
毎回毎回、同じ科白で言ってるほうも飽き飽きだ。
俺は先輩のことを思って言ってるのに。

「笠井ちゃん…怒ると眉間にシワできちゃうよ?」

「誰の所為だと思ってるんですか!!」

このやりとりも、毎度のこと。

一体さっきから何を俺と中西先輩が話してるかというと。
煙草について、だ。


中西先輩がいつもすっている煙草。
俺はそんな詳しくないから、銘柄なんて知らないけれど
黒い線の入ったパッケ−ジのやつ。
それがどんな重さなのかも知らない。
けどそんなの関係なくて。

だって、煙草って身体に悪いものでしょう!?

「っ大体!スポ−ツ選手が煙草吸うなんて!!」

「ん−でも俺って煙草似合うし。」

「そういう問題じゃないんです!!」

何だってこの人はこうなんだ!?
…確かに、似合うけど……。
恰好つけてる、とかじゃなく。
まるでそれが自然で。
なんていうのかな。
中西先輩=煙草?
煙草=中西先輩?
…違う。
そんなんじゃない。
そんなんじゃなくて…。

「…じゃあ、笠井ちゃんの前では吸わない。」

「え?」

「嫌いなんでしょ?この匂い。」

「…別に。そうじゃないです。」

嫌いなわけじゃない。
両親も吸ってるから、慣れてるわけだし。
だからそうじゃなくて。
…ぶっちゃけ、煙草を吸ってる中西先輩の横顔は好きだし。
けど、そうじゃなくて…

「あ…悔しい、のかも。」

ぽろりと出た言葉は自分ですら意味をよく分かってなかったと思う。
中西先輩は切れ長の目を何度か瞬きして
「何が?」と聞いてくる。
それに小さく唸りながら先輩の煙草を持つ左手を見つめた。

「だって…先輩、煙草吸ってると無口でしょう。
 どこか…遠くを見ているし。
 だから…多分ですけど、」

うん。多分…。
悔しいからその先なんて言ってやんないけど。

そう俺が言うと、先輩はふわりと微笑う。
…その顔が綺麗で、しばし見取れたのは絶対に言わない。

「うん。わかった。
 じゃあもう吸わない。」

「え…?」

「笠井ちゃんの前でだけじゃなくね。」

「…いいんですか?」

「ん?」

「…好きだったんでしょう?煙草。
 それを俺の一言なんかで…。」

無茶苦茶なことを言ってるのはわかってる。
さっきまであんなに止めて欲しかったのに。
今は少し、惜しいと思っている自分がいる。

「いいんだよ。
 …笠井ちゃんの言葉だから、意味があるんでしょ?」

「…っ///」

思わず赤くなる自分がいる。
そんな綺麗な顔で言われたら
発する言葉なんて何もなくなってしまう。

「…そう、ですか。」

「うん。そう。」

真っ赤になって俯いている俺に気付いているのかいないのか
先輩は手に持っていた煙草を携帯灰皿にしまってホンと俺の頭を叩いた。

「さ、部活出よっか。
 皆待ってるよ。」

「はい。
 …でも先輩、」

「何?」

「…子供扱い…しないでください。」

それじゃあ、まるでただの後輩扱いだ。
いや、確かに後輩だけど。
だけど…俺と先輩の関係は…

「うん、わかった☆
御免ね−。」

「!!!?///」

にっこりと笑ったかと思えば
中西先輩は俺の腰に手を回して頬に唇を落としてきた。
あまりに突然の行為に暫く声さえなくす。

「せ…先輩!何するんですか!!///
 ここ校内ですよ!?」

「子供扱いや後輩扱い、じゃなくてコイビト扱いしただけのことよ?」

さらりと唇に指を押し当ててポ−ズをとる。
こういうところ、ホント読めない。
ていうか…

「誰かに見られてたらどうするんですか!!?」

「う−ん…いっそのことバラしちゃう?」

「なっ…!!」

そんなこと、全く頭になかった。
だってそんなの皆には理解できないだろうし…

「そういう問題じゃないですって!」

「は−い。御免ね、笠井ちゃん☆」

ちゅv

……。

今度は。
息をするのすら忘れた。
さっき言ったにもかかわらず…
また先輩は…っっ!

触れられた唇が熱くて…

でも今はそんなこと気にしてられない。

「……だ−っもうっ!
何度言ったらわかるんですか−!!!?」

本日二度目の叫びが、
廊下中にこだました。




















大好きな貴方が好きだと笑う

煙草に嫉妬したのは内緒なんです。















                         END






















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フリー配布モノ第一弾!
甘い中笠!
…えとあの。マイナーですいません。
こんなのでももらってくれたら嬉しいです。
もし光栄にも自サイトにアップしたいって方いましたら、(多分いない
すみっこのほうに“by華蓮凛音”とでも書いてくだされば結構です。
今連載中の中笠がとてもイタイっぽいので…本来中笠はこうあって欲しい。
甘い中笠なんて初めて書くし初めて読むけど…(死
世間の中笠(めっさ少ないけど)はイタイ系らしい。
ちなみにりむねも煙草の銘柄なんて全く知りません(知りたくもない。




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